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町の中のバトル 戦の中の兵士


 私はシルヴィア。

 ギルドへ向かっている途中。


 ここ数日、順調に依頼を達成している。

 レベルは低めだが、難易度が高い依頼を受けて危険な目に遭うことよりはマシだろう。



 少し前に手紙をアキトさんに渡すようにグレンバスターさんに頼まれたことがあった。

 偶然またアキトさんに会うことができて、無事に渡すことができたが・・・。

 あの手紙は一体なんだったのだろうか・・・?






 さて、今日も依頼達成を目標に頑張ろう。



「あー、そこの君。 ちょっと待ってくれ。」

「はい?」


 急に後ろから話しかけられた。

 振り返って声の主を確認すると、その主は見覚えがあった。


 全身鎧姿のガタイの良い人物。

 あまり会ったことはないが、間違いはない。

 兵士団の隊長である ”ガンダリオス“さん だ。


「外出は禁止だと連絡されてたハズだが・・・。 なぜ出歩いているんだ?」

「え、私聞いてませんが・・・。」

「おかしいな・・・。 町全体に伝えたハズだがな・・・。」


 そういえば、町に人が全くいない・・・。

 全然気付かなかったわ。


「とにかく、早くどこでもいいから建物の中に入ったほうがいい。」

「なにかあったのですか?」

「町に何体か魔物(モンスター)が侵入しているらしいんだ。」

「え!!?」


 魔物(モンスター)が町に!!?


