月の昇る頃に④
時刻は午後11時45分。
空海は銀色の満月の下を歩いていた。
途中でコンビニに入る。
電気はついていなかったが、動く人影が見えたからだ。
幾つかのお菓子を選び、レジへと向かった。
「すみません。これくださいな」
「はいよ」
奥から店員らしき者が姿を見せる。
骸骨であった。
「悪いな。俺、昨日この店に入ったばかりでよ。レジの打ち方知らねえんだわ」
骸骨は照れくさそうに言った。
「うふふ、そうなんだ。じゃあ新人さんだね」
「ああ。だから金はいらねぇや。とりあえず持てるだけ持って行っていいぞ」
「それじゃあお店潰れちゃうよ」
「もう潰れたようなもんさ」
骸骨は肩をすくめた。
「じゃあお言葉に甘えるね」
空海はカゴいっぱいになるまでお菓子を入れた。
「随分たくさん盗むんだな」
「盗むんじゃないよ。だって店員さんが金はいらねぇやって言ったんじゃないか」
「まあ確かに言ったが、金を払わないってことは、盗むってことだろう。この店にあるものは俺のものじゃねえし、プレゼントするってこともできねえ」
「じゃあツケておいてよ」
「馬鹿だろう、お前」
期待を抱かせるような言い方をしておいて、最後はこう。
空海は怒った。
「上の人呼んできてよ。下っぱじゃらちがあかないんだから」
「馬鹿だな、お前は。今からお前はその上の人とドライブに行くんだぜ」
骸骨はこれからのことを知っていた。
空海はからかわれたことに気づいた。
空海は何も持たずにコンビニを出た。
少し離れた所からコンビニを振り返ると、何か丸い物体を持った男がフラフラと入っていった。
陸のお父さんに似ている、と遠目からは思えた。