和尚さまとの言い合い。
見上げれば、和尚さまの顔は歪んでいた。
その顔はまるで、《不憫でならない》って言ってるみたい。
『……っ、』
僕は居心地が悪くなる。そんな顔、して欲しくなかった!
隠し通そうとした努力は、報われなかった。
それが痛いほどに分かるから、すごく辛い。
和尚さまの表情を見ると、自分が情けなくなって、泣きたくなった。
弦月和尚さまは、はぁと溜め息をついた。
「それは困った。名前がないとなると不便じゃな」
その一言で、僕はムッとする。
せっかく雰囲気を明るくしようと思ったのに、事態は思わぬ方向へ進んでしまった。
思ってもみなかった状況の変化に、僕の苛立ちは隠せない。
『僕は困った事なんてない!
第一ここには和尚さましか、いないじゃないか!』
ぷいっとそっぽを向き、僕は怒鳴る。
そして辺りを見廻した。
弦月和尚さまは、目が見えないのに、この古寺には小僧さんがひとりもいない。
だって人の気配が全くしないんだもん。
確かにお寺の境内には、チリひとつとしてない。だけど多分それは、和尚さまが掃除したんだろうと思った。
参拝する人だって、そういないみたいに見えたから。
目が見えないのに、傍には誰もいない。それでよく、生活が出来るものだと、僕は不思議に思う。
それこそ僕には、考えられない。
目が見えなかったら、狩りが出来ない。
狩りが出来なければ、食べていけない。
食べなければ生きてはいけない。
和尚さまは、誰の助けを借りて、生きているのだろう? まさか、一人で生きていけるわけもないだろうし……。
僕は眉を寄せ、和尚さまの心配をする。
「何を言うか。名は体を示すと言うではないか。名前は必要じゃ!」
急に和尚さまが声を張り上げて、怒ったような声を出した。
僕は和尚さまのその大きな声に驚いて、ビクッと体を震わせる。
僕の怯えを感じとったのか、和尚さまは声を荒らげてしまった事にハッとする。
「すまない……。驚かせてしまったの……」
慌てて申し訳なさそうに、そう謝った。
僕は小さく頭を振る。
『ううん。いいの。大丈夫……』
謝られて一応は許したものの、やっぱり僕は納得出来なかった。
だってそうだろ? 僕は必死に隠したんだ。弱味を見せたくなかったから。
それに怒鳴るほどのことなの? 僕は好きで一人でいたわけじゃない。
いて欲しくてもいなかった。誰も傍にいてくれなかったんだ!
名前? 名前なんてものはどうだっていい!
そんなのなくったって、僕は今の今まで生きて来られたんだから……!!
× × × つづく× × ×
┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈
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