58話 天才少女と黒猫魔女のデバイス作り②
デバイス作り開始から一週間が経過した…。
私は魔術具の作り方をみっちりと手取り足取り教えてもらい、お陰様でこの一週間である程度複雑な魔術具の作成や改良が出来るようになった。というか、クーリアさんが思っていたよりもスパルタだったせいで覚えざる得なかっただけなのだけど…。
まぁ、それはともかく、魔術具の作り方について軽く説明しようか。といっても、説明するだけならばそこまで難しい訳ではないけどね。
①素材を用意する
②素材に魔力で魔法陣を描く
③全ての魔法陣が機能するように魔力の通り道を付ける。
本当にざっくり言うとこの三つだけ。ただ、どのような効果を持つ魔術具を作るかでいくつもの魔法陣を適正の高い素材に魔力で刻む必要があり、この魔力で魔法陣を刻むという行為がとっっっっっってもめんどくさい。精密な魔力操作もさることながら、魔力は感情で揺れ動きやすいから、心を無にして作業をしなくちゃいけない。更に、魔法陣の効果にも相性があり、相性が合わないものは他の素材と組み合わせたり、他の魔法陣を経由したりといろいろと工夫しなければいけなくなり、複雑で強力な性能を持つものほど難易度が倍増していくのだ。
日用品とか作ってる魔術具師さんとかこんな面倒なものを手作りで大量生産しているんだから凄いなぁ…。クーリアさん曰く、簡単で単純なものならば素材を事前に準備しているの前提として、五分あれば一つは出来るとか言ってたけど、たぶんそれはクーリアさんがおかしいだけで参考にはならないと思う。ちなみに、魔術具店で大量生産しているものに関しては〈錬金術〉スキルの複製という能力を使っているらしい。もっとも、複製が使える錬金術師は数が少なく、大量の魔力にもちろん素材も必要になる。簡単で単純な魔術具でない場合は複製の難度と消費魔力が一気に高くなってしまうというデメリットもあるから、魔術具師が魔術具の生産の仕事が無くなる訳ではないのだ。
話が逸れちゃった。私がそんな感じで魔術具の作り方を学んでいる間、クーリアさんは私がデバイスをいろいろと調べて、前の世界のやり方でどのようにして作ったのかを質問してきたりして、魔術具としてのデバイスの設計図を作っていた。
そして、その設計図も概ね完成し、後は試作を作るだけなのだけど、その前にクーリアさんから私にある提案をしてきた。
「新しいデバイスを作る前に、輪音さんのデバイスに少し手を加えて改良しませんか?」
「え?私のデバイスはあっちの世界で作ったものだよ?こっちの技術で改良して大丈夫なの?壊れたりしない?」
万が一動かなくなったら困ると最初は渋ったけれど、クーリアさんのデバイス改良の設計図を説明を受けながら見て大丈夫そうだと判断する。要は外付けハードディスクみたいなものを作るようだ。これで貯蓄出来る魔力の容量がぐっと増える。でも、あんまり増やし過ぎると見た目が目立つ可能性があるのから、今のシンプルな腕輪型から離れすぎない程度に改良することに。目立つ魔術具を持っているとそれだけで絡まれる可能性があるからだそうだ。幸い、私のデバイスみたいな腕輪型は魔法使い達が使う杖のように魔力を制御、増幅するデバイスの一つとして使われることも多いらしいから、今までは不思議に思われることは無かったらしい。
基本素材は魔力の伝達力が高く、ほぼなんの魔法陣でも適応するという規格外金属素材、オリハルコンを使う。…改めて見るとすっごくヤバい物を貰ったよね。いやまぁ、兄様の命に関わったことだし、安いとは思わないけどね。
私のデバイスの改良で使う魔法陣は『魔力貯蓄』と『魔力伝達』の二種類だ。私のデバイス本体と魔力を出し入れすれば良いだけだからね。私のデバイスにちょうどはまるように加工されたオリハルコンに魔法陣を刻んでいくよ。あ、オリハルコンの加工はクーリアさんがやってくれた。「とても面倒ですが、今の私ならば出来ないことはありませんので」とか言って魔法でスパって切ってた。魔力耐性もこの世界最高峰に高いという金属を魔法でスパって切って加工するって…。クーリアさんが改めてただ者じゃないと感じたよ。
で、魔法陣を刻むんだけどそれだけじゃなくて、魔法陣と素材、魔法陣と魔法陣を繋ぐ魔力の通り道…『ライン』と呼ぶんだけど、これを繋げて行かなければいけないの。ただ繋げれば良いだけじゃなくて、魔法陣に干渉しないようにとか、どの魔法陣をどの順番で繋げるとかいろいろと考えながらやらないと上手く魔法陣が機能しなくなって失敗してしまう。更に、一度素材に魔力で刻んだ魔法陣やラインは基本的には消したり出来ないらしい。つまり一発勝負ということだ。
「うぅ~~~……」
たった二つ。されど二つ。『魔力貯蓄』も『魔力伝達』も数々ある魔法陣の中では簡単な部類なんだけど、そもそも魔法陣自体が複雑だからミスなく描くのは大変なんだよ!
『魔力伝達』という魔法陣は本来ならば滅多に使わない魔法陣らしい。というのも、大体はラインを引いておけば魔力の通り道になるから、わざわざ面倒な魔法陣を使ってそれを行う必要はないから。それでも今回採用された理由は、私のデバイス本体には直接ラインを繋げないようにするためだ。私が向こうの世界で施した数々に仕組みは非常に繊細なものだから、直接魔術具と繋げることで影響を与えないようにする必要があった。そのために、能力によって間接的に魔力を供給できる『魔力伝達』が採用されたのだ。
ちなみに、この『魔力伝達』は綾さん達用のデバイスにも使う予定。私達の体には魔力を扱う構造がないから、スキルの能力によって間接的に取り扱うにはこの能力はとても有効みたい。
で、唸りながら魔術具を作ること数時間…。お昼も食べずに朝からぶっ通しでやり通してなんとかミスなく終わらせた。試しに私のデバイスから魔術具に魔力を出し入れしてみる。…うん。完璧。特に違和感なく出来るね。
クーリアさんにも見てもらったところ「合格です」とお墨付きを頂いたよ!やったね!
この補助魔術具のおかげで私が扱える魔力の保有量は大幅に増えた。オリハルコンとかいう規格外の素材を使ったおかげで魔力の貯蓄量も多いみたい。具体的には今までの十倍近くは増えたよ。元々が少なかったとはいえ、これで中級~上級に近い魔術師と変わらないくらいには魔力を使えるようになったことになる。しかも、オリハルコンが徐々に私の魔力に馴染んできたら更に魔力の保有量が増えてくるだろうとのこと。今後に期待だね!
という訳で、いよいよ本題である綾さん達のデバイス作りに取り掛かるとしようか。




