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空海と悪魔エドガー  作者: こののべ かたな
7/14

月の昇る頃に⑥

時刻は午前0時。


空海は三日月墓地へとやって来た。

直感的に、赤いスポーツカーは三日月墓地に停車していると思えたからだ。


男が墓石に腰を下ろしていた。


「こんばんは。空海と言います」


「こんばんは。私はエドガーと言う」


空海と男は挨拶を交わした。


赤いスポーツカーのオーナーでもあり、あのコンビニの上の人。

空海は目の前の男をしげしげと見つめた。


黒ずくめの出で立ちに長身痩躯。

目にはかすかな皮肉っぽさをたたえながらも、知性をひけらかすのを好むような傲慢さは感じられない雰囲気。


これみよがしなところがまったくない。


また、どこかクラシックな範に則った静穏な魅力をたたえながらも、威圧感もあった。


実は、空海はあの赤いスポーツカーの雄姿に感動していたのではなく、あの赤いスポーツカーの醸し出す神秘的なパワーに感銘を受けていた。


空海は、軽く指を這わせた時の感触をまだ覚えていた。


不意を突かれた。


柔らかかった。

機械の硬い肌に触れているはずなのに、まるで人肌のような弾力があったのだ。


肉の柔らかみを吸いとった生物のような感触。

怪奇なロマンスが、掌をじんわりと伝わってきた。


また、あの時は日が照っていた。

暑熱で熱くなってもおかしくないはずの車のボディーは、冷たかった。


まるで死体のように。


生物の肌のような触感を持ち、死体のような暗い冷たさを持つ車。


内心の高揚を抑えながら、空海は窓ガラスに近付き、車内を覗いた。

異様な内部に目を射抜かれ、度肝を抜かれた。


シートの下がどこまでも続く暗黒の穴のようになっていた。


思いがけず、笑みをこぼしてしまった。


言語を絶するほどに、車を形容していなかったことに。


そのとき、空海は直感的に理解した。

もし他に類を見ないこの神業な車に、しっくり合うだけの持ち主が存在するのならば、きっと人間ではないだろうと。


今、目の前にその車の持ち主が立っている。


この男は悪魔だ。


だからこそ夜を選んでやって来た。

だからこそ、これだけ揺るぎない魅力に満ちているのだと空海は思った。






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