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1995年 謎の始まり

 ある花冷えの夜、祖父が死んだ。


 僕はあまり驚かなかった。自他ともに認めるおじいちゃん子で、そして祖父の死は、おそらく本人も予想外の唐突さでやって来たというのに。

 それは多分、幼いころから僕が祖父に繰り返し言い聞かされてきたことに由来するのだと思う。


 人は突然死ぬし、人生は、突然変わる。

 祖父は庭の桜の木を見上げながら、歌うように言葉を紡いだ。今、当たり前と思っているこの日常が、明日も続いている保証は、どこにもない。

 祖父の声も瞳も穏やかで、それがさらに僕の胸をざわつかせた。

 桜の花を見て一番に思い出すのはいつも、あのときの祖父の横顔だ。




 祖父はそれほど裕福ではなく、大した遺産はなかった。

 ただ、6人の孫に宛てて、手紙が残されていた。


 初めの手紙には、「挑戦状」と書かれていた。

 じいちゃんらしい。僕は思った。生前の祖父は悪戯好きで、おやつをちらつかせては、よく孫たちに謎解きを仕掛けてきた。


 この時点で、6人の孫の内、3人のいとこが脱落した。彼らは、祖父の仕掛ける謎解きをひどく嫌っていた。回答の出来次第で、ご褒美のおやつを加減されたりするのが、子供心にむかついた、と言っていた。分からなくはない。


 残りの3人で開いた手紙には、一枚の便せんに、文章がつづられていた。


“ 拝啓


 この手紙を貴殿たちが手にしているということは、それがしは無事三途の川を渡り切ったということであろう。めでたきかな。

 さてこれから、貴殿たちに最後の謎解きをしてもらう。全ての謎を解き、与えられた使命を全うしたものには、特別な褒美を与える。

 この手紙のほかに、続きの手紙があるはずだ。まずはそれを、探してくれたまえ。

 ねがわくば、続きに巡り会えることを。

 

  これでよし 百万年の 仮寝みな

 

                    敬具


                    じじい



「……」

 手紙を読んだ3人の孫、僕と姉、そして一人のいとこは、顔を見合わせた。

「この俳句? しらないけどさあ、……簡単すぎない?」

「だよね……」


 3人でささやき合ってから、僕たちは、連れだって家中を練り歩き出した。

 次の手紙は、鏡台の鏡の裏にあった。

 はじめの手紙の俳句の文字は、「か」が「み」になっていたのだ。



 次の手紙には、一枚の便箋と、カードのような物が入っていた。

 便箋には、以下のように書かれていた。


 「 ちぎりきみせたちほおもチかくめラ 」


  そして、カードには縦書きで、大きなひらがなが並んでいた。


 かこちかほ

 なるわかな

 みたかな


 いよいよ、じいちゃんの本気だ。


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