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風花夜月妖譚【かざはな やげつ ようたん】  作者: YUQARI
第二章 茅葺き屋根の古寺
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夢のような出来事……!

 和尚さまの手のひらはとても優しくて、あたたかくて、幸せな気分になる。


 僕は、ゆっくり目を閉じた。



「柔らかくて、あたたかい。

 そして、この大きなしっぽ!

 ……うーん。そうだな、お前はキツネか?」


『当たりっ!』



 撫でられると、とても気持ちがいい。

 僕はスリスリと和尚さまに、頭を擦りつけた。




「……お前の家族はいないのかい?」


 撫でながら和尚さまは、僕に聞いた。

 僕は首をかしげる。


『家族ってなぁに?』

「《なぁに?》ってお前……」


 僕のその言葉に、和尚さまは少し戸惑って、言葉を考えながら口にする。


「一緒に暮らしている者のことだよ」

 静かにそう言った。



 言われて僕は、『そんなのいないよ!』と膨れて言い返す。


『僕は、最初から一人だったから』


 その言葉に、和尚さまは少し驚いた様子を見せ、すぐに悲しげな微笑みを浮かべた。


 そうか、それだったら……と和尚さまは呟く。




「ここで、私と一緒に過ごさないかい?」




『!?』

 願ってもない言葉だった。

 僕は驚く。


 そんな事を言ってくれる人なんて、今まで一人としていなかった。


 ……まぁ、話せたのは、和尚さまが初めてだから、当たり前と言えば当たり前なんだけど……。


 だけど待て待て、喜んじゃだめだ。今までだって、そんなことなかったじゃないか。期待すればするほど、傷つくもんなんだぞ!



 僕は自分に言い聞かせる。だけど、だけど……。



『い、……いいの……?』


 上目遣いで、僕は和尚さまを見上げた。

 誘惑に負けた。


 僕はこのお寺で、和尚さまと過ごしたい……!



「あぁ、お前さえ良ければね……」


 困った顔で、……けれど泣きたくなるほど優しい声で、和尚さまは言った。



 僕は、小さく頷く。


 とても嬉しかった。思わず目頭が熱くなる。

 もしかしたら、嬉しくても(なみだ)は出るのかも知れない。そう思った。



『……』


 あぁ、でもこれはもしかして、夢かも知れない……。いや、きっとそうだ。僕は夢を見ているのに違いない。



 僕は慌ててゴシゴシと顔を掻いて、再び顔を上げた。


『……』

 けれどそこには、優しい和尚さまの顔があって、僕をあったかくて大きな手で撫でてくれた。



 夢じゃない。

 これは、夢なんかじゃない。


 それに、寝ぼけているわけでもない。

 目の前の和尚さまは、確かに優しく微笑んでいてくれている……!



 たとえ夢でも、このまま覚めないで欲しい……!!




 僕は、笑った。

 多分、変な顔だったに違いない。


 ……いいんだ別に。

 だって和尚さまは、目が見えないんだもの。




『うん……!』




 ひとりぼっちだった僕は、自分を恐れない人間を見つけて、幸せだった。



 だけど和尚さまは、このとき少し、悲しそうに目を細めた。


 僕が何者であるか……、和尚さまにはそれが分かっている。


 分かっていなければ、言葉を話すキツネなど、怖くて相手になど出来ないはずだ。

 分かっていて、僕と共にあることを選んでくれた。


「……」


 和尚さまは、もう見えなくなった目で、本堂の奥を見つめた。


 いつしか笑みが消える。




 当然、和尚さまは人間だ。

 物の怪ではない。


 けれど、僕を恐れない。

 正体が、分かっているのにも関わらず。


 そして僕を恐れない和尚さまもまた、ただの人であるはずがなかった。



    挿絵(By みてみん)


          × × × つづく× × ×


   ┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈



     お読み頂きありがとうございますm(*_ _)m


        誤字大魔王ですので誤字報告、

        切実にお待ちしております。


   そして随時、感想、評価もお待ちしております(*^^*)

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        更新は不定期となっております。

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