見つけた古いお寺。
僕は、自分のいる場所を改めて見てみた。
そこは、茅葺屋根の、結構大きな建物だった。
『えっと、ここはお寺、かな……?』
僕が降り立ったのは、人里から離れた古寺だった。
周りには、何にもない。山の中に取り残されたように、そのお寺はひっそりと建っていた。
まるで僕みたい……。
古いけれど、手入れはされている。
その境内にはいくつもの大きな木が生えていて、なんだか荘厳な感じがした。
『……』
……ま、正直に言って《荘厳》の意味、よく分かんないんだけどね。とにかく、そのお寺は、そんな感じだったんだ。
だからさすがの僕も、気圧される。
なんとも言えない圧迫感に、僕は少し後ずさったけれど、嫌な感じはしない。
どっしりとしたその雰囲気は、敵となれば恐ろしいけれど、味方となればきっと心強い。
こんなところで生きていけたら、どんなにいいだろう? きっと心の底から安心して過ごせるに違いない。
その上、大好きな人たちに出会えることが出来たのなら、もう何も言うことはない。
『……』
自然の要塞に護られながら、そのお寺はひっそりと建っていた。まるで何かに隠れるように……。
お寺は古いものではあったけれど、掃除は行き届いていて、不思議と塵一つ落ちていない。
信心深い人でも、いるのかな?
どう考えてみても、ここは人里から離れていて、足繁く通うには向いていない。だからこそ、僕はここにいたいって思ったんだけどね。
僕ってほら……嫌われているから……。
今度は、誰かと友だちになれるかな……?
考えながら、心は重く沈んでいく。
『……』
もしかしたら、また逃げられてしまうかも知れない。そう思わずにはいられない。
どうしてみんな、僕を嫌うのだろう?
僕の姿が怖いのだろうか?
僕は、自分の姿を振り返って見てみた。フワッと白いしっぽが揺らめいた。
……全然、怖い感じはしないんだけどなぁ……。
前に僕は、湖に自分の姿を映して見たこともあるんだよ? あの時は、怖い……というよりも、《可愛い》とちょっと自惚れた。
だって考えても見てよ? 僕って ちっこいキツネなんだよ?
フワフワの真っ白な毛皮に包まれて、そりゃ目は金色だから鋭く光って見えるかも知れないけれど、丸くって大きくて、湖から覗くその瞳はくりくりで、どう見たって怖くなかったもの……。
『……』
ううん。自惚れなんかじゃないと思う!
だって、前に見た子ギツネたちと、そんなに姿は変わらなかったし、違うところと言えば、この真っ白な毛皮くらいだったから……!
『……』
じゃあどうしてみんな、逃げて行くのだろう……?
──友だちになれないのなら、いっそ……。
そんな不吉な想いが、頭をよぎる。
自棄になって、全てを壊してしまおうと思ったことだってある。
ダメな事だって、ちゃんと分かってる! だけど僕だって本当はつらいんだ……‼
『……』
フルフルと頭を小さく振りながら、僕は地面へと飛び降りた。妙なことは考えるな!
変なことを考えれば考えるほど、僕は堕ちていくんだぞ……!
ギュッと目をつぶって、僕はいつもそうやって、自分を叱りつける。褒める人もいないけれど、叱ってくれる人だって僕にはいない。
褒めるのも叱るのも、慰めるのだって、いつも僕!
僕僕ぼくぼく、ぼく……。
──「おやおや? 誰か来たのかね?」
『ひゃっ!』
不意に声を掛けられた。
僕はピクンっと跳び跳ねる。
──全く、気配を感じなかった……⁉
僕は身を強ばらせ、警戒した。
未だかつて、こんな経験をしたことがない。
けれど、嫌な感じはしない。
『……』
声の主は、お寺のお縁に座っていた。
僕はしばらく全身の毛を逆立たせていたんだけど、すぐにクゥンと小さく鼻を鳴らし、耳を伏せる。
相手は僕に、嫌なことをする気はないようだ。
僕の返事をにこやかに笑って、待っててくれた。
そんな態度を取られたことは、生まれてこの方一度もない。目の前の人は、僕を恐れているわけでも、捕まえようとも思っていないみたい。
ただ純粋に、語りかけてくれている、だけ……?
僕は思わず、ホッと安堵の溜め息をついた。
× × × つづく× × ×
┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈
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