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白百合の如く美しき乙女

※アキト視点では、文章が少し変わっております


アキトは状況を解説することはしないため、代わりに擬声語を使っております。

状況が分かりにくいかもしれません。



 数十時間前・・・。



「最近、人が行方不明になる事件が起きてまして・・・。」

「・・・らしいな。」

「既にご存知なのですね。」


 ・・・ジュンナが言ってたな。


「・・・俺に原因を探れと?」

「数日前から秘密裏(ひみつり)に調査を(おこな)っておりますが、正体はおろか手掛かりすらも全くと言っていいほど見つけることができておりません・・・。」

「・・・俺ならできると?」

「あなた様なら、国が手を出すことができないところまで、活動できると思いますので・・・。」

「・・・なるほど。」


「行ってくださるのですか・・・?」

「・・・悪人の仕業なら、・・・俺が処罰する。」

「ありがとうございます!」




 そして現在・・・。


「な、なぜ我らの潜伏(せんぷく)場所が分かったのだ!?」

「・・・。」

「兄貴、答えねえつもりですぜ。」

「なら、やっちまうか!!」


 ドドドドドドドド!!(二人の男がアキトに向かって走って近付く音)

 バッ!!(二人が飛びかかる音)


 ・・・。

 スッ(アキトが軽やかに()ける音)


「なっ、避けやがった・・・!?」


 ドゴォ!!(アキトが弟の方をぶん殴った音)


「グワァー!!」

「弟よー!」


 ダンッ!(ぶっ飛ばされた弟が地面に落ちる音)


「おのれ、よくも弟を・・・!」


 ドドドドドドドド!!(二人の男がアキトに向かって走って近付く音)

 バッ!!(二人が飛びかかる音)


 ・・・。

 スッ(アキトが軽やかに()ける音)


「なっ、また・・・!!」

「・・・。」


 ドカッ、バコォ!!!(アキトが残った方をぶん殴った音)






「あ、ありがとうございました・・・。」

「・・・さっさと出ていけ。 ・・・だが、・・・俺のことは誰にも話すな。」

「え、どうしてですか・・・?」

「・・・話すな。」

「わ、わかりました・・・。」


 ・・・全部で12人。

 ・・・誰かはバラすか?


 ・・・まあ、・・・どうせコイツらがバラすか。


「この二人はどうするのですか?」

「・・・俺が連れていく。 ・・・早く行け。」

「は、はい・・・。」


 バタバタバタバタ(人々が出て行く音)




「スキあり!!」


 グサァ(アキトの左の方の背中にナイフが刺さった音)


「・・・!!」

「油断したなぁ。 俺はこう見えてプロなんだぜ?」


 ・・・。


「苦しくてなにも言えねえってか?」

「・・・。」


 ドカァ!(背中を向けたまま、裏拳で殴った音)


「グッ!?」

「・・・。」

「お、お前・・・、どこからそんな体力が・・・。」


 ドゴォン!!(振り向いたアキトがすぐさま顔面を殴った音)






 ・・・。

 ドサァ・・・(町の前に縄で(しば)った二人を放り出す音)


 ・・・これでいい。

 ・・・あとは。



 サッサッサッ(町から離れようと歩いている音)


 ・・・。

 ・・・ちぃ。

 ・・・傷口から、・・・血が。


 ・・・血が、・・・足りねえ。


 ・・・意識が。



 ドサッ!(アキトが気を失い草むらに倒れる音)











 ・・・。

 ・・・?


 ・・・ここは、・・・どこだ?

 ・・・雲?


 ・・・!?

 ・・・俺、・・・浮いている!?


「落ち着いて・・・。」


 ・・・?

 ・・・誰だ?


「やっと、会えた・・・。」


 ・・・?

 ・・・女の声。

 ・・・誰だ?


 ・・・(まぶ)しい。

 ・・・見えない。


「私は、あなたをずっと・・・。」


 ・・・?











 ・・・。

 ・・・・・・。


 ・・・あれ?

 ・・・ここは、・・・どこだ?


 ・・・布団。


 ・・・さっきとは、・・・また違う。

 ・・・夢?



「あ、目が覚めたのですね。」


 ・・・。

 ・・・誰だ?


 ・・・女?


「町の近くで倒れていらしたので、私の家に運び手当てをさせていただきました。」


 ・・・。

 ・・・確かに包帯が巻かれている。



 ・・・。

 ・・・・・・。

 ・・・!!?


 ・・・服が、・・・顔が!?


「あ、お洋服は洗っております。」

「・・・。」

「どうしました?」


 ・・・。


「・・・俺が、・・・怖くないのか?」

「正直、最初は驚きましたけど、今はもう大丈夫です。」


 ・・・。


 ガタッ(アキトが布団から立ち上がる音)


「あ、ダメです。 まだ安静にしていないと・・・。」

「・・・必要ない。」

「ダメです!」


 グイッ、トン!(女性がアキトを捕まえ、布団に座らせる音)


「・・・俺には、・・・やることがある。」

「なにをされているかは知りませんが、そのお怪我では危険です。」

「・・・刺されただけだ。」

「十分酷いお怪我です!」


 ・・・。

 ・・・なぜ、・・・そこまでするのか。

 ・・・俺は、・・・赤の他人だ。


「そこで待っていてくださいね。」


 トタタタタ(女性が早歩きで移動する音)



 ・・・。

 ・・・なんだ?




