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21話 天才少女とフラグ回収

 森に入って私達がやることは…私の冒険者ランクがまだGのままだから…薬草類の採取と小動物狩りがメインになる。鳥とかうさぎとかだね。



「え、うさぎ狩りとかやりたくないんだけど…」


「きゅい」



 私がルナちゃんを抱きしめながらそう言うと、綾さんが苦笑交じりに同意するように頷いた。



「私もうさぎはちょっと狩り難かったから、鳥をメインにしているよ。難易度はぐっと上がるけどね」



 どちらも小さな物音で逃げるけど、地を駆けるうさぎと空に飛んで逃げる鳥では確かに難易度は異なるだろう。鳥はそもそも遠隔攻撃でないと狩れないもんね。



「兄様と千鶴さんはどうしてるの?」


「俺かい?俺は狼とか熊とかのちょっと危ない系を主に狩っていたかな。その他には鹿とか猪なんかも居るよ」


「草食動物は逃げ足が速いですが、肉食動物はこちらに向かって来ることも多いですからね。適当な動物を狩ってから血抜きで臭いを撒いて、寄って来たところを狩ったりとかも出来ますよ」


「さすが経験者だねぇ」



 森の比較的浅い場所で綾さんと手分けして黙々と薬草を採取する。綾さんも冒険者ランクFに上がっているから、簡単な討伐依頼を受けることが出来る。ま、今回はみんなが私に合わせて依頼を受けていないけどね。



 依頼を受けなくても、魔物や動物の素材は冒険者ギルドで引き取ってもらえる。ただ、常設依頼以外の依頼達成のポイントとお金がもらえないだけだ。そもそも、素材買取は冒険者でなくても出来るらしい。冒険者でない場合は手数料が割高になるから、冒険者ギルドに素材を売る人は大体冒険者らしいけどね。



 黙々と薬草を採取していると、ふと気付いたように綾さんが顔を上げて私を見てきた。なんだろうと私も顔を上げて綾さんと顔を合わせる。



「そういえば、妹ちゃんって〈調合〉スキルあったよね?あれでポーションとか作れないの?」


「作れるか作れないかで言えば作れるよ。レシピも本で見たから知っているし」


「なんで今まで作らなかったの?」


「だって、調合器具が無いもん」


「あぁ~」



 別に、簡単な調合セットはそこまで高い金額ではないし、調合器具を貸してもらえる有料施設もあるから、やろうと思えば出来たんだけどね。最近は魔法に集中していたから調合の存在を忘れていたというのが真相だったりする。



「ちなみに、ポーションはどの程度の効力なのですか?」


「んっと、あくまで本で読んだ知識だけど、下級ポーションで切り傷の治療。中級ポーションで骨折とかの重症の治療。上級ポーションで指とかの小さな部位の再生治療が可能で、超級ポーションが瀕死の重傷を治療して、完全な部位欠損を再生出来るらしいよ」


「へぇー。さすが異世界だね」


「そんなものがあると医療が発達しなさそうだな」


「この世界の医者は大体が治療魔法が使えてポーションを管理している人らしいですからね。医学知識は乏しいでしょう」


「医学知識に関しては魔法の存在があるからと最初からそう予測していたでしょ?ああそうそう、〈調合〉スキルでも確かにポーションは作れるけど、どちらかというと〈錬金術〉の領分だから、品質とか効力は落ちるよ?」


「へっ?錬金術と調合って何が違うの?」


「〈調合〉は調合行為を行う全ての行動に補正するんだけど、〈錬金術〉は魔力を使った調合に高い補正が入るみたい。万能型の調合と専門特化型の錬金術だね」


「なるほど、似たような効果のスキルでも、その能力には差が出るのですね」


「上位スキルとか複合スキルとかもあるらしいし、必ずしも幅広い効果を持つスキルが強いとは限らないみたいだね」


「コモンスキルの成長のさせ方とかも考えていかないとね」



 なんだかゲームみたいな考え方だよね。これはゲームでなくて現実だけど。ゲームの世界だったら良かったなぁ…。



 魔物はもちろん、肉食系の動物でよく会うらしい狼やら熊やらに襲われることもなく、あ、いや、危険と言えばヘビには出会ったね。毒があるし、茂みに隠れていると見付けにくいから意外と危険な奴なんだよね。とりあえずは平穏な時間で黙々と薬草狩りをしていたからか、私達が持って来た籠に結構な量の薬草が入っていた。これ以上は採り過ぎになるかな。というわけで、薬草採取から動物(鳥狩り)の方に行動を変えることに。



