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現実は甘くなかった

 翌日。

 遅れてやってきた後頭部の腫れと痛みに悶絶し、直接ぶつけなかったはずの全身に走る痛さも相まってベッドの住人と化した。


 お医者様曰く、ぶつけた時に身体の力が変に入ったことで強ばっているのではないかとのこと。そのうち治るから無理に動かずに大人しくしているようにと。

 その診断結果を聞いた家族に、治るまでの間は絶対安静と通告される。


 安静にし始めて二日。

 やっと身体の痛みが抜けたのでベッドから出て動き回る許可がおりた。主にお母様から。


 この二日は根を張る木のように動く事が出来ずに暇だった。

 寝ることしか出来ないため、寝て、食べてを繰り返した結果。


 ……ちょっと太った。


「カタリーナ、そんなに落ち込まないで。貴女にいい話を聞かせてあげるから、元気を出してちょうだい」


 手で覆った口元はニヤリと笑っている。

 本当にいい話なのだろうか……?


「……お母様、しばらく放っておいて欲しいのだけれど」

「これからあるお客様が家にいらっしゃるのよ。倒れた貴女をここまで運んでくれたとても親切な方でね」

「あらそうなの。でもそれならお兄様があったほうがいいのではないかしら」

「いえ。ユリウスはまだ頭を打ちつけた衝撃で高熱が出て魘されいるってことになってるから、貴女が代理としてカタリーナのままで御相手の方に会ってちょうだい。さあ、優秀な我が家自慢の侍女達。カタリーナの準備をしてくれるかしら」


 はいと元気よく返事した侍女がテキパキと用意していく。服は上品かつ動きやすいように軽めで、淡いオレンジ色。

 すこし太……ふくよかになったことでキツいだろうと思われた胴回りはそこまでではなかった。

 もともと少し余裕を持って作られていたのか、ベッドの住人と化している間に仕立て屋に軽く直させたのかは定かではない。

 が、すごく快適である。


 そして彼女は髪飾りを取りだし、短くなった髪を見て明らかに落胆した。


「お嬢様、なぜ切ってしまったのですか。せっかく美しかった髪をこんなにばっさりと切ってしまわれて」

「お兄様に成りすますのに邪魔でしょう?」

「お嬢様、切らずに短く見せることは出来るのですよ」

「……まあ、いいじゃない。すぐ伸びるでしょう? それともこの短い髪は似合わないのかしら」

「似合ってますよ。似合ってるからこそ悔しいんです!」


 私の楽しみがとぶつぶつ文句をいいながらも、髪を編み込みながら花モチーフの髪飾りで止めていく手腕はすばらしい。


「お嬢様お支度が完了しました。後、奥様から伝言です。『準備が出来たら応接間に向かうように』との事です」

「え? もういらしてるの?」

「はい。既にいらっしゃるようですが、奥様が『慌てないように』とも仰ってましたのでゆっくりで構わないかと」

「お客様を待たせるわけにはいかないでしょう……。分かりました。急いで向かいます」


 動きやすい服のおかげでなるべく足音を立てずに小走りで応接間へと向かえた。

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