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閑話 熾天使と聖天使

「ふう~。これで良かったんだよね?」



 私は肩の力を抜いて執務室のソファーに座りながら一緒に部屋に入ったアイリスにそう聞くと、私と対面の席に座ったアイリスが無表情に頷いた。ちなみに、カルタには冒険者ギルドの人を送ってもらっている。今回は無理して冒険者ギルドの人達に来てもらったからね。今回の登録作業は恐らく聖国だからこそ出来た荒業だ。こういう時に熾天使の肩書は便利だね。



「彼女の指示でなければ、無理にでも国として取り込んだ方が賢明だと思いますが…」


「指示じゃなくて『お願い』だよ」


「あの娘の『お願い』を聞けない人がこの聖国のトップの中に居るのですか?」


「居ないねぇ」



 私がクスクスと笑いながら答えると、アイリスが呆れたような目で私を見てくる。そんな目をしているアイリスだって彼女のお願いを断れないのだから、実質聖国で一番権力があるのはあの子かもしれないね。



「しかし、もし自由になった場合は面倒事の種になると思いますが…?」


「彼女曰く、既に存在自体が問題なのだから問題無いそうだよ。くす、それのどこが問題ないのか意味わからないよね」



 それに、プリシラさんを派遣してくれて召喚者達を教育することに許可を出したのは彼女だ。彼女を見てあの異世界人達が動揺していたように見えたし、あの異世界人達と彼女とは何か関係があるのかもしれない。でも、『偶像』の方の彼女が相手ではどうやっても聞き出せないだろう。あっちの彼女は処世術がしっかりしているから、本体であるあの子よりも考えていることが分かりにくいんだよね。



 今回の『お願い』は『偶像』の彼女ではなく、本体のあの子の方かららしい。『偶像』の彼女的には聖国で抱き込む分には良いのではないかと言っていたし…なんで分身体と本体で別の意見になるのかな。あの『偶像』も未だによくわからない存在だよね。



「ま、どうなるかはまだ分からないし。ここから出ていってもしばらくは冒険者としてこの街で暮らすと思うよ。さすがにすぐに国を出るほど頭の悪い人は居ないように見えたし」


「強い力に溺れるような愚かな者も居ないことを祈ります」


「あはは。だね」



 誰だって、自分が他の人より優れた力を持っていると知ればそれを誇示したくなるものだ。それで身を滅ぼす人も多くない。でも、なんとなくだけど、あの子達なら大丈夫な感じがするけどね。ただの勘だけど。



 私は穏やかな日が差し込む窓の外に視線を向けた。ここ最近はようやく落ち着いてきたけれど、また何か面倒なことが起こりそうな予感がする。きっとまたあの子はそれに巻き込まれに行くのだろう。



「あの子が動くのならば、私達もいつでも動けるようにしなくちゃね」



 私が外の景色を見ながらそう呟くと、アイリスも同じく外の景色を見ながら頷き、私へと視線を戻して憎たらしい程綺麗な笑顔をした。あれ?なんだか嫌な予感がするぞ?



「いつでも動けるようにということは、今までよりも執務をやらないといけませんね?」


「え?それとこれとは…」


「それじゃ、手始めに明日に後回しにしていた書類から始めましょうか」


「えー!もう十分働いたからいいじゃん!」


「ダメです。カルタ、ソフィアから追加でこちらの書類を持ってきて下さい。あの子はまた勝手に抱えているようですので、ちょうど良いです」


「かしこまりましたー」



 いつの間にか戻ってきていたカルタがドアの外で返事をした。もう送って来たんだ。気配感じなかったよ。



「はい。それじゃあ執務机に移動して下さい。ほらほら」


「す、少しだけだからね?」


「はいはい。早くして下さい。それでは、カルタが書類を持ってくるまでにこれをやっておきましょう」



 結局、少しどころかリーチェが抱えていた書類まで私がやることになり、その日は寝るまで執務尽くしになるのだった。



 異世界人の件。あの子が…トワちゃんが関わるのならば、相応の出来事が起こるのは間違いない。執務の時間の合間にカルタとアイリスとで模擬戦でもして勘を取り戻しておかないとね。




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