「お待たせしました。」

「・・・。」

「さあ、これを食べてください。」


 ・・・。


「・・・なんだ、・・・これは?」

「“レバニラ(いた)め”です。 血を作るなら、レバーを食べるのが良いと本で読んだことがあります。」

「・・・違う。」

「え?」

「・・・なぜ、・・・俺にそこまでする?」


 ・・・。

 ・・・・・・。


「お怪我をした人を助けることは、当然の行為ですから。」

「・・・それだけか?」

「はい!」


 ・・・。

 ・・・懐かしい言葉。


 ・・・昔の俺も、・・・そんなことを。



「すみませーん!!」


「あ、はーい!!」


 ・・・?


「では、私は仕事に戻りますので、ゆっくりと休んでいてください。」

「・・・。」

「レバニラ炒め、しっかり食べてくださいよ?」


 トタタタタタ(女性が早歩きで移動する音)



 ・・・俺は。

 ・・・変わってしまった。


 ・・・身も心も。






 数時間後・・・。


「大丈夫ですか?」


 ・・・。

 ・・・来たか。


「あ、しっかりとレバニラ炒めを食べましたのですね!」

「・・・。」

「お口に合いましたでしょうか・・・?」

「・・・。」

「・・・?」

「・・・ああ。」

「良かったです!!」


 ガタンッ(女性が片付けるために皿を取る音)


「そのまま大人しくしててください。 すぐ戻りますので。」


 トッタッタッタッタッ(女性がゆっくりと歩いて移動する音)


 ・・・。

 ・・・この町の、・・・住人?

 ・・・あまりにも、・・・優しすぎる。






「気分はどうでしょうか?」

「・・・。」

「なにか困ったこととかはありますか? なんでも言ってください。」

「・・・。」

「それとも、なにか楽しいことでもしますか? “花占い”とかできますが・・・。


 ・・・。


「・・・服を返せ。」

「え?」

「・・・着ていないと落ち着かん。」


 ・・・。


「で、でも、まだ傷が・・・。」

「・・・なんでも言え、・・・と聞いたが?」

「そ、それは・・・。」


 ・・・。

 ・・・・・・。


「・・・お前も、・・・この顔は怖いだろ。 ・・・さっさと、・・・服を返せ。」

「え・・・?」

「・・・。」


「いえ、本当に大丈夫です。」

「・・・?」

「もしかして、お顔に自信がないのですか?」

「・・・違う。」

「強がらなくて大丈夫ですよ。 私はあなたを傷つけたりしませんから。」


 ・・・?

 ・・・・・・?


「・・・違う、・・・俺は。」


 ギュッ(女性がアキトの頭を抱きしめる音)


「大丈夫ですよ・・・。 私はあなたの顔を嫌いにはなりません・・・。

「・・・。」


 ・・・どうして、・・・こうなっている。


「大丈夫、大丈夫ですよ・・・。」


 ・・・。

 ・・・なぜだろうか。

 ・・・なぜか、・・・とても落ち着く。



「・・・いつまで、・・そうしている。」

「あ、ごめんなさい。」


 ・・・。


「・・・服を返せ。」

「また、それですか・・・。」


 トッタッタッタッタッ(歩いて部屋を出て行く音)




 数十分後・・・。



 ・・・。

 ・・・仕方ない。

 ・・・このまま、・・・窓から出るか。



 ポフッ(布団の上に立つ音)

 ギィイイイ・・・(窓を開ける音)



 ・・・二階か。

 ・・・これくらいの高さなら、・・・死ぬ必要もないか。


「なにをしてるのですか?」


 ・・・!?


「窓から顔を出すと危険ですよ。」

「・・・。」


 ・・・戻ってきやがったか。

 ・・・仕方ない。


「はい、どうぞ。」

「・・・?」

「あなたのお洋服です。」

「・・・なんだと。」


 ・・・。

 ・・・確かに、・・・俺の服だ。


 ・・・?

 ・・・これは?


「あ、破れていましたので、直しておきました。」

「・・・。」

「こちらの赤い布も、洗っておきました。」

「・・・なぜ、・・・そこまで。」

「先ほども言った通り、当然の行為ですから。」


 ・・・。

 ・・・なぜだ。

 ・・・なぜ、・・・そこまで清くなれる?


「どうやら、あなたはお忙しい方のようですね。」

「・・・なぜ。」

「あれほどお洋服がボロボロになるのですから、かなり大変な仕事をなされているのではないかと・・・。」

「・・・。」


「入口まで案内いたします。」

「・・・大丈夫だ。」

「いえ、そうではなくて・・・。」

「・・・?」


「とりあえず、これもどうぞ。」

「・・・。」


 ・・・俺の、・・・小手や手袋、・・・靴、・・・オノとナイフ。

 ・・・全て、・・・綺麗に。




 ダンダンダンダン(階段を下りる音)


 ・・・なるほど。


「実は、私は花屋を営んでいるのです。」

「・・・。」

「こちらから出られます。」

「・・・わかった。」


 ・・・。

 ・・・花か。


「夕方になってしまいました。」

「・・・。」

「お仕事、大丈夫ですか・・・?」

「・・・ああ。」



「そういえば、自己紹介がまだでしたね。」

「・・・。」

「私は花屋を経営している"リリアン"と申します。 あなたは?」

「・・・。」

「・・・?」

「・・・アキトだ。」

「アキトさん、いつかウチで花を買ってくださいね。」

「・・・。」

「お仕事、頑張ってください!」

「・・・。」


「・・・その、・・・なんだ。」

「・・・?」

「・・・助かった。」

「フフッ、どういたしまして。」


 ・・・なぜ笑う。




 ダッダッダッダッ(花屋を離れる音)


「また、会いましょう!」



 ・・・。

 ・・・不思議な奴だ。


 ・・・。

 ・・・しかし、・・・とても清らかな女だった。


 ・・・例えるなら、・・・「白百合」か。


 ・・・。

 ・・・俺は、・・・なにを考えている?




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