42話 天才少女と獣人の国
「おぉ~!!」
国境を越えてそのまま王都まで行く予定の馬車から途中下車した私達はついに獣人の国、獣王国の首都に辿り着いた。さすがに100パーセント獣人という訳ではないけど(観光客とか、冒険者とか居るからね)、猫耳、犬耳、兎耳、熊耳等々…とにかく獣人が沢山歩いている。おぉ~もふもふだぁ~…。
「トリアさんも獣人だったし、聖国でもちらほらと見掛けていたから妹ちゃん程感動はしないけど、やっぱりすごいね」
「こうして見ると獣人というだけでもかなりの種族が居るのですね…」
「たしか、いくつもの獣人の種族が集まって出来た国だったよね?」
「そうだね。一応、獣王という王様が外交のトップして居るらしいけれど、領地内にある村や街にはそれぞれ各種族の長が治めていて、それぞれ独自のルールや文化があるって本で読んだよ」
「さす兄。物知りだね」
「いやいや、次に行く国の情報ぐらい集めるでしょう、普通…」
「いやいや、そんながっつり調べたら観光がつまらないじゃない?」
「はいはい。とりあえず立ち止まっていないで移動しましょう」
千鶴さんが手をぱんぱんと叩いて私と綾さんの話を止める。ちなみに、ルナちゃんは我関せずで私の足元をちょろちょろとしていた。人目のある所では首に従属のタグを付けているようで、宿屋などの個室では外しているようだ。外したタグはどこに持っているんだろう?まさか収納魔法が使えるのかな?まさかね。でも、魔物だし有り得ない話ではないんだよね…。
私はここに来た目的である『知識の塔』が見えないか辺りをきょろきょろする。たしか、とても高い建物らしいけど…。周囲にそれらしいものは見えないね。
「知識の塔は…ここからは見えないのかな?」
「すごく高い建物って話だけどこの辺には無さそうだね」
「その辺りの情報を集める為にも、しばらくは獣王国で冒険者の活動をしようか」
「その前に宿の確保ですよ」
「「はーい、先生」」
「後で説教です」
ひえ、私は綾さんに釣られただけなのに!酷い!
千鶴さんが寄り道をしそうになる私を抑えている間に、兄様と綾さんが良さげなお店をピックアップしながら宿屋をいくつか回り、兄様と綾さんのお眼鏡にかなう宿屋でようやく一息つく。安全の為だから仕方ないとはいえ、二人とも拘りすぎるんだよ。日が暮れるかと思った…。
宿屋探しで丸一日使った私達はいつもの女性組と兄様だけ別の部屋に別れて、今日はそのまま休むことになった。ほとんど馬車に乗っていただけだったとはいえやっぱり体は疲れているみたいで、ベッドに倒れ込むと急激に動く気力を失っていく。
「妹ちゃん、ごはんどうする?」
「んー。動くのめんどくさい」
「それでも、何か食べておいた方が良いですよ」
「うぃー」
綾さん達も今から食堂まで行く元気は無かったのか、部屋の中で携帯食を簡単に調理して食べることに。調理と言っても、私が魔法で火を使わない電気の力を使った熱源で干し肉とかスープとかに火を通すだけだけどね。
「干し肉っていうからジャーキーかと思ったら、すんごく塩味の濃い堅い何かだよね。コレ」
「まぁ、塩気って大切だからね。日本にあった市販のジャーキーと味を比べるのは間違っていると思うよ」
「スープに入れてほぐせば、多少は柔らかくなって濃い塩味もちょうど良いくらいになりますけどね」
「スープは逆にすんごく味の薄い液体だからね…」
「妹ちゃん、食欲の無くなるような表現はヤメテ」
そもそもがこのスープの素と干し肉がセットとして携帯食で売られていることからして、そういう食べ方を推奨しているんだろうなー。初めて食べた時はそれぞれ別々に食べたんだよね…。
調味料やハーブ類、普通の食材も少しだけあるからちゃんとした料理も出来るんだけどね。ただみんな疲れていて料理する気力が起きなかっただけなのである。ちなみに、私達の中で料理の出来ない人は居ないよ。意外に思われるけど、私も出来るの。さすがに凝った料理は出来ないけどね。
「きゅ~」
食事の要らないルナちゃんは微妙な味の携帯食を食べる私達を横目に、いつの間にか開けていた木窓の縁に座り込んで月光浴をしている。はぁ~可愛いなぁ。癒される~。
「妹ちゃん、明日はこの街を歩き回るんだから、早く寝るんだよ?」
「食器洗いもお願いしますね」
「あーはいはい。みんな食べるの早いなぁ」
「妹ちゃんは口が小さいから一口が少ないもんね。仕方ないね」
「…なんだろう。すっごく屈辱的だ」
何はともあれ食事を終えた私達は、ささっと寝る準備をして、さっさと寝ることにした。綾さんの言う通り、明日からは本格的に街の散策をしなきゃだからね。疲れはとっておかないと。
ルナちゃんは…まだ月光浴してる…。ほっといてもそのうち窓閉めるでしょ。そっとしておこう。
「それじゃ、お休みなさーい」
「おやすみ~」
「おやすみなさい」
文化の違う新しい国。不安もあるけど、綾さんに千鶴さん、ルナちゃんについでに兄様も居るからきっと何が起きても大丈夫。そして、なんとかデバイスを作る手段を見付けないとね!
開いている木窓から入ってくる生温い風を感じながら、私はそっと瞳を閉じた。いろいろな感情や考え事で眠れないかなと思ったけど、やっぱり疲れが溜まっていたのか、私はすんなりと意識が遠退いて眠りについた。




