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召喚された少女は異世界でうさぎを探す  作者: 白黒兎
第二章 異世界の国々
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52話 天才少女と痕跡探し

 例の鬼の痕跡探しと、他に異常がないかの調査のために、再度熱帯雨林地帯に入ることになった。



 ちなみに、王都方面の街道の問題はほとんど解決しているようで、早くて明後日には規制が解かれるらしい。規制と言っても別に物流が完全にストップしている訳ではないんだよね。十分な護衛を雇える商人さんは普通に出入りしているし、冒険者も受付で危ないからと注意されるだけで行くなとは言われない。唯一動いていないのは王都に向かう乗合馬車かな?さすがに、気軽に護衛を雇えるほどの余裕はないようだね。なので、自己責任ということで王都方面に向かうこと自体は可能だったりする。



 ならばなぜ私達が素直にここに留まっているかというと、まぁ、簡単な話で、わざわざ危ない時期に行く必要も無いよね?というだけである。そんなに急ぐ必要もないし、長引くような問題でもないと思っていたからね。実際に、同じ理由で留まっている冒険者も多い。冒険者は危険があるところにわざわざ飛び込んだりしないのだ。命がいくつあっても足りないからね。



 さて、本題の調査なんだけど、とりあえずは千鶴さんが鬼の角の欠片を見付けた辺りまで行くことになったんだけど、これがまた結構奥地で…



「ぜぇ…はぁ…」


「はぁ…はぁ…」


「少し飛ばし過ぎたでしょうか?」


「これくらいの速度で進まないと帰りが夜になってしまうからね。輪音、綾さん、大丈夫かい?」



 私は大きく深呼吸しながら兄様に大丈夫だと軽く手を振る。綾さんも「大丈夫」と言いながら胸に手を当てて息を整えていた。兄様の言う通り帰りのことを考えると足元が悪い森の中をかなりの早足で進まなければいけない。幸い、昨日と同じルートを通るので幾ばくか楽ではあるのだけど、それでも、普段はまったりペースの私と綾さんでは、兄様と千鶴さんコンビについていくだけでも大変だった。



……前衛職と後衛職で体力に差があっても仕方ないよね?



 そんな言い訳を心の中でしつつ、呼吸を整える。ちょうど今居る場所は、先日千鶴さんと別れた辺りになるらしい。私には全く分からないけど。目的の場所はもう少し奥になるから、一旦ここで休憩することになった。



「この先は更に木々が鬱蒼としていて剣が使いにくいな」


「天気も曇って来ましたね。これは一雨来るかもしれません」



 そもそも、この辺りは熱帯雨林地帯だ。今まで晴れていたのが運が良かっただけなんだよね。



「雨が降ったら調査は終わり?」


「輪音さんに雨除けの魔法をやってもらう負担を掛けますし、そうでなくても今以上に地面が不安定になります。慣れない輪音さんと綾さんでこの森の中を探索するのは難しいでしょうね」


「となると、雨が降ったら中断だね。ここまで来て無収穫は嫌だからさっさと行こう」



 綾さんがそう言って座っていた木の根っこから立ち上がると、その言葉に頷いて私も一緒に立ち上がった。正直、全然休めてないけれど、今日一日が徒労に終わるくらいならばさっさと先に進みたい。



 そんな私達を見て千鶴さんが仕方ありませんねと肩を竦めると、ナックルの状態を軽く確認してから先頭に立った。



「全くんは最後尾でお願いします。出来るだけ魔物を避けるルートで行きたいと思います。雨が降る前に終わらせましょう」



 千鶴さんの言葉に各々が返事をして一列になって千鶴さんの後に続くように再び森の中を突き進む。少し進むと私の頭の上から「きゅい」っと声が聞こえて来た。…ルナちゃん、いつの間に頭に乗っていたんだろう?全然気付かなかった。



「千鶴さん、ルナちゃんが…」


「近くに魔物が居るようですね。索敵スキルに引っ掛かりました。少し遠回りしましょう」



 なるほど、昨日はこんな感じで先に進んでいたんだね。昨日は千鶴さん一人だったからもっと身軽に動いていただろうけど、今は私や綾さんもいるからか、かなり慎重にルートを決めているようだ。それでも、魔物との戦闘が避けられない場面が何度かあった。



