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36話 天才少女と教会への帰還

 何故かわからないけど、千鶴さんが連れて行かれてしまった。ちょっと心配だけど、千鶴さんが大丈夫って言っていたらしいから信じて帰りを待つしかないよね。



 と言っても、治療魔法で傷口は塞がっているとはいえ、かなり疲弊している兄様をダンジョン内で休ませるのもどうかと思い、一度ダンジョンから外に出ることになった。



 帰りは神殿内に入り口までワープする転移陣を使ってあっさりと入り口近くの安全地帯まで移動した。あの巫女服の女の子に捕まっていたダンジョンコアらしい少女(?)が「帰りはこれを使うと良いよ」と言って出現させたものだ。帰りが楽なのは大歓迎だけど、来るのにあれだけ大変だったことを考えると、ちょっと納得いかないよね。



 そんなわけで、兄様を無事に(?)助けてダンジョンから脱出した私達は一度教会まで戻ることになった。



「お話しは伺っています。どうぞこちらへ」



 私達が教会辿り着くと、私達が説明をする前に何故か事情を知っているようだったプリシラさんが教会奥の部屋まで案内してくれる。重症を負った冒険者を一時的に休ませる部屋らしい。



 兄様をベッドに寝かせると(肩を貸していたのは身長的に釣り合って体力もあるフォセリアさんだよ)、綾さんが安堵したように大きく息を吐いた。



「とりあえず一安心、かな」


「そうだねー。兄様、幻肢痛とか大丈夫?」


「今のところは大丈夫そうかな」


「幻肢痛ってなんなの?」


「あぁ、トリアさん達は知らないかな?でも、症状は聞いたことぐらいあるかもよ?」



 幻肢痛とは、四肢が何らかのせいで切断されてしまった人に良く起きる心身症だ。失ったはずの箇所から痛みがあるように感じたりするもので、詳しい原因は不明で確実な治療法もない。本来ない箇所からの痛みだから麻酔や痛み止めなんて効かないし、痛みもとっても痛いという風に聞いている。



 わたしがざっと概要をトリアさん達に説明すると、トリアさん達も似たような症状を訴える冒険者が居ると納得してくれた。



「でも、そんな名前だなんで知りませんでしたわ」


「ち、地域や場所によって名前が違うかもしれないからね!私が勝手にそういう名前で呼んでるだけだから!」


「相変わらず妹ちゃんは迂闊なんだから。ホント、気を付けてよ?」


「あはは…」


「あーそういえば、千鶴さんは何処に連れて行かれたのかなー?」



 綾さんに小声で注意されて、兄様に苦笑いをされつつもなんとか話を誤魔化す。トリアさんにじとっとした目を向けられて冷や汗がたらりとするけど、たぶん大丈夫。うん。きっと大丈夫。



「千鶴さんでしたら中央広場にいらっしゃると思いますよ。月の領域の主が鎮座している場所ですから」



 部屋の外に行っていたプリシラさんがワゴンを押しながら帰ってきて、私の質問に答えた。ワゴンにはお肉料理が載っている。



「治療魔法では失った血は戻りません。ささやかなものですが、こちらをお食べ下さい。みなさんも、もし良かったらどうぞ」


「ありがとうございます」


「ご相伴にあずかろうか」


「いやーボクももうお腹ぺこぺこだよー」


「そんなことより、わたしは眠い…ベッドで寝ちゃダメ?」


「ダメに決まっているでしょう?ここにあるのは病人用よ」



 わいわいと騒がしくなる病室(?)内。そういえば、〈白の夕霧〉には最後まで巻き込んじゃって悪いことしたなぁ。



「どうしたの、輪音?」



 私がじっと見詰めていたからか、トリアさんが不思議そうに首を傾げる。



「うん。私達のせいでいろいろ迷惑かけて申し訳ないなぁって思って」



 トリアさんが私の言葉にきょとんとした顔になる。何か変なこと言ったかな、私?



「子供がそんなこと気にする必要無いの」


「子供じゃないよ!!」



……何を言うのかと思ったら失礼な!いつまでそのネタ引きずるの!?



