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風花夜月妖譚【かざはな やげつ ようたん】  作者: YUQARI
第三章 お寺の奥の深い洞窟
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狐丸の災難

 瑠璃姫さまは、急に騒がしくなった周りの状況に、いくぶん顔をしかめながら、面倒臭そうに片目を開けた。


『うわぁ。綺麗……』

 思わず僕はそう呟いた。そしたら、和尚さまが少し微笑んだのが見えた。

 和尚さま……?

『……』



 瑠璃姫さまは、その名の通り、美しい瑠璃色の瞳を持っていた。


 漆黒のその毛並みから見える、深い瑠璃色の瞳がとても綺麗で優しくて、酷く印象に残る。

 そんな瑠璃姫さまは、くあぁ~っとアクビを一つすると、自分に擦り寄って来たタマを見る。


『何だ、タマではないか。……よくここに来れたな?』

 よく通る低い声で、瑠璃姫さまは言いながら、周りを見廻した。

『ん……?』


 そこで初めて、瑠璃姫さまは弦月(げんげつ)和尚さまの存在に気づいたようだった。

 ……うん。本当に眠ってたんだな。これほどの妖狐が、僕たちの到来に気づかないわけないもの。


『ああ、弦月(げんげつ)も一緒か。

 珍しいことだな。……ん?』

 言って、瑠璃姫さまは目を丸くする。はっきり僕を見ていた。僕は見られて、思わず身構える。


『キツネの妖怪? ……まさか(おす)なのか?

 これはまた……! 珍しいな?』

 にやりと笑い、こっちに来いと僕に手招きをする。


 吸い込まれそうなその瑠璃色の双眸(そうぼう)が、僕を(とら)えて離さない。

 呼ばれて僕は、おずおずと瑠璃姫さまに近づいた。


『ふふふ。お前は、(われ)の狐火を喰うたのか……? 見事に輝いておるの?』

 愉快そうに、喉を鳴らす。


 僕は申し訳なくって、くぅんと鼻を鳴らし耳を垂れた。

『……ごめんなさい』


 項垂れた僕を、瑠璃姫さまは優しく見下ろした。

『喰うて、なんともないのか?』


 首をかしげ尋ねられて、僕は困ってしまう。

 だって見れば分かるだろ? 光ってんだもん……。

『……体が光って、困っています』


『違いない……』

 言って、瑠璃姫さまは、くくくと喉を鳴らした。

 ゆっくり鼻面を僕の方へ向ける。


『いやいや、そうではない。本来ならば、(われ)の狐火を食うて、無事であるはずはないのだがな……?

 体はどうもないのか?』


『?』

 言われている意味が分からず、僕は首を捻る。


 すると瑠璃姫さまは目を細め、『さてはお前は、ただの狐の妖怪ではないな』……と、言いながら、僕をペロリと舐めた。



『うひゃあ!』

 僕は、くすぐったくて、身を(よじ)る。

 その様子を見て、瑠璃姫さまはまた笑い、とても嬉しそうだ。


『静かにしていろ、ソレ(・・)(われ)が舐め取ってやるゆえ……』

 言いながら、信じられないほどでっかい前足で、僕を押さえつけ、ペロペロと舐め始めた。


 《前足》……とか言うと可愛らしい感じがするけれど、実際その前足(・・)は、可愛らしくもなんともない。すこぶる大きいし、めちゃくちゃ重い。

 まるで丸太ん棒みたいなでっかい前足で、がっちり掴まれると、僕はもう身動きなんて、出来やしない。

 え? ちょ待って、怖いんだけど……!?


 強制的に押さえつけられ、僕は瑠璃姫さまのされるがままになる。


 黙ってろと言われたけれど、ぺろぺろ舐められると、くすぐったくて敵わない。

 僕は目に涙を溜めて、笑い転げた。

『あはははははは……っ! わははははは……』


 逃げようにも、体の上には瑠璃姫さまの大きな前足が乗っかっていて、正直、息をするのも大変だ。


『あ、あぁ、……瑠璃、姫さま……。

 ひ、ひぃ〜。く、苦し。苦しい……っ!』

 僕は呻く。


『しょうがないであろ。お前が喰うからいかんのだ』

 瑠璃姫さまの言葉に容赦はない。

 呆れたようなその声は、けれど面白がっているようにも見えた。



    挿絵(By みてみん)


           × × × つづく× × ×


   ┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈



     お読み頂きありがとうございますm(*_ _)m


        誤字大魔王ですので誤字報告、

        切実にお待ちしております。


   そして随時、感想、評価もお待ちしております(*^^*)

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