飴と鞭 第二話
私は後の人生に大きく関わる重大な罪を犯します。
小学校に上がる前にくらいの頃に私は友達とその妹とと近所のおばさんの家に遊びに行きました。帰り道は少し遠回りをしました。ドン!と言う音を聞き、振り返ったら友達の妹がコロコロと転がってその後ろにゆっくり止まる車を見ました。私はとっさに走って角を曲がった電信柱の前でしゃがみこみました。どれくらいいたのか覚えてません。でもサイレンの音は聞こえてました。何台ものサイレンの音を聞きながら私は動けませんでした。暫くして大きな手が私の頭にポンと、そして「帰りなさい」振り向くとお巡りさんでした。私は急いで家に帰りました。何もかも忘れて。
小学校3年の冬にどうしても学校を休みたかった私は母に熱があるかもと言い体温計をもらいました。コタツの中で温めていたら割れてしまったのです。慌てた私は体温計をゴミ箱に捨てました。
母は体温計を渡したことを忘れているみたいだったので何食わぬ顔でそのまま学校に行きました。
私は良く母に叩かれていました。具体的な記憶はいくら思い出そうとしても思い出せなくてただ母の軽蔑したような目だけを覚えています。
母はその頃からパートに出るようになりました。
ある日私の目の中にホクロがあるのに気が付いて「将来失明するかもね。」さらっと言いました。ある日は「人間は一人で生まれて一人で死んでいくんだよ。虐められる子はその子にも原因があるんだよ。」と。
伯母の家へ遊びに行った時に突然「あんたは可哀想だね。お父さんはお兄ちゃんが好きで、お母さんは弟ちゃんが好きで、私があんたをもらってあげるはずだったんだけど、急に仕事をすることになっちゃってごめんね。」
あーー分かってた。分かっていたけれども言葉にされてはっきり言われたのは初めてでした。思考停止。その頃には胸が痛むこともそうそう泣く事もなくなっていいました。あるのは諦めだけ。
女の子のお友達に両親がいなくおばあちゃんに育てられている子がいました。私はきっとその子、芹奈よりましなんだろうなと思っていたのかもしれません。
芹奈は良く「ひとみは不幸の星の下に生まれて、私は幸福の星の下に生まれた。」と言ってました。本当はお互いに不幸の星の下に生まれた子供のようどした。