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召喚された少女は異世界でうさぎを探す  作者: 白黒兎
第二章 異世界の国々
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57話 天才少女と黒猫魔女のデバイス作り①

 『知識の塔』に来てから二日目。私は朝食後に迎えに来たクーリアさんに連れられて、彼女の研究室にお邪魔していた。私以外のみんなは一般開放されている図書区画まで降りて行って本を読んで時間を潰すみたい。体を動かしたくなったら、塔の中にある実験区画という一階層が丸ごと丈夫な結界で守られている場所で運動して良いそうだ。まぁ、さすがにずっと本を読んでいるだけだと体がなまっちゃうからね…。



 みんながどんなことしていたかは夜に聞けばいっかな。お昼もクーリアさんと食べる予定だし。あ、そういえばルナちゃんが行方不明だ。朝起きた時から姿が見えなくなっていたから、塔の中をお散歩しているのかな?ここも一応月の領域が関係している場所らしいから、気楽なのかもね。しばらくはかまってあげられないから放っといてあげようか。



 クーリアさんの研究室は塔の中の一階層の一つで、魔法や魔術に関係する研究をするためだけの専用の場所らしい。研究室というよりは研究区画だね。魔法や魔術の中でもいろんなジャンルに分かれて部屋が用意されており、私が案内されたのはその中で『魔術具制作・実験室』だ。デバイスを魔術具として作るんだから、まぁ、当たり前だよね。



 雑多な機材や魔法陣が並んでいながらもきちんと整理整頓がされている部屋を見て私は感嘆のため息を吐く。こういう研究者って、自分が分かれば良いからと部屋の中がめちゃくちゃな人も多いんだけど、クーリアさんはかなり几帳面な人みたいだ。



「そちらの席にどうぞ。…私は輪音さんの持っているデバイスを解析魔法でもう少し細かく視てみますから、その間、貴女には魔術具の基本的な作り方についてわかりやすい本を読んでいてください。わからないことや疑問に思ったことは遠慮せずに聞いてくださいね」



 そう言いながらクーリアさんは手のひらをくいっと手前に倒すと、少し離れた場所にある本棚から三冊の本がクーリアさんの手元まで飛んできてそれをキャッチした。何それめっちゃかっこいい!私もやってみたい!



 私がキラキラとした目で見ているのに気が付いたクーリアさんは「そういうところは似ていますね」と苦笑しながら手にした本を私の前に並べる。ん?似ている?誰にだろう?



「私に似ているって、誰のこと?」


「ん……私の弟子にですよ。兎の獣人のトリアという名前ですが、たしか貴女は会った事あるはずですよね?」


「えっ!?クーリアさんってトリアさんの師匠だったの!?」


「おや?彼女から何も聞いていないのですか?」



 私はぶんぶんと顔を横に振る。そういえば、知識の塔に向かうことになったのはトリアさん達と別れた後だったし、話題に上がるはずもないよね…。それにしても、そんな繋がりがあったなんてびっくりだよ。世間って意外とせまいよねぇ。



「でも、私とトリアさんが会っていたこととかなんで知っているの?」


「月の領域の住人達とは定期的に情報交換していますし、セラさんからも『白の夕霧』のことは聞いています。トリアの性格から考えても、貴女にはいろいろと教えつつ、その分情報を引き出そうとしていたのではないかと思いまして」


「あ、あはは…。全く持ってその通りです…」



 トリアさんにはこの世界の魔法についていろいろと教えてもらった。おかげで、この世界の魔法の仕組みや技術をある程度理解した上で地球の知識で作った魔法を改良していったのだ。



 すごく助かったし、感謝しているんだけど、私の小さな呟きとかにも反応して詰め寄って来るから大変だったんだよね。もちろん、私が絶対に喋らないって時にはちゃんと引き下がるし、無理やりにでも聞き出そうというような押しも無かった。好奇心と言う名の圧は物凄く感じたけどね。だからこそ、私も私なりの話せる範囲で聞かれたことに答えるくらいはしたんだよね。ちゃんと、みんなに相談した上で内容も決めたからばっちりのはず!…ぽろっと出てしまったものもあるけど、たぶん大丈夫!綾さんもなるようにしかならないって言っていたし!



 私が当時のトリアさんとのやり取りを思い出しながら苦笑いをしていると、クーリアさんが「全くあの子は…」と呆れた様に溜息を吐いた。



「あの子ならば大丈夫だと思いますが、念のために、貴女から得た情報を外に出さないように警告しておきます」


「あはは…。……ん?なんの話してたっけ?」


「貴女がトリアに似ているという話ですよ。トリアもここに来たばかりの頃に、貴女のように目を輝かせていたことを思い出したのです」


「へぇ…」



 それで似ているって思ったんだね。でも、それで”それにしても”って表現使うかな?なにか誤魔化されているような気もするけど、誤魔化すということは話す気が無いということだし、私の話力だとこれ以上聞き出すのは無理だと思う。とりあえず、気にしないでおこう。



「先ほども言いましたが、その本は魔術具作りにおいて基本的でかつ初心者にも比較的わかりやすいものになっています。それを読んだうえで、まずは簡単な魔術具をいくつか作ってみましょう。順調にいけば三日ほどで基礎は身につきます。その間に私はデバイスの解析と、魔術具のデバイスの基礎設計をしておきましょう。もちろん、貴女に魔術具を教えながら」



 つまり、私の面倒を見ながら、私達(厳密に言うと綾さん達の分)のデバイスの設計までしてくれるということか。これは私もかなり大真面目にやらないと。これだけ協力してくれる人に迷惑はかけたくないし。



 そんなわけで、私とクーリアさんのデバイス作り…私は勉強の段階からなんだけど…の日々が始まった。




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