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17話 天才少女の魔法作成

 ルナちゃんを預かってからも、私達の一日の行動に大きく変化は無かった。ただ、いずれは私と綾さんも街の外に出られるようにならなければいけないことに変わりないため、心構えはともかく、きちんとした戦う手段を得なければいけない。



 なので、私は魔法が使えるから魔法の練習。綾さんはいつもの護身術に加えて、遠距離から攻撃出来る弓やクロスボウの練習も始めた。クロスボウは弓としては扱いやすいものだけど、スキルによる恩恵が少なくて、弓よりもアーツと呼ばれる必殺技が少ないからあまり人気が無いらしい。ほとんどの場合において、クロスボウを使うのは〈弓術〉スキルを得るまでの繋ぎなんだってさ。



 ちなみに、兄様は片手剣と小盾の普通の装備で、千鶴さんはなんとナックルを使っているみたい。最初に聞いた時は耳を疑ったね。千鶴さんは殴ったり蹴ったりして魔物を倒すみたいだよ?こわっ



 私と綾さんが街に引きこもっている間に、南の森に現れた魔物の調査が終わったらしい。どうやら、更に南にある森の深くに魔物の変異種が出て、それから逃げるために森の浅い場所まで魔物が現れてしまったようだ。その魔物の変異種が討伐されるまでは、引き続き低ランク冒険者の立ち入りは制限されるみたい。



 そんな外の情報を千鶴さんや綾さん伝手に聞きながら、私は日夜魔法の開発に精を出していた。



「魔法、魔法…。攻撃魔法ねぇ」



……デバイスの中の魔力ってそんなにないから、あまり複雑な魔法が使えないんだよなぁ。



 一度だけ、光の屈折を利用して姿を消す光学迷彩の魔法を作ってみたのだけど、魔法を発動させて数秒で魔力切れを起こして解除されてしまい、回復するまで何もすることが出来なかった。



 私のデバイスの魔力では、せいぜいが一般的な中級魔法と呼ばれている魔法数発程度が限界だ。日頃から生活で使う分の魔力を引くと、私が戦いで使える魔力はもっと少ないから、実際は数発どころか一発か二発ぐらいが限界だろうと推測される。冒険者で魔術師をやっていくには、一日で最低でも中級魔法を十発以上は使えないと魔術師としてやっていくのは難しいらしい。



 私の場合は外部出力で魔法を使っているから、今のところ魔力を増やす手段が無いのが厳しいかな。無くなった分の魔力は回復するのだから、そのままちゃっかり増えてほしいと切実に思う。



 ちなみに、魔法を使うのにかっこいい詠唱とかは必要無いらしい。イメージを強力にするために使う人も居るらしいけど、イメージさえしっかりしていれば無詠唱でもほぼ同威力の魔法が使えるんだってさ。でも、難しい魔法になればなるほどイメージだけで使うのは難しいから、結局詠唱を取り入れることがあるみたいだね。言葉に魔力が乗って魔法が制御しやすくなるらしいよ。簡単な魔法や使い慣れて身に馴染んでいる魔法とかには詠唱が必要ないというのが一般的な考え方みたい。



 プリシラさんから習った魔法学によると、魔法には大きく分けて三種類あるらしい。



 まずは、消費魔法。一番解りやすいやつだね。魔法の行使と共に一定量の魔力を消費する魔法のこと。例としては炎の玉を出して撃ち出したりするやつや、生活魔法のほとんどがこれに当たるね。



 次からがややこしいんだけど、継続魔法と維持魔法というのがあるらしい。継続魔法は、魔法の行使と共に一定量の魔力を消費し、更に魔力を継続的に消費することで、行使した魔法による現象を消滅させずに長引かせる魔法のこと。言葉にすると分かりにくいよね。例としては、炎の壁を作って、その壁を残しておくような魔法とかだね。



 で、維持魔法は魔法の行使時に魔力を用いて行使した魔法の効果を維持する魔法のこと。わけわからんわというそこの貴方。ゲーム風に言うと、最大MPを減らした状態で魔法の効果を維持しているということ。魔法の例としては、収納魔法や身体強化魔法がこれに当たるらしい。



 これでも解らないというそこの貴方…私じゃないよ?…もっと解りやすく例えると、水道の蛇口を一気に捻って水を出すのが消費魔法。蛇口を開けっ放しにするのが継続魔法。水を貯めておく貯水槽のようなものが維持魔法と覚えよう!さすが千鶴先生。例えがうまいよね。私が聞いた訳じゃないよ?ホントダヨ。



 ま、どういった仕組みで魔法というものが動くのか解れば、後は私がじっくり実験と検証をして最適化した魔法を作っていくだけだね。思っていた以上に魔力が少ないから、この最適化というのは一番重要だったりする。



 例えば、既存の生活魔法の『生水』という魔法は、どこからともなく飲み水を生み出す魔法なのだけど、この『どこからともなく』というのが魔力を多く消費する原因となっているの。ま、生活魔法だからもともと消費魔力も少ないし気にならないと思うけどそれは置いといてと、そこで私はこの生水の魔法を改良して、水を生み出す方法を空気中にある水分を集める方法に切り替えた。すると、魔力の消費量が半減したよ。やはり、何もないところから魔力で強引に何かを生み出すのは魔力の消費が多いみたいだね。こんな調子で、現代科学と上手く組み合わせて既存の魔法を改良したり、新しい魔法を作ったりしているよ。



