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召喚された少女は異世界でうさぎを探す  作者: 白黒兎
第二章 異世界の国々
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48話 天才少女と黒猫魔女の街道調査

 獣王国の近くにある『知識の塔』に住んでいる魔人クーリアさんと一緒に王国方面に続く街道に出る魔物の調査をすることになったんだけど、早速目の前にとある問題が発生していた。



「馬車が襲われてるね…」


「そんな呑気なことを言っている場合ではないね。俺が行ってくる」


「にーさまがんば~」



 私の適当な応援に苦笑しながら兄様が魔物にいる馬車の方まで走っていく。おお、速い。まだ100メートル以上ありそうな距離なのに目にも止まらぬ速さであっという間に馬車の近くまで移動したよ。マジで人間やめてるね。



 馬車の周りはゴブリンっぽいのがうじゃうじゃ居る感じ。あれくらいなら兄様の敵では無いので薄情かもしれないけど襲われている馬車の対応は兄様に全部任せて、私達は本来の目的を優先することにする。



「え~っと、今回は近くにあるかもしれない魔物の巣を探すことだよね?」


「そうですね。厳密には魔物が街道にまで出てきている元凶を探し出すことですが…。まぁ、あまり変わりはないでしょう。私は見ていますので好きなようにやってみてください」


「あれ?手を貸してくれるんじゃないの?」


「何事も経験です。この世界で生き抜くためには索敵能力を鍛えることは重要ですよ。万が一見つけるのが難しいと判断した場合は私も手を貸すかアドバイスします。…しかし、索敵能力は大事だといつも言っているのに獣王国の阿呆共は未だに魔力感知能力の低さをどうにかしないなんて何考えているのでしょう……」



 おっと、クーリアさんが呪詛を呟き始めた。獣王国では存在感はあるみたいだけど、影響力はそこまで無いって感じなのかな。直接手を出すことは基本的に出来ないって言っていたし。獣王国に対して色々と助言をしているようだけど、あちら側は話半分に聞いているか対応が追い付いていないってことだよね。クーリアさんの立場が良く分からないからなんとも言えないけど、獣王国側からしたら余所者が政に口を出している訳だし、そうそう聞き入れることは無いとは思うけど、実際にこうした問題が度々起きているって話なんだし、外部からの助言だって少しくらい参考にしてなんとかした方が良いと思うけどなぁ。



 ま、そんなこと私が考える必要もないからいっか。どうでもいいし。



「ん~。とりあえず、高い所から千鶴さんに周りを見てもらう…あ、高所恐怖症だったっけ?」


「足場がしっかりしているならば大丈夫ですよ」


「千鶴さん、顔にはあんまり出さないけど本当に苦手だから、出来れば別の手段にしよう…。妹ちゃんの索敵魔法にしようか。なんとか魔力を温存する形で出来ない?」


「無茶ぶりだなぁ…。と言いたいところだけど、いくつか考えていた方法があって、もう使えるくらいには出来上がっているから今回はそれを試してみようかな」


「さすが妹ちゃん。それじゃあ任せるよ」


「魔法関係ならばやはり輪音さんは頼りになりますね。お願いします」


「おっまかせ~」



 私達が役割分担の話をしている間、ルナちゃんは呪詛を吐いているクーリアさんの足元で耳をゆらゆらさせていた。やっぱり同じ『月の領域』の関係者だから一緒の方が落ち着くのかな?



「きゅいっ」


「あいた!?」



 っと、思っていたらいきなりルナちゃんがクーリアさんの脛をパンチした。えっ、何あれどういう状況?しかも、クーリアさん涙目になってる。どんだけ痛いのあのうさパンチ…。



……あっちが気になって仕方ないけど、千鶴さんと綾さんの期待に応える為にも、今は索敵魔法に集中しよう。



 私が今回使う索敵魔法は、スキル〈魔力眼〉を模倣したもの。まだスキルとして覚えていないから仕方なく魔法で代用する感じだね。



 分類的には身体強化魔法に近い形になるのかな?…体内に魔力を移動させるから、最初はポーションを飲んだ感じになるのかな?とか思ったんだけど、既に私の魔力としてコントロールされているものだから、あの時のような嫌な感じはしなかった。そのまま魔力を目の方にまで持ってきて魔法として発動させるだけ。まぁ、この魔法として発動させる部分が一番重要なんだけどね…。



 私は魔力を色の濃さで判別出来るように…所謂サーモグラフィー的なやつ…する魔法を発動させてからゆっくりと目を開ける。おお!成功成功。世界が赤く見えるよ~。既に何回か試しているから初めて使う訳では無いんだけどね。



 この魔法は身体強化魔法と同じで持続魔法だから、一定分の魔力が常に減っている状態になる。現状は私のデバイスの中にある魔力の10分の1くらいかな。十分及第点といえるくらいには魔力の消費も抑えることが出来たと思う。持続魔法は任意に解除しない限りは効果をそのままに出来るけど、その代わり持続魔法で使った分の魔力は回復しないから注意だ。ゲームで例えると最大MPが減った状態ってこと。



「妹ちゃん、どんな感じ?」


「まだ魔法を発動させたばかりだから分からないよ。ちょっと周囲を見回してみるね」


「あ、ちょっと待ってください。私達の方に視線を向けないようにしてください。私やこの月兎は膨大な魔力を保有していますので、貴女の眼に悪影響を与える可能性があります」


「うぇ!?りょ、りょうかいで~す」



 危ない危ない。先に注意してくれて助かったよ。思わず普通に周りを見るところだった。そうだよね。クーリアさんは魔人って話だし、きっと眩しいくらい真っ赤っかだよね。それにしても、ルナちゃんもそれくらいあるんだ…。言われてみれば、この魔法を発動させていた時はいつも姿が見えなかったけど、気を遣ってくれたのかな?



……それにどんな魔法を使ったのか説明していないのに状況が分かっているっていうのも凄いね。



「目が悪くなるかもって、そんなので魔物とか見ても大丈夫なの?」


「大丈夫だよ。実際に森の中で魔物に会った時に直に見たけど問題無かったし。それに、あっちの木々の中で隠れているゴブリンとか見ても大丈夫だし」


「隠れているって、それなら全さんに教えな…くても大丈夫か」


「全くんならゴブリン程度に奇襲されても大丈夫でしょうし、そもそも気付いていると思いますよ」


「だよねー。兄様なら大丈夫大丈夫」



 兄様には雑な扱い…ではなくて全幅の信頼をしているからね!大丈夫でしょ。月の領域のダンジョンの時みたいな緊急事態でもないし。



 さて、気を取り直して他に怪しい魔力の痕跡とかあるかな~っと探していると、明らかに森の奥の方に他よりも濃い赤色が見えることに気付いた。濃いってことは、あの辺は魔力が多いってことだ。



「怪しいかは分からないけど、それっぽい痕跡は見付けたよ。あっちの森の奥の方」


「森の中に入るのかぁ~。危険度が上がるね」


「私が先導します。輪音さんは私の後ろで方向の指示を、綾さんは輪音の後ろから全体を見て警戒をしてください」


「「はーい」」


「ふふ。こういう冒険者っぽいことを本格的にするのは久し振りですね。…あ、万が一の時は私がサポートしますのでご安心ください」



 ということで、私達は怪しい(かどうかは分からないけど)魔力の痕跡を辿って、兄様を街道に置いて森の中に入っていった。馬車のことは丸投げだけど、兄様なら大丈夫だよね?うん。大丈夫でしょ。




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