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19話 天才少女と雨の日と魔法改良

 雷魔法を研究すること数日…。って、研究も何も、地球の知識からあれこれと使えそうなものを試すだけなんだけどね。



 さて、雷魔法の電気攻撃と言っても、某ポケットなモンスターが使うような電気ショックとか100万ボルトというような曖昧なイメージだけで扱うと魔力の消費が激しくなるから、対人、対生物向けに開発された武器を基準にして、きちんとした知識で扱うことが大事だ。多少雑でも雷魔法自体の魔力消費は他に比べると何故か少ないみたいだけどね。それでも、出来るだけ節約することは大切なの。



 というわけで、対人の護身用代表の電気武器と言えば、そう、スタンガンだ。



 こういった電気武器の強さというのは、電圧と電流の両方の強さが重要だ。コンセントに差すような電気機器ならば絶対に仕様として載っているⅤ(ボルト)とアンペアのことだね。



 ボルトは電気の強さを表していて、電圧が高ければ高いほど高威力の電気で攻撃できる。



 アンペアは電気の量を表していて、電流が多ければ多いほど体内に流れる電気の量が増えてより高いダメージを与えることが出来る。余談だけど、人体に深刻なダメージを与えるとされるアンペアはおよそ50mAだと言われているよ。



 一般的な家庭で使われるボルトは100ボルトなんだけど、これに消費電力およそ100ワットの電気機器を使うと1Aの電流が流れるの。1A=1000mAだから、人間、というか生物がどれだけ電気に弱いかよくわかるね。あ、でも、実際には抵抗とかがあるから、100ボルトの電圧の100Wの機器を触って感電しても実際はもっと流れる電流は少ないよ。そもそも、人体に流れる通過電流はまた求め方が違うからね。



 あー科学の授業っぽくなってきた。つまり何が言いたいかと言うと、雷魔法で特に意識することは電圧の高さと電流の多さが重要ということ!え?それはもう聞いた?あれ?



 えっと、なんだっけ?あ、そうそう。スタンガンの話だったね。私が地球で護身用に持っていたスタンガンの威力は電圧150万ボルトの人体接触時に4.4mAを流すマグナム−Xセダンという名前のやつなんだけど、これは業務用として当時最強の威力があったやつらしいの。すっごいスパークで、使う側も見ていてちょっと怖くなるくらいビリビリするんだよね。



 この出力を雷魔法の基本威力に設定した。そして、接触型の魔法でそのまんまスタンガンという魔法と、周囲に電位差を作って、周囲一帯を放電するか、特定の場所に放電する攻撃方法を作る。放電攻撃とはまぁ、雷を私の体から直接相手にぶつけるみたいな感じだと思ってくれれば良いかな。スタンガンだけだと近接魔法だからね。私の近くに近寄らせたくないからしっかりと遠隔攻撃も作らないと。レールガンは威力が高いけど物理属性だから、こうした純粋な魔法攻撃も用意しておくに越したことは無い。何よりも、レールガンよりも派手じゃない。これ重要。



「ふぅ~…ん~~!!」


「お疲れ~妹ちゃん」


「その様子ではいい感じのが出来たのですか?」


「まぁ、ねー。考えることって魔力消費を抑えることぐらいで、あとはひたすら使いたい魔法を知識に基づいてイメージをしまくって頭の中に固めるだけで良いからねー」


「なんとなくだと、やっぱり魔力消費が違うんだ?」


「ん。なんとなく再現するのと、きちんと原理を理解した上で使うのでは全然違うよ。威力の調整も楽になるから、理解出来るならば、きちんと原理を学んだ方が良いね」


「ふぅ~ん」


「今のところ魔法が使えるのは輪音さんだけですからね。今後使えるかどうかも分かりませんし…。頼りにしていますよ」


「戦うのはまだ怖いんだけどね」



 この間は護衛が沢山居たからまだ大丈夫だったけど、また四人だけで外に出るのはちょっと怖い。いつかは出ないといけないのはわかっているんだけど、どうしてもね。襲われた時の記憶がフラッシュバックして緊張しちゃうんだよね。



「はぁ…。ん?外は雨なの?」


「今気付いたんだ。私も千鶴さんも居るんだから気付こうよ」


「そういえば、二人とも朝からずっと居たね。そっか、雨だからか」



 この世界に傘というものはない。その理由は生活魔法に『防水』という魔法があって、雨水を弾けるからだ。それでも、出店に関しては防水でもカバーしきれないことが多いので、雨の日はほぼ出ていない。普通のお店は大体いつも通り開いているかな。冒険者とかも、魔法で雨を防げるから普通に活動していることが多い。だけど、雨でぬかるんだ地面で戦うには慣れが必要で、戦闘を伴う依頼を受ける人は減るらしい。小さな条件の違いが致命的なミスにつながるかもしれないからね。命を大事に活動するのは冒険者の基本!だってさ。