 両手を上げてぷんぷんと怒っていると、普段はあまり笑わないトリアさんがくすくすと笑いだした。



「くすくす…。冗談なの。私達はただ冒険者をやっている訳ではないの。憧れの冒険者、『白の桔梗』に近付く為に冒険者をやっているの。これぐらいの事で迷惑だとか思わないの」


「そうだな。冒険者として活動しながら様々な面倒事や厄介事、時には大きな事件も解決したという伝説の冒険者パーティー。彼女達ならばもっとうまく立ち回れたはずだ。私達もまだまだだな」



 トリアさんやフォセリアさんの言葉に一様に頷く『白の夕霧』のメンバー達。凄いなぁ。これが冒険者パーティーっていうやつなんだね。彼女達が特別なだけな可能性もあるけど。さすがは兄様と千鶴さんの眼鏡にかなった人達だよね。良い人過ぎて心配になるよ。



「まぁ、私が交渉して、『白の夕霧』にもオリハルコンをくれるって話になったから、今回の件はそれが報酬ということで良いんじゃないかな?」


「ぶっ!?」


「ちょっ!?フォセリア大丈夫!?」



 綾さんの突然の発言に口に入れたものを吹き出しそうになるフォセリアさん。ランさんが慌ててハンカチを手渡した。でも、驚いたのはフォセリアさんだけではなく、リリアーナさんやトリアさんも目を大きくして驚いている。智里さんだけは眠そうに船をこいでいた。料理に顔突っ込まないかな?心配だ。



「あ、綾さん?先ほどオリハルコンと仰いませんでしたか?」


「うん。ホントはふっかけるつもりだったんだけど、なんかすんなり通っちゃって…」


「これはちょっと高すぎる報酬なの…」


「オリハルコンってそんなに高いの?」



 とても希少な金属で、かつ世界最高の硬度と魔力伝導率があるとは聞いているけど、トリアさん達が驚くほどのものなのかな?



「オリハルコンは加工も出来ないような小さな鉱石でも大金貨数枚から白金貨ぐらいの価値があるの」


「あれ?それって通貨のほぼ最大…」



 日本円換算でおよそ数百万円から千万オーバーっていうことだね。小さな鉱石が?ヒエ…。



「オークションに出せば王国の王都にある一等地で屋敷を買っても余りますわね」


「……綾さん?」



 さすがの綾さんもまさかそんなに価値のあるものだとは思わなかったのか、顔を真っ青にしている。



「でも、これでオリハルコンが手に入れば、輪音が持っているデバイスを作るのにこれ以上の素材は無いの。もっとも、加工出来ればの話になるの」


「加工も難しいの?」


「当然なの」



 世界で一番の堅さというだけではなく、ほぼ流通しない希少金属ということもあって、世界中を探してもオリハルコンを加工出来る人は本当に一握りの人達しか居ないらしい。



「ぱっと思いつくところでオリハルコンを加工出来そうなのは魔国に居るドワーフ族かなぁ。ボクの知り合いに有名なドワーフの鍛冶職人が居るから、その人なら出来るかも…?」


「…綾さん、そんなの貰っても私でもどうにも出来ないんじゃないの?」


「そこはほら、妹ちゃんの研究の力でなんとかして?得意でしょ?」



 得意ではなくて慣れてるだけなんだけど…。まぁ、今は鑑定眼もあるから構造を理解するまでは出来るだろうけど、それだけじゃあ加工の難しさは変わらないと思うけどな。視てみないと分からないけどね。



 綾さんからびっくりな情報を貰いつつ、雑談を交えながら食事をする私達。



 食事を終えると、食器類をプリシラさんが片付けに行く。手伝おうと思ったけど、これらはプリシラさん達のプライベートスペースから持ってきたらしいので丁重に断られてしまった。



 結局、手持ちぶさたになってしまったので、私達は兄様から転移させられた後の戦いについて聞いたり、私達が兄様を助けるために頑張った話をしたりして時間を潰す。



「それでそれで!智里さんの暴れっぷりがちょー凄くてね!?」


「そうか。それは見てみたかったかな」


「んー…気が向いたら全にも見せてあげるよー?…あ、帰ってきたみたい」



 智里さんが眠そうに目を擦りながら入り口の扉に顔を向ける。それに合わせて他のみんなも入り口の方を向くと、智里さんの言う通り、ガチャっと扉が開いた。



 扉の先には食器を片付けたプリシラさんと、神獣に会いに中央広場に連れていかれた千鶴さんも立っていた。




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