 魔物との戦闘は基本的に長期戦か短期戦に別れる。改めて説明すると、魔物は〈魔力体〉というスキルの影響で体と魔力が密接に繋がっている存在だ。体に多少の傷を付けたぐらいでは体内の魔力を使ってアあっという間に回復していまう。なので、魔物と戦う場合は、回復が追い付かないほどのダメージを一気に与えて仕留めるか、何度もダメージを与えて相手の魔力が体の治癒が出来ないほどまで減らしてからトドメを刺すかになるのだ。冒険者で決められている魔物ランクでは、冒険者ランク=魔物ランクで一撃で相手を倒せるというのが基準となっているらしい。魔物の特性上一撃で倒すのが難しい種族ももちろん居るけどね。



 っで、短期決戦ならば兄様の剣で魔物の頭をサクッと斬り飛ばすのが一番早い。では千鶴さんはどうやって一撃で仕留めているかというと…



「ふっ!」



 千鶴さんよりも一回り大きい蟷螂みたいな魔物の攻撃をジャンプして避けた千鶴さんは、そのまま空中で体を捻って蟷螂の頭に回し蹴りをする。そして、蟷螂頭が粉砕した。



……うん。文字通り粉砕した。グロ映像だよね。もう慣れたけど。



「輪音さん。この魔物の両手は結構良い値段で売れたはずです」


「うん。収納袋にしまっちゃうね」



 この光景を見るたびに思うけど。千鶴さんだけは絶対に怒らせないようにしよう。もちろん、千鶴さんは怒っても私達に暴力を振るうような人ではないけどね。



……それにしても、最初は魔物ってだけで身構えていたのに、ホント、慣れたものだなぁ。



 そんな感じで、避けられない戦闘は千鶴さんがサクッと倒し、敵が複数体出た場面では、私が魔法で援護した。必要ないと思うけど、ただ見ているだけというのもなんとなく嫌だっただけ。一応、私も戦えるというアピールでもある。魔力の管理はしっかりとしているから問題なし。



 そして、ようやく千鶴さんが鬼の角の欠片を見付けた場所まで到着した。



 何かが激しい戦闘をした後みたいに木々が薙ぎ倒されていかにも物騒な場所だということはわかる。更に運の悪いことに、ついさっきからぽつぽつと雨が降り始めている。上の雲の感じだと、じきに雨足も

強くなるだろう。さっさと調査を終わらせよう。



「綾さんと全くんもペアになって少し歩いて見てください。私が何か見落としている可能性もありますから」


「千鶴先生が見落とすとかありえないと思うけど、まぁ、複数人で確認した方が良いのは確かだね。じゃ、妹ちゃんはよろしくね」


「綾さんの護衛はしっかりとやるよ。もちろん、調査もね。輪音はここから動かないように」


「はーい。んじゃ、適当に魔法で調べてみるよ」


「お願いします」



 魔力濃度を視認する魔法と、周囲の魔力濃度を感知する魔法をそれぞれ使って、この辺りの魔力の状態を調べてみる。



………………



「ここが荒らされてから日数も経っているのかな?特に痕跡らしいものは見付けられないよ」


「そうですか。輪音さんの魔法ならば何か見付けられるのではないかと思ったのですが…」


「魔法だって万能じゃないからねぇ」


「きゅいきゅい!」



 いつの間にか私の頭から下りて薙ぎ倒された木の根の上に座っているルナちゃんが、何かを訴えるように私を見ながらきゅいきゅい鳴いた。可愛いけど、何を言いたいのかさっぱりわからない。私が困惑して千鶴さんを見上げると、千鶴さんは何かを思い出したように手をポンっと叩いて私に顔を向けてくる。



「周囲を輪音さんの鑑定眼で視ることは出来ますか?」


「出来るかどうかと聞かれたら出来るけど…。私の魔眼は構造とか名前とかを調べるやつだよ?何か見付けられるとは思えないけど…」


「何も無ければ仕方ありません。やれることは全部やってしまった方がスッキリするでしょう?」


「んー。わかった。後でやっておけば良かった~ってなるのは嫌だもんね」


「ただいま~」


「こちら千鶴さんが見付けたもののようなものは無かったかな。強いて言うならば、倒れている木々の切断面から察するに、ここで暴れた方の片方は鋭利な武器を持っていた可能性が高いと思う」



 っと、私が鑑定眼を使おうとしたタイミングで兄様と綾さんが戻って来た。兄様は戻ってきて何か語っているけど、まぁ、いいや。私もちゃちゃっと鑑定してさっさと帰ろう。雨も降っているし。



「ん?妹ちゃん、まだ何かやっているの?」


「一応ね。鑑定眼で視てから終わりにしようって話になったの」


「ふ~ん」



 みんなが見守る中、私は鑑定眼を発動させた。




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