 尚、魔法が使えない綾さん達に関しては、雨を凌ぐ方法が無いため外を出歩けなくなるのだ。私が一緒に外に出れば問題ないけどね。



「こんなことなら、ちゃんとした外出用の鞄を持ってくれば良かった」


「お財布とスマホくらいしか持ってきていませんでしたからね。でも、スマホは充電出来るようになって助かりました」


「通話とかメールは出来ないけどね」



 当たり前の話だけど、基地局が無いのだから通話機能が使えないのだ。今のところスマホで出来るのは、ネット機能を使わないアプリだけ。写真やメモや電卓とかだね。



「写真が撮れてメモ出来るだけでもありがたいですよ。それに、魔法の使えない私達にはライト機能も役にたちますし、一日の時間は同じなので、時計で正確な時間も把握できます。使えると便利なものも多いのですよ」



 その千鶴さんのスマホは、今はルナちゃんがポチポチと弄っていた。あのうさぎ凄い器用だよね。っていうか、スマホの画面が普通に反応しているのにも驚きだよ。



「きゅい~?」


「どうしたのですか、ルナちゃん?」



 そんなルナちゃんが何かを見付けたようだ。綾さんとスマホの持ち主である千鶴さんがルナちゃんの手元を確認しに行く。もちろん、私はその場でみんなの様子を眺めていた。移動するのが面倒だったし、どうせ身長差で見えないからね。



「これって、永久先輩の写真?」


「え?なに?おねえちゃんの写真?見せて見せて~」


「永久先輩が絡むと途端に積極的になるね…」



 おねえちゃんの名前が聞こえたので慌てて椅子から降りて見に行くと、綾さんが呆れた顔になりながらも画面が見えるように隙間を空けてくれた。そこに潜り込んで千鶴さんのスマホを覗き込むと、確かに画面にはおねえちゃんの姿が写っていた。学園での何気ない一コマに見える。



「普通の写真だね。それでもおねえちゃんは絵になるけど」


「普通だね。永久先輩は普通にしててもモデルみたいな感じだけど」


「あらあら、見る目がありませんね。それでも、月代さんのファンクラブ会長とシスコン妹ですか?」


「何気に今私のこと罵倒したよね?シスコンは否定しないけどね!」


「むぅ~。千鶴先生には何か普段と違うものがわかるの?」


「綾さん、ここでは先生呼びは控えてくださいね。…一目見て分かると思うのですが…。気付きませんか?」


「ん~?」



 千鶴さんに言われてもう一度舐め回すように画面を見るけれど、全然わからない。とりあえず、おねえちゃんは可愛くて綺麗なのはわかった。今更そんなの確認するまでもないんだけどね。



「妹ちゃん、ちょっと目付きが…」


「え?何か変だった?」


「これの相手を普通にしていた永久先輩を尊敬するよ。ホント」



 なんだか失礼なことを言われたような気がする。



「それで、気付きましたか?」


「ん~?いつものおねえちゃんにしか見えないよ」


「私にもさっぱり」


「きゅい?」



 私達がわからないよと顔を横に振ると、千鶴さんはおねえちゃんの顔を指差した。指差されても全くわからない。いつものおねえちゃんの綺麗な顔が写っているだけだ。ついでにおねえちゃんはほとんど無表情でいることが多い。クールビューティーだね。愛想笑いとかも普通にするけど。



「これはですね。珍しく気分が良い時の月代さんですよ。ほら、楽しげでしょう?」


「いや。無表情にしか見えないけど」


「むむむ…。私にも無表情にしか見えないよ」


「きゅい…」



 千鶴さんに、いつもより僅かに口角が上がっているだの。目がほんの少し細められているだの、穏やかな表情をしているだのと言われるけど、全然分からなかった。私にはいつもの無表情にしか見えない。



「全く。お二人には愛が足りませんね」


「千鶴さん、先生が生徒を贔屓するのはどうなの?」


「あら。生徒には皆平等に愛を与えていますよ。質と量が違うだけです」


「それが贔屓なんだってってば」


「きゅい」


「あ、ルナちゃんが画像を消そうとしてる」


「こら。おいたはダメですよ?」



 いつの間にかスマホを独占していたルナちゃんが器用にポチポチと画面を押していたのを千鶴さんが取り上げた。なんだか、おねえちゃんの写真だけを狙って削除しようとしてる気がする。気のせいかな?



「ところでその写真って、永久先輩に了承してもらって撮ったやつ?」


「そんなはずないでしょう。彼女は写真に写るのが苦手でしたからね」


「だよね」


「ということは…」



 盗撮ってことだよね。私と綾さんがジト目になって千鶴さんを見るけど、千鶴さんはどこ吹く風というようにスマホを弄り始めた。綾さんがやれやれと首を横に振る。



「ま、先輩の写真はほとんどが盗撮だからね。もちろん、限度の越えたものはない…と思うけど」


「輪音さんのは一度ちゃんと見ておいた方が良いかもしれませんね」


「私のは合法だよ!?ちゃんとおねえちゃんに許可とったもん!!」


「きゅい」


「あー!!ルナちゃん待って!!私のスマホ盗らないで~!!」



 雨はそれから三日ほど続き、一日だけ兄様のお願いで一緒に外出した以外は、綾さんと千鶴さんと三人で宿に引きこもって雑談していた。もちろん、その間に私は魔法の研究を続けて効率の良い魔法を色々と作っていたけどね。



 お蔭様で、みんなと相談しながらじっくりと研究出来たから、雷魔法を中心に炎や氷とかの一般的な魔法も更に改良を加えることが出来た。やっぱり、他の人の知識や意見を聞くのも大事だね。




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