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40話 天才少女と熾天使の勧め

「もぐ…もぐ…。ん…。ところで、君達はこの後どうするつもりなの?…あ、探りとかじゃないよ。ただの雑談」



 執務をサボって食事を始めた熾天使さんが食事の合間に話題を振ってきた。綾さんが不審そうな目をしたのを見て、熾天使さんは苦笑交じりにただの雑談だと付け加えたようだ。本当にただの雑談なのかは分からないけどね。



……今後の予定ねー。はっきりとどうするかはまだ決めていないんだよね。



 私がみんなの顔を見回すと、みんなもなんて言葉を返そうか考えているようだ。



「特に話し合って決めてはいませんが、輪音さんの持っているデバイス…これを制作出来そうな素材や知識を探すために、王立図書館があるという王国に向かうことを提案するつもりでした」


「私も色々な国々の中心にある王国に向かうことには賛成かな。一番情報が集めやすそうだし」


「聖国で自力を固めるのも良いけど、今は何よりデバイスが優先した方が良いね。魔力が使えないのは不便だし」


「…みんなちゃんと考えてたんだねぇ」



 私がそう呟くと、全員の視線が私に集まった。なんでそんな残念そうな子を見る目で見てくるかな。



 私だって何も考えなかった訳ではないけど、私は外で情報収集をしてなかったし、みんなが情報共有している間も他にいろいろ考え事をしていて流していたから必要最小限なことしか知らなかったんだよ。



 ちゃんと聞いていなかった私も悪いけど、そもそも私は今後の方針とか決めるの苦手なんだよね。今までは、言われたことをただやって来ただけだったし。おねえちゃん絡みでないことはあまり興味も湧かないし。



 私が心の中でいろいろ言い訳をしている中、熾天使さんはフォークを置いてナプキンで口元を拭いてから話し始めた。



「ふぅん。王国ね。王国に向かうならばここから南にある獣王国との境界門に向かって、獣王国経由で行くと良いよ。それと、獣王国を通るならば『知識の塔』に寄るのをオススメするよ」


「『知識の塔』?」



 私が何それ?っと首を傾げて周りを見回すと、綾さん達も知らなかったようで目をぱちくりとさせていた。



「その、『知識の塔』とは?」


「人や国によって呼称が異なるからピンと来ないのかな?獣王国の首都近くにある天高くそびえたつ建物の事だよ。世界中からありとあらゆる本が集まっている知識の宝庫。私は『知識の塔』って呼んでいるけど、『図書塔』だとか『魔人の塔』とかいろいろ呼ばれているかな」



 『魔人の塔』?なんだか物騒な名前が混じって無かった?



「『魔人の塔』…冒険者から少しだけ話を聞いたな。魔人が住んでいるという塔の話」


「魔人って、魔物の?」



 兄様が難しい顔で頷いた。私が熾天使さんに確認するように視線を向けると、熾天使さんはニコッと笑って肯定する。



「魔人の住む塔って…それって安全なんですか?」



 綾さんが猜疑心増し増しの目を熾天使さんに向ける。熾天使さんが勧めているくらいだから安全だとは思うけど、やっぱり不安だよね。



「魔人と言っても彼女は特別だし、それに、私の冒険者時代に組んでいたパーティーメンバーの一人だから信頼に値する人だよ。私の知る中で最も魔法や魔術具に関して詳しい人だから、デバイス…だっけ?それを作る相談をしてみると良いんじゃないかな?」



 熾天使さんが冒険者だった頃のパーティーメンバー?それって確か…『白の桔梗』っていう名前のトリアさん達が憧れている人達のことだよね?



「元々は獣人だったんだけど、昔色々あってね…。その辺りのことが聞きたいなら彼女から直接聞いてね?教えてくれるかは分からないけど」


「また行くとは決めてないですけど…」


「でも、魔術具の知識が豊富ならば教えてもらえればデバイスを作るのに大きく近付くかもよ?」


「まぁ行くかどうかは君達に任せるけどね。一応、紹介状を書いてあげるよ。もし寄ったらこれを渡せば話が早く済むよ」



 そう言って熾天使さんは食事の手を止めて紙を取り出すと、さらさらと文章を書いて隣に座る兄様に手渡した。



「…なんでそんなにいろいろやってくれるの?」



 私達を助けてくれたことといい、その後の教育のことといい、自由にしてくれたことといい、今の手紙のことといい、何故かこの人は私達にいろいろと働きかけてくれる。私がずっと気になっていたことを直球で聞いてみた。



 最初は私の質問にきょとんとした熾天使さんは苦笑いを浮かべて私を見返す。



「えーっと、君達はいろいろな意味で『特別』だからね。できるだけ関わりを持って監視しておきたいっていうのが理由かなぁ」


「うわぁ…」



 まさかそんな正直に話してくれるとは思わず顔をしかめてしまった。いけないいけない。この人はこんなだけど聖国のトップだから!こんなだけど、私達を適当な理由で捕らえることが出来る権力者なのだ!露骨に失礼なことは控えないと!



「妹ちゃん、全部顔に出てる」


「はぅあ!?」


「あはははは♪君は本当に面白いねー」



 熾天使さんが笑って許してくれる人で良かった…。綾さんがじとっとした目をしてるけど、大丈夫だったんだから良し。



「さてさて、食べ終わったし、私は執務に戻ろうかな。君達の最終的な目的がなんにせよ、まずは地力を固めてこの世界に順応するのを優先した方が良いよ。私がわざわざアドバイスするまでも無くやっているようだから大丈夫だと思うけどね」



 話をしていた筈なのに、いつの間にか食事を終えていたようだ。熾天使さんは席を立つと同時にテーブルの真ん中に小金貨を放った。



「これは団欒を邪魔したお詫びということで。余った分はあげるよ」



 えー。そんなほいほいも小金貨を投げて渡しちゃうの?これだからぶるじょわは…。



「それじゃ、君達の行く先に神のご加護があれ。…またね」



 最後にそう言い残して綺麗な天使の羽を撒き散らして熾天使さんは転移して居なくなった。…店内でそんな派手なことしないでよ!めっちゃ目立ってるじゃん!



 あ、羽根が料理に入るとかは無いから大丈夫だよ。エフェクトみたいなもので、触れると消えちゃうみたいだから。魔力で出来ているのかな?



 熾天使さんのせいでかなり目立ってしまった私達は早々にお店から出ていき、以前に泊まっていた宿と同じ宿がたまたま部屋が空いていたのでチェックインした。



 今日は帰ってきたばかりだし、熾天使さんが乱入してきて精神的にも疲れたから、今後の話は翌日ということで各々早めに就寝することになった。



 それにしても、いきなり出てきて場を荒らすだけ荒らして転移で去っていくのってホントたちが悪いと思うの!ちゃんと事前にアポとってよね!




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