幼き日のリィラその2
「よく、無事でいられましたな!」
グラウはリペアに頼まれてリィラを迎えに来たのだが、少女よりも巨体な猪を圧倒している様を見れば驚きの一言だった。
「えへへ……リペアの真似をしてみたの」
リィラは少し照れて笑った様に言った。
「真似とは?」
グラウはその時リィラの横に居る巨大な猪が寝息を立てている事に気づいた。
「ああ……眠っているのか……」
「うん、リペアがよく私にかけてくれるんだ……どうしても寝れない夜とか」
そう言うとリィラはナイフを取り出して捕獲したアグニルの息の根を止めようと近づく。
「あれ、どうかしたの? グラウおじさん?」
グラウはリィラの肩に手を置きリィラの動きを止める。
「……狩は初めてなのか?」
「うん、そうだよ、見るのは初めてじゃないけど、自分でやるのは初めてかな……」
その少女は平然としていた。経験してきたかのように。
「……怖くはないのか?血は出るし、途中で目覚めて暴れるかもしれませんぞ」
リィラは首をふる。
「全然」
「……そうか……リィラ……今日はわしが手本を見せますぞ、見ただけじゃ出来ないこともありますからな……」
「分かった!」
グラウはリィラからナイフを受け取るとアグニルを処理する。
「……さ、これで終わりですぞ」
「ありがとう! グラウおじさん、次は私もやってみるね」
グラウは肩にアグニルは担ぐとリィラに微笑んだ。
「あっ、私が持つよグラウおじさん」
「……ほれ」
「よーし!……お、重い……」
「ハッハッハッ!リィラにはまだ早いですな」
「グラウおじさん、力持ちだなぁ」
「そりゃ、わしは竜ですからなぁ」
グラウとリィラは山道を下り村へと帰る。