「でも、攻撃魔法となると、消費魔力減らしてもあんまり変わらないんだよねぇ」



 既存の魔法を改良して魔力量を減らしても、どうしても気軽に使えるほどの消費にならないのだ。とても頑張って中級魔法を一、二発から三、四発に撃てるまでに消費を抑えることに成功はしたけど、これ以上節約するとなると元の威力を下げるしかなくなってしまう。それならば、下級魔法を中級魔法並みの威力に出来ないか試してみたけど、威力を上げることに成功したけど結局消費が中級魔法並みになってしまい本末転倒な結果になってしまった。既存の魔法ではこれ以上はどうしようもないと割り切った私は、新作魔法を考ることにした…んだけど。



「ぐぬぬ…」



 私が必死に頭を使って魔力消費の少ない威力の高い魔法を考えている中、ルナちゃんはベッドの上で何をするでもなく、ぐでーんと横になっていた。たまに耳がぴくぴく動いているところとか最高にキュート。この子のせいで集中力が続かないと言っても過言ではない。



「ルナちゃ~ん、ちょっともふもふ~」



 結局ルナちゃんのもふもふ魔力に負けた私はゾンビのように「あー」とか「うー」と言いながらベッドにダイブした。



「きゅい」


「あー、もふもふー」



 私がベッドにダイブした瞬間に、ルナちゃんがそれを察してひょいと逃げていった。さすが野生動物。動物じゃないから野生魔物?



「うー。ルナちゃ~ん、なんか良いアイデアないー?」


「きゅい」



 ルナちゃんに聞いても解るわけないよねー。そういえば、名前を呼んだらきちんと答えてくれるんだよね。気に入ったのかな?まさか、私達の言葉を理解していたりね。まさかね。



 私がそんなことを考えながらルナちゃんを見ていると、ルナちゃんがぴょんぴょんとジャンプしながら部屋の中を移動して私がさっきまで座っていた机に乗ると、小さな棒のようなもの(こんなの部屋にあったっけ?)を器用にうさぎの小さな手で持って、これまた器用にその小さな棒を投げてきた。



 それは弾丸のように飛んできて、見事に私の頭にこつんと当たる。なんて器用なうさぎ!っていうかすっごく痛い!



「ぐぁあああ!!痛い痛い!!」



 これ絶対赤くなってるよ!っていうかコブになっちゃうかも?とにかく痛い!!



「にゃあああ!!痛いよぉ…」



 猫みたいな声を上げながら涙目になりつつルナちゃんが投げた物を手にとってみると、それはどこからどうみてもただの鉄の棒だった。こんなの部屋にあったかなぁ?記憶に無いんだけど…。



「あ、そっか」



 鉄の棒を手にとって眺めていると、いい考えを思い付いた。そっか、何も全てを魔法でやる必要はないのか。一番無駄だったのは弾の部分だったわけだね。私はのそのそとベッドから起きあがってもう一度机に座ると、今浮かんだ発想についてまとめるように紙に書いていく。



 私が思い付いたのは、射出を魔法で、弾丸を別に用意するという方法。これで、弾丸部分の生成分魔力がまるっと削れるはずだから、大分魔力消費が楽になるね。その代わり、魔法攻撃じゃなくて物理攻撃になるけど…。まぁ、威力さえ高ければ問題無いでしょ。



 具体的な魔法なんだけど、一番簡単そうなのは空気圧で射出する空気砲かな。密閉された空間と砲身を用意して、砲身の中に弾丸を入れる。次に密閉された空間にたくさん圧を掛ける。射出したい時は圧を掛けた密閉空間と砲身を繋いでる場所に穴を開ければ圧で一気に砲身から弾丸が飛び出す仕組み。地球では、エアコンプレッサーを使った空気圧射出装置なるものが存在するから、それを参考にすればいけるはず。見たことは無いけど、仕組みは分かり易いから出来ると思う。



 それと、もう一つ、出来そうなのと言ったらレールガンかな。でもこれは電気の力を使うから、この世界では目立ちそうな魔法だよね。意外に思うかもしれないけど、雷魔法って存在しないんだよね。非日常的なものだからイメージが湧かないのかな?科学も発展していないから原理も分からないだろうし。ただし、レールガンだと弾丸に適合するものを探さないといけないなぁ。ジュール熱でじゅわっと融けちゃうやつは論外だし。ま、弾丸については後回しで良いでしょ。とりあえず、使えるようには考えておこう。



 どういう魔法にするかイメージが固まったら、次はそのイメージをより強固にするために、細かい原理やらなんやらを適当な紙に書き写していく。ちなみに、最終的にこの紙は燃やすよ。日本語で書いてあるから誰にも読めないと思うけど、一応異世界の知識に該当するからね。植物紙が普及していてよかったよ。おかげで、紙自体はそんなに高くないからね。



……よし。こんなものかな。大体イメージは掴めたから、明日にでも試してみよう!



「よし!じゃあ、残った時間はルナちゃんをもふるぞげふ!!」



 机の上に乗って私の事をじっと見ていたルナちゃんを捕まえようと手を伸ばしたら、いつの間に手に待っていたのか、ルナちゃんが小石のようなものを私の額に投げつけて、それが当たってバランスを崩した私は椅子と一緒に後ろに倒れて後頭部を床に打ち付けた。



「イタイイタイイタイイタイ!!!」



 後頭部を押さえながら床を転がる私をルナちゃんが冷めた目で見下ろして、小さく溜息を吐いた。ような気がした。たぶん。頭が痛くてそれどころじゃなかったから勘違いかもしれない。




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