最初で最後の契約
昔々のある村に、一人の子供が居た。
その子供は、罠にかかった獲物を村に届けていた。
ある日、獲物を持って村に帰ると、豪華な兵士が居た。
その兵士は、魔王を倒す勇者を探しに王都から来ていた。
他の村人は兵士が持ってきた剣を持っても何も無かったが、子供が剣を持つと、その剣と共に身体が光り輝き、身体に勇者の紋章が刻まれた。
そうして、勇者は兵士と共に王都へ旅立った。
父親とは無事に帰る様に誓い、母親は祈り、兄貴は「お前が勇者じゃなくなったら、俺が代わりに魔王を倒してやる」と言って見送った。
王都に招かれた勇者は、魔王を倒せたら望む褒美を与えると王直々に告げられ、魔王を倒す為の旅に出た。
魔王を倒す旅の途中、魔物を倒して立ち寄った農村で勇者は歓迎された。
農村の若者は、「今は魔王のせいで不作だが、魔王を倒した後に立ち寄ってくれたら、もっと沢山食わせてやる」と言った。
農村から旅立つ時、自警団の若者が勇者の旅に加わった。
旅を続けていると、太い木々に覆われた大きな山を越える事になった。
勇者は平気だったが、農村若者は根の張った道を歩くには慣れていなかった。
若者を助けながら山を登っていると、大きな獣の咆哮が轟いた。
勇者達が開けた山の中腹に辿り着くと、大きな獣が落葉の魔物と争っていた。
勇者と若者は、大きな獣と協力し、落葉の魔物と相対する。
若者が逃げ道を塞ぎ、勇者が斬り裂き、大きな獣が咆哮で吹き飛ばす。
落葉の魔物を倒すと、大きな獣は小さな子供を預けた。
「この半獣は、迷い子らしい。私は山の主だから、山を離れられない。
もしその同族を見つけたら、やっても良いが、それまでは助けになるだろう」
こうして、山の半獣も勇者の一行に加わった。
更に旅を続けると、不思議な音のする谷に差し掛かった。
どう谷を越えようか、あるいは避けようか。
勇者達が悩んでいると、谷から細長い氷の魔物が飛び出てきた。
氷の身体を若者が砕き、勇者は斬り、半獣は霧散させて応戦した。
しかし、魔物の攻撃で谷底に落とされ、河に流されてしまう。
谷を抜けるまで流され続けた勇者達は、熊の皮を被った大男に助けられる。
その大男は変わり者だったが、上手い旅の方法を勇者達に教えた。
また、近くの町には半獣も住んでいたが、半獣の児は勇者の一行のままだった。
充分に休んだ勇者達が旅を続けようとすると、泉から氷の魔物が現れた。
「河に繋がっている泉も、縄張りの中なんだよ!」
再び勇者達は氷の魔物と戦うが、大男の助けにより、氷の魔物は退治された。
「まだまだ教えることは多そうだ。まぁ、子供を助けるのは大人の役目だ。」
そうして、熊の様な大男も勇者の一行に加わった。
家屋も巻き上げる様な強大な竜巻という災害。
カラスと蜂を操り、棒術を駆使する、カカシの魔物。
オオカミを操り、油を散らす、斧を持ったブリキの魔人。
重い鎧の兵士を率いる、誇り高く気高い獅子の魔獣。
多くの困難を乗り越え、魔王の下まで辿り着く。
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長い旅を続けた勇者達の前に、魔王の側近が立ち塞がる。
邪神と契約した許されざる者。邪神の化身である花を操る陽気の魔物。
それを倒す為に、熊の皮を被った大男は竜巻を呼び出し、犠牲になったのだ。
漸く対面した魔王。
魔王は、大男の死を語る。怒り狂う半獣。
しかし魔王は陽炎の様に揺らめき、全ての攻撃を避ける。
そして、山の半獣は魔王の一撃で石の様に動きを止めた。
聖剣によって勇者は魔王の正体を知る。
幽体が肉体から解放され、幽体だけで完結した化け物。
抜け殻の肉体も人形の様に操り、視界の外から奇襲させる。
既に、農村の若者も縊り殺されていた。
勇者は全力で魔王の肉体を斬り殺す。
しかし、幽体で完結した魔王は痛痒を感じない。
魔王は更に強さを求め、その幽体の中に勇者と聖剣を取り込んだ。
勇者は、魔王の幽体に取り込まれ、その内、幽世で先代の魔王と出会った。
そうして、先代の魔王の秘術を伝授され、魔王の幽体を打ち破った。
魔王を倒した勇者は村へ帰る。
大男に多くの事を教わった泉。まだ、教わる事は、多かった。
大男の下へ流された河、半獣と初めて共闘した谷、山の主と共闘し半獣と会った山。半獣は種族より仲間を大事にして、勇者達の助けになった。
村の若者が仲間になり、不作なのに歓迎してくれた村。既に滅んでいた。
王都に帰還した勇者は、仲間と農村の復活を求めた。
王は、死者と交信する術器はあるが、蘇生は不可能だと言った。
先代の魔王の秘術により、王都は滅びた。
村に帰ると、兄貴が待っていた。兄貴は、「勇者じゃなくなったお前の代わりに、俺が魔王を倒す」と言って、新たな魔王を倒した。
終わり。
勇者:光(水)
若者:土
半獣:火
大男:風
魔王:闇(夏)
魔物:落葉(秋)氷(冬)花(春)
兄貴:天空