「そういうことだから、早く避難してくれ。」

「わ、私も手伝いましょうか?」

「気持ちだけ受け取っておこう。 早く避難をしろ。」


 ・・・仕方ない。

 ここは素直に従うしかないか。


「分かりました。」


 私は来た道を戻ろうとした。

 しかし・・・。


「あの、今は無理そうです。」

「なぜだ?」

「いました。」


 私は前方を指差した。

 そこにはドラゴン系の一体の魔物(モンスター)がいた。


「早速現れやがったか・・・。」


 ガンダリオスさんは左腕の小手を右手で勢いよく掴んだ。

 その瞬間、左腕の小手から刃が飛び出した。



「道をあけてやる。 下がっていろ。」


 そう言ってガンダリオスさんは私の前に庇うように出てきた。

 背中がとても大きかった。


「待ってください!」

「言っただろ。 気持ちだけ受け取ると。」

「違います。 あの魔物(モンスター)は足技が危険です。 それと()みつき攻撃もしてきます。」


 知っている魔物(モンスター)だった。

 実際に会ったのは今が初めてだが、魔物図鑑(モンスターマニュアル)で見たことがあった。


「あ? えっと・・・、了解した。」


 そう答えてガンダリオスさんは魔物(モンスター)に向かって行った。



 彼は左腕の刃で魔物(モンスター)を斬り裂いた。

 しかし魔物(モンスター)はまだ倒れず、足を振り回して反撃してきた。

 ガンダリオスさんは腕でガードをして防ぎ、すぐさま再び刃で斬り裂いた。

 魔物(モンスター)は痛みで暴れ回り始めた。


 ガンダリオスさんは二歩くらい下がり、距離をとった。

 そして右脚を前に出し、左腕を後ろに引いた体勢で止まった。


 魔物(モンスター)は落ち着きを取り戻し、ガンダリオスさんに向かって突進し始めた。

 口を大きく開き、前進をする。

 噛みつく気だ。


「危な・・・。」


 私が声をかけようとする前に、事が起きた。


 魔物(モンスター)(そば)まで近づいてきた瞬間、ガンダリオスさんは魔物(モンスター)の鼻先に刃を突き刺した。

 そして徐々に頭頂部の方に移動させ、後頭部の上の方から斬り抜けた。

 魔物(モンスター)の頭から血が吹き出し、魔物(モンスター)は再び痛みで暴れ回る。


 ガンダリオスさんは攻撃を一切止めず、背中、脚、腕などを次々に斬り裂いた。

 当然魔物(モンスター)は地面に倒れ、もがき苦しんでいる。


 最後にガンダリオスさんは仰向(あおむ)けになった魔物(モンスター)の首を斬り裂いた。

 魔物(モンスター)の首から大量に血が吹き出した。

 そして魔物(モンスター)はそのまま動かなくなった。




「大丈夫ですか・・・?」


 戦いが終わり、左腕の刃を仕舞(しま)ったガンダリオスさん。

 鎧に傷が付いた程度で怪我は無さそうだったが、一応安否を確認した。


「いや、大丈夫だ。」


 背を向けていた体をこちらに向けながら、言葉を続けた。


「それより助かった。 ありがとう。」


 律儀(りちぎ)に頭を下げてお礼を言ってくれた。

 ただ背が大きすぎて、頭を下げても私より大きかった。


「しかし、なぜ魔物(モンスター)の弱点を・・・?」


 そして顔を上げたら、再び言葉を発した。


「私、魔物図鑑(モンスターマニュアル)を少し暗記してまして・・・。」


 その少しの中に、先程の魔物(モンスター)がいたのは良かったことだ。

 やはり勉強は大事だな。


 私に言葉を聞いて、ガンダリオスさんは兜の顎部分を鉄の指でいじり始めた。


「ほう、魔物図鑑(モンスターマニュアル)を暗記するとは・・・。 今時の冒険者にしては、しっかりした者のようだな。」


 どうやら褒められたようだ。

 私の若干の緊張が(ほぐ)れた。


「最近の冒険者たちは、事前に情報などを調べずに仕事をし始める奴らばかりでな。 キミみたいにちゃんと勉強してくれる人はとても貴重だ。」

「そうなのですか・・・。」


 話を終えると、ガンダリオスさんは急に考え込んだ。

 そして、静かに話してきた。


「すまないが、もしよかったら少し手伝ってくれないか?」

「はい?」


 その言葉は予想外だった。

 私は思わず変な声で喋ってしまった。


「キミの知識は役に立つ。 町を守るのを手伝ってくれないか?」

「え、えっと・・・。」


 と一瞬だけ悩んでみせたが、答えは既に決まっていた。


「喜んでお手伝いします!」

「そうか、ありがとう。」


 そういうとガンダリオスさんは後ろを向き、私に背を向けた。


「俺が先導する。 キミの安全は必ず守るから安心してくれ。」


 喋り終えると、ガンダリオスさんは歩み出した。

 私も遅れないように、後ろをついて行った。






「あの魔物(モンスター)はたしか・・・、火の玉を吐き出します! 気を付けてください!」


 しばらく歩いていると、次の魔物(モンスター)を発見した。

 幸い、弱点を教えておく必要のない耐久力の魔物(モンスター)であったため、注意すべき点だけを教えた。


「はぁ!!!」


 ガンダリオスさんの力強い(うな)り声は、静かな町にやや響いた。


 魔物(モンスター)は既に真っ二つとなっていた。



「弱い魔物(モンスター)で良かったですね。」

「いや・・・、弱くても魔物(モンスター)だ。 人を殺せる危険な生物には違いない。」


 彼はそう言い返した。


 確かに火の玉が一般人に当たれば、最悪の場合死に至る。

 ガンダリオスさんの言う通りだ。


「町中には、おそらくまだ魔物(モンスター)が残っているだろう。 気をつけなければ・・・。」


 そういえば、一つ気になったことがある。


「あの、どうして町に魔物(モンスター)が入ってきたのですか?」


 この町は二階建ての家より高い壁に囲われており、入口の門にも見張りがいる。

 空を飛ぶ魔物(モンスター)はともかく、地を走ることしかできない魔物(モンスター)は基本入ることはできないハズだが・・・。


「先程の魔物(モンスター)はどちらも飛行はできませんよね?」


 飛行魔物(モンスター)の侵入は防ぎきれない。

 せいぜい見張りが報告し、町に避難連絡が出るくらいだ。

 まあ、飛行魔物(モンスター)の侵入は滅多にないのだが。


 だが今現在の問題は、さっき戦った魔物(モンスター)は飛ばないということだ。

 地を歩くことしかできない魔物(モンスター)がなぜ町に入ってきたのか・・・。


「・・・見張りの兵士が殺されて、門に大穴が空いていた。」


 ガンダリオスさんの口から、答えがすぐに出てきた。

 しかし、その答えは衝撃的すぎることだった。


「どうして見張りの方が・・・。 そしてなぜそのようなことを・・・。」


 ガンダリオスさんはしばらく無言だったが、やがて動き出した。


「理由はわからないが、今はまず町にいる魔物(モンスター)たちを倒すことが優先だ。」


 そういうと、走り出した。

 見た目の重量とは反対に、足が結構速かった。


 私も置いてかれないように走り出した。






 次の魔物(モンスター)を発見した。

 しかしどうやら兵士が一人で戦っているようだ。


 魔物(モンスター)は人型で、いわゆる「鬼」のようだった。


 兵士は魔物(モンスター)に斬りかかり、防ごうとしていた右腕を斬った。

 大きな傷をつけ、魔物(モンスター)は傷のついた右腕を抑えて痛そうだった。

 しかし負けずに魔物(モンスター)は回し蹴りを放ち、兵士を蹴飛ばした。

 だが兵士は全く動かなかった。

 いや、あえて動かなかったのだ。


 蹴りは兵士の鉄の脚に直撃し、かなりの音が響いた。

 しかしダメージを受けたのは魔物(モンスター)の方だった。

 兵士は大地に根を張るように、がっしりと地に足を付けて攻撃に備えていたのだ。

 それはもはや、石柱(せきちゅう)に蹴りをかますのと同じことだった。


 兵士は、痛みで苦しんでいる魔物(モンスター)目掛けて、右ストレートを放った。

 魔物は約3メートルくらい吹っ飛び、仰向(あおむ)けに倒れた。


 そのチャンスを兵士は見逃さなかった。

 片手に持っていた剣を両手で持ち、刃の先端を魔物(モンスター)に向けた。

 そして兵士は走り、倒れている魔物(モンスター)の手前で跳び上がった。

 刃を下に向け、そのまま着地と同時に魔物(モンスター)の胸目掛けて突き刺した。

 そして速やかに斬り払うように剣を胸から抜き、距離をとった。


 魔物(モンスター)は胸から血を流している。

 しばらくもがき苦しんだ後に、動かなくなった。



「よくやった。」


 勝負を見届けたガンダリオスさんは兵士に近付いていた。

 兵士は鎧に傷が多数ついており、かなりの苦労が伝わってきた。


「この調子で魔物(モンスター)を倒し続けるぞ。」

「はい・・・!」


 そう言って兵士は休む暇もなく、次の魔物(モンスター)を倒しに走り去った。


「だ、大丈夫なのでしょうか・・・?」

「この国の兵士は、戦闘力だけならかなりのものだ。 普通の魔物(モンスター)が相手ならまず負けんよ。」


 確かに・・・。

 今まで兵士さんたちが負けた姿を見たことがない。

 そんなに強かったんだ・・・。


「さて、我々も行くぞ。」

「はい!」


 いつの間にかコンビを組まされている私だが、とりあえず町の安全を守るためにこのまま彼についていくことにした。

 というか一人で行動する勇気もないし、今更断ることもできないだろう。


 走るガンダリオスさんの後をついていった。






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