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女狐と男狐

『え? 瑠璃姫さまは、ここにいるの?』


 僕は素っ頓狂(すっとんきょう)な声を上げる。

 それほど驚いた。



「そうニャん。瑠璃姫さまは、この古寺の地下に封印されてるニャん」

 タマは《なんでもない》と言った風に、そう簡単に答えた。



『封印──……?』



 だけど僕はそのタマの言葉に、言いようのない不安に襲われる。

 封印? 封印って、悪いことをしたらされるヤツなんじゃないの? 瑠璃姫さまは、封印されるような、そんな恐ろしい存在なの……?


 僕はそっと眉を寄せる。



 タマはそんな僕に気づかずに、猫耳を悲しそうに伏せ、小さく呟いた。


「だけど、たまにタマたちの所に遊びに来てくれるニャん。封印は完全じゃニャくて、九つのしっぽの一つが封印出来ニャかったみたいだから、そこから変化(へんげ)して、やって来てくれるのニャん」


 人の形をしているタマが、嬉しそうにゴロゴロと喉を鳴らす。

 目を細めて語るその顔は、ほんの少し紅潮していて、好感が持てる。


『……』

 一言よけいに喋らなければ、タマだって十分可愛いのにな……。などと僕は思ってしまう。


 タマの話を聞いていると、《封印されている瑠璃姫さま》は、そんなに恐ろしい存在には聞こえない。

 とっても優しい妖怪なんじゃないかなって感じた。それなのに封印──?


 何かよほどの理由があるのかも知れない。


 タマは、そんな瑠璃姫さまが、よほど好きみたいで、瑠璃姫さまの話をすると、その細長い猫のしっぽがフリフリと嬉しそうに揺れる。


 ふーんと僕は言いながら、瑠璃姫さまって言う人はどんな妖怪なのかなぁって考えた。

《姫》と言うくらいなんだから、女の人なのだろうけど……。



『ん? ちょっと待てよ……?』

 僕は、ふと考える。



 僕は男だけれど、九尾って、男の妖狐もなれるのかな……?

『……』


 そんな不安が、頭をよぎった。


 そもそも妖怪には、子どもを残す必要がない。

 だから男だとか女だとか、そもそも性別なんてものはいらないんだ。


 じゃあ、なんで性別があるか……。それは妖怪の《能力》による。


 女の子である方が得なら女の子。

 男の子である方が得なら男の子。


 怨霊みたいに、生きていた時代……《生前》がある場合は、その時の性別だったりもするけれど、基本、妖怪に性別らしい性別はない。


 ただ僕を含めた妖狐は、人を惑わすのが特徴だから、時として女性だったり、男性だったりと性別があるのが普通だ。

 もちろん、持って生まれた性別を偽って、化けることだってある。


 人を惑わす妖狐……。《性別》は、妖狐にとっては便利なものだから、僕たちにはその《性別》がある。


 だけどもし、九尾が女の子限定の妖怪だったとしたら、僕は九尾にはなれないって事になる。ほら、いるだろ《雪女》って。あれは正しく女性限定。

 《雪男》だって確かにいるけれど、名前が違う上に見た目すら違う。あれはもう、別の種族何じゃないかって、僕は思うんだ。

 キツネだって言うじゃないか! 《女狐(めぎつね)》って、あれは正しく女のキツネだろ? そもそも男狐……おぎつね? おとこぎつね? なんていない。

『……』


 僕は、青くなる。


 《九尾》って、もしかしたら女性限定の妖怪のことなのかも知れない。


 そもそも妖狐は女の子が多い。男の子はあまり見ないって聞いたことがある。僕は珍しい存在なんだって。

 だとすると、九尾に進化出来るのは、みんな女の子だけなんじゃ……?



『……』

 僕は黙り込む。

 ちょっと不安になった。

 なれない時にはどうしよう?


 ……でも僕、なんで九尾になりたかったんだっけ?


 僕は改めて思い出す。

『……』

 そう。確かそれは、




──《瑠璃姫さまと、同じになりたいから》




 だったら、何を悩む必要がある?


 ……なれなかった時は仕方がない。でも、瑠璃姫さまと対等であるように、力はつけよう……。

 

 変なこと考えずに、頑張ればいい。そしたらいずれ分かることだから!



 そう心に決め、僕は手頃な葉っぱを探した。



    挿絵(By みてみん)


           × × × つづく× × ×


   ┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈



     お読み頂きありがとうございますm(*_ _)m


        誤字大魔王ですので誤字報告、

        切実にお待ちしております。


   そして随時、感想、評価もお待ちしております(*^^*)

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