「『放電』!」



 バチっと音がして、木の枝に止まっていた鳥がぱたりと倒れて地面に落ちた。魔法名とか言わなくても発動出来るけど、イメージのしやすさに差が出るみたいで若干威力が安定しない時があるから、魔法を使う時は魔法名を言うようにしている。詠唱?そんな恥ずかしいの出来る訳ないじゃん。



「おー。やっぱり魔法を見ると感動するね」


「私はもう見慣れたけどね」


「生活魔法は目立たないけれど、攻撃魔法は派手だからね。俺も最初のうちは思うところがあったけれど、最近はもう慣れたかな」


「私や全さんも、『白の夕霧』の皆さんと活動している時にいろいろと見ていましたからね」



 研究の段階で失敗から成功まで嫌になるほど地道に魔法を使って来た私からしたら、もはや無感情で無意識に魔法を使える。無意識できちんと魔法が使えているということは、安定した魔法のイメージが出来ているということだから決して悪いことじゃないよ。むしろ良い事だから。



 千鶴さんがそそくさと落ちた鳥を確認して生死を確認する。そのまま足を縛って手に持ったところを見るに、恐らくはさっきの魔法で絶命したのだろう。威力は一番弱いのにしたけれど、小さな鳥には致命傷だったらしい。



 私の雷魔法『放電』は威力が三段階に分かれている。一番弱いのがスタンガンレベルで、一時的に相手を動けなくするレベル。さっき鳥に使ったのがこれ。二段階目が対魔物用の高火力で、分かり易いイメージは空から落ちてくる雷ぐらいの威力。誘導雷とかあるから近くで使うにはちょっと危険なんだよね。三段階目はホントにヤバイ相手の時を想定したもので、スタンガンや雷のように着弾時にのみ電流を流すのではなく、常に相手に雷の威力の電圧を長時間流すことでダメージを与える継続魔法だ。魔力の消費が半端ないから出来れば使いたくないのがこの三段階目なのだ。



 後は電磁波を使った電子レンジ的な魔法もあるんだけど、まだ実戦レベルにまで研究が進んでいないから今回は見送りかな。魔力が足りない…。MPが欲しいよぉ…。



 ちなみに、『放電』のスタンガンレベルの威力は対象に接触した状態でも使えるの。まさにスタンガンだね。私に触れるとビリビリさせるぞ~。



 そんな感じで、わたしの雷魔法で鳥をもう二匹ほど落として今日は帰ることになった。いやー大量だなー。



「何も起きなくて良かった。みんながフラグを立てるから何か来るんじゃないかとビクビクしちゃったよ」


「やっぱり妹ちゃんは外に出ても大丈夫だったね」


「まぁ、魔法検証の時も外出てるからね。とはいえ、毎回魔物に奇襲されるような危ないことがあったら冒険者なんて職業が成り立たないよ」


「あはは。それ私が千鶴さんにも言われた」


「お二人とも。帰る準備は大丈夫ですか?」


「「おっけーでーす」」


「じゃあ、帰ろうか」



 兄様の号令で帰路につこうとしたその時だった。



「きゅい!!」


「えっ?何?ルナちゃんどうしたの?」


「きゅいきゅい!!」



 突然ルナちゃんが鳴き始めたかと思うと、私達の後方…森の奥…を警戒するような姿勢になった。なんだか嫌な予感がする。兄様も同じ感覚がしたのか、先頭から移動して千鶴さんの隣に並ぶと、静かに剣を抜いた。綾さんも緊張した面持ちでクロスボウを構えながら距離をとる。私も魔法使いなので、綾さんと同じように兄様達前衛組からじりじりと距離を離す。



 そして、全員が警戒する中、森の奥からドスンドスンという足音が聞こえ、私達の前に『それ』が現れた。




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