公爵令嬢の復讐劇
血の卒業パーティーの次代のお話になります。
私、エミリア・ヴィアンコは、元公爵令嬢で元王太子の婚約者でした。
なぜ、元が付くのか。
それは、王太子に処刑されてしまったからです。
王立学園に入学して、半年ほど経ったあるお昼に事件は起きました。
友人と食堂に入ると、そこには私を待ち伏せていたように、王太子、宰相の息子、騎士団長の息子、私の双子の弟がいました。
「エミリア・ヴィアンコ公爵令嬢!未来の王太子妃でありながら、私の愛するアリアを卑劣な手段を使って貶めた!!貴様との婚約を破棄する」
開口一番に、王太子に婚約破棄を宣言されてしまい、目を丸くしてしまいました。
あまりの身勝手さに言葉が出ないでいると、王太子たちは口々に身に覚えのない悪事を私に向かって言い放ちます。
皇太子たちの言葉に、アリアと呼ばれた男爵令嬢は目には涙、口元には薄ら笑いを浮かべながら頷いています。
私は、たかが男爵令嬢に嵌められてしまった事を悟りました。
おもわず、眩暈でふらついてしまいました。
そもそも、王太子妃教育で忙しい私に、男爵令嬢をいじめる時間などありません。
それは、王太子と弟がよく分かっているはずです。
いや、弟の顔をよく見ると戸惑っているように見えます。よくよく私の悪口を聞いていると、弟は何も言っていません。
王太子の話を遮ることが出来ないため、弟は口を閉ざすしかありません。
哀れ弟。将来こんなのを支えて行かなければならないとは。
「王権法に基づき、次期王太子妃アリアを侮辱した罪でエミリア・ヴィアンコを処刑する。そして、ヴィアンコ家の爵位を剥奪する。さっさと去れ、アレン」
王太子はそう宣言すると私を処刑台に送り、我が公爵家を国外追放にしました。
こうして、私は短い人生に幕を閉じました。
そして、私を哀れに思った神様に神様の座を譲ってもらいました。
そうです。
私は神になったのです。
神になった私は、まず我が家の救済を行いました。国外追放された我が家ですが、隣国で商売を行っていました。
私は、弟にほんの少し力を分け与えました。
弟は知らず知らずにその力を使いこなし、大商家にまで発展させました。そして、隣国の国王の目に止まり、国王に重用され公爵位を授かりました。
さすが、我が弟。私に負けず劣らず神様の力を使いこなします。
次に私は、精一杯の力で私を糾弾した王太子たちと、私を貶めた男爵令嬢に復讐することにしました。
まず、王太子と男爵令嬢を子供が作れない体に作り替えました。
そして、異世界から聖女を召喚しました。
ピンク色の髪をツインテールに縛り、いつも赤い目を泪で潤ませ、王太子たちに揺さぶりを掛けます。
すると、簡単に男爵令嬢から聖女に乗り換えました。
「アリア・ネロ男爵令嬢!未来の王太子妃でありながら、私の愛する聖女カスミを卑劣な手段を使って貶めた!!貴様との婚約を破棄する」
と、始まったときはお腹を抱えて大笑しました。
男爵令嬢は絶望に打ちのめされ、泣きじゃくりました。
真実の愛が~と叫んでいる辺り、先々代のように「真実の愛」により男爵令嬢から王妃になりたかったみたいです。
なので、先代の「血の卒業パーティー」のように卒業パーティーで、男爵令嬢の婚約者を破棄することにしました。
よかったですね。
あの有名な「血の卒業パーティー」と同じになって。
男爵令嬢は泣きながら、パーティー会場を後にしました。
しかし、私の復讐はこれで終わりません。
男爵令嬢の乗っている馬車をならず者たちに襲わせます。もちろん、男爵令嬢の処女も奪います。
それから、何度も何度も色々な男と交わらせました。人だけでなく、オークやゴブリン、スライムや触手など人外とも交わらせました。
その度に、男爵令嬢は絶望して、自害を試みますが何度やっても失敗します。
死ねないことに狂った男爵令嬢は人に襲いかかります。
それを、止めようと騎士団長の息子が立ちはだかります。
私は、男爵令嬢の全ての能力を騎士団長の息子より上にしました。
それにより、騎士団長の息子は簡単に男爵令嬢に急所を刺されました。
しかし、騎士団長も死にません。私は四人に不死の祝福を掛けたから当たり前です。
騎士団長の息子は生きながら何度も急所を刺され、内臓を抉り出されます。
男爵令嬢はそれに狂喜して、何度も何度でも騎士団長の息子を刺し続けます。
誰にも、男爵令嬢を止めることは出来ず、国王の指示により、二人を囲うように壁が築かれ、禁足地に指定しました。
一方で宰相の息子は石のように体が固くなる病気にかかりました。
どんな医師でも治せず、宰相は莫大な金額を著名な祈祷師に払いました。しかし、何故か祈祷師は宰相の息子を見た瞬間に皆亡くなりました。
宰相は息子を恐れ、息子を殺そうとしますが、剣を手に取った瞬間絶命しました。
宰相の息子の親類は皆突然亡くなり、遂に宰相の息子一人だけになりました。宰相の息子は一人涙を流し生き続けています。
さて、最後の一人王太子への復讐です。
男爵令嬢・騎士団長の息子・宰相の息子の惨状を知り、学園卒業後王太子の役目を放棄し部屋にこもっています。
唯一、子どもを作るという義務だけは放棄せず、朝晩問わず聖女カスミを寝室に呼び出し交わり合います。
しかし、いっこうに子どもが出来る気配がありません。
業を煮やした国王は、国中から美人を集め王太子に与えました。
それでも、子どもは出来ません。
家臣たちに下賜された美人たちの中には、家臣との間に子どもを作った者もいます。
この事により、王太子に子どもが出来ないことが決定的になり、廃嫡が決まりました。
元王太子は絶望しておます。
しかし、私の復讐は終わりません。
聖女カスミに元王太子を人気のない場所に呼び出させました。
そして……
「くはっ……」
聖女カスミに元王太子の体と首を切り離させました。
私の、不死の祝福により、首と体が切り離されても生きています。
王太子は、自分の体の中を見て驚き絶望しました。
用の無くなった聖女カスミを、この世界の記憶を消し去り元の世界の元の時間に戻しました。
死ねない四人のうち、一人を狂わせ、三人を絶望に谷底に突き落とすことができました。
私は、神様に神様の座を返しました。
こうして、私の復讐は幕を閉じました。
めでたしめでたし。
王太子が廃嫡されたあと、ギーとアンナの息子が王太子になります。