不思議な炎と小さな女の子。
『……』
僕は満足気に寺の縁に寝そべり、外を眺めた。今まで感じたことがないくらい、僕は幸せだった。
まるで夢みたい──。
そんな風に思いながら、ウトウトと僕は微睡んだ。
どのくらい経っただろう? 辺りはもう日が落ちてしまい、夜の気配が忍び寄っていた。
『……ん?』
薄暗くなった寺の庭を、僕は目を凝らし見てみる。
だって、不思議なものを見つけたんだ。
『……なんだ? あれは……』
僕は目を見張った。
不思議な青い光が、夕暮れとともにポツポツと現れ始めた。時間は、夜の星が瞬き始めるのと同じ頃。
その時間になると、お寺にぼんやりと、青白い炎が灯り始める。
それはまるで、暗闇の中の道標のようで、僕の興味をそそった。淡く優しく輝く青い炎。
んー、あれだ。あれに似ている。
僕の狐火……。
お寺には楠や松、杉、榎なんかの色んな木が生えていた。そしてその木の枝々に、青白い炎がゆらゆらと蠢いているんだ。
なんだか不思議だろ?
そりゃあさ、最初は火事だ! って思っちゃったもんだから、すごく慌てたよ? だって大切な《鎮守の森》が燃えてるって思ったんだもん。そんな事になっているんだったら、誰だって目を凝らして見るだろ!?
『……』
だけど少し様子がおかしい。その炎は《光》だけで、なにかを燃やすほどの勢いはなかった。木もお寺も、なにも燃えなかったんだ。
日が陰りだしてから、灯り始めたその青白い炎は、見た目に反して優しい気配を放っていた。だから僕はすぐに、『あぁ、このお寺を護っているんだな』って感じた。
普通なら、こんな事は絶対にありえない。ついこの前生まれたばかりの僕だけど、そんなことくらい知っている。
現に、僕が生まれたところから、すぐ近くに見えた森の中では、こんな炎は灯らなかった。
じゃあなんで、ここではこんな火が灯るのだろう?
『……』
僕は、じっと炎を見つめた。
当然、本物の火じゃない。
そりゃそうだよね。本物の炎なら、こんな森、いっぺんに真っ黒焦げだもん。
だけどこの炎は、木を燃え上がらせるようなことはしていない。
ただ優しく辺りを照らすだけで、鎮守の森には傷一つ付けない。まるで木々を護るかのような、その炎。僕の《狐火》に似た青白い炎。
──でも本当に、同じものなんだろうか?
僕は疑問に思って、試しに ふーっと息を吐いてみる。
──ボッ!
吐く息と共に現れた僕の青白いその炎は、縁側から庭へと飛んだ。色は全く同じだ。形も似てる。
……だけど、僕のが少し、小さい……かな?
飛んだ僕の炎は、木々にまとわり付いている、その炎にぶつかった。
──ぱちんっ!
『あ!』
僕の狐火は、木に灯る炎に触れると、ぱちんっと軽い音を立てて、火花を散らして弾けて飛んでいってしまった。
まさか、割れるとは思わなかった僕は、声をあげて立ち上がる。
狐火が割れたところなんて、今まで見たことがなかったもんだから、思わず目を見張った。あれって、割れるもんだったの!?
「ふふ、ふふふふふ」
『!』
何処からか、鈴がコロコロと鳴るような可愛らしい声がした。僕は驚いて飛び跳ねる。
「妖力が弱いと、鬼火でも負けるのニャん」
『だ、誰!?』
僕は声のする方を見てみたけれど、何もいない。
『あれ……?』
小首をかしげると、再び声がした。
「ここニャん。ここニャん」
どうやら、縁の下の方から声は聞こえて来るようだ。
『ど、どこ……?』
僕は身を乗り出して、思い切って縁の下を覗く。
『……』
するとそこには、おかっぱ頭の女の子がちょこんと うずくまって座っていた。
真っ直ぐの長い髪をサラサラとなびかせ、右側の一房だけを赤い紐で括っている。
とても人とは思えない、少し鋭い目つきの子ではあったけれど、それはそれで とっても可愛い女の子だった。
その子がカラカラと笑うと、その髪紐についた金色の鈴がチリと涼やかに鳴った。
× × × つづく× × ×
┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈
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