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小さな平和


 シルヴィアです。

 お手洗いから戻ってきたら、凄い光景が目の前で起きております。


「バクバクムシャムシャ。」


 どうやらメリーもステーキを頼んだようなのですが、めちゃくちゃがっついています。

 ただし問題はそこではありません。

 メリーが食べ物にがっつくのはいつものことです。

 問題は、好きな人の隣でその光景を見せていることです。


「メリー・・・?」

「ほはへひー!」(訳:おかえりー!)


 呑気(のんき)にそんなことを言っている。

 小動物のように口に食べ物を詰めている。


「ねえメリー・・・? グレンバスターさんの隣なんだよ?」

「ははっへふ。」(訳:わかってる)


 わかっているそうだ。

 というか、これで分からない方がおかしい。




 とりあえず、メリーが食べ終わるのを待った。


「グレンバスターさん、すみません・・・。」

「あー、いや・・・。 ちょっと驚いただけだ。」


 メリーの代わりにグレンバスターに謝った。

 彼はあまり気にしてなさそうだった。


「そんなだから彼氏ができないのよ。」


 いつの間にかフローリアがギルドから戻ってきていた。


「別にいいもん。 自分を(いつわ)ってまで彼氏を作ろうとは思わないもん。」

「ほう?」


 メリーの発言に、グレンバスターは興味深そうな声を出した。

 メリーは気付いて無さそうだが、会話を続けた。


「私はありのままの姿を見せて、それで好きになってくれる人を探すのよ。」


 メリーは腰に手を当てながらキッパリと言った。

 この子はなんでここまで自信があるのだろうか・・・。


 しかし、グレンバスターはなにか興味深そうな仕草を見せていた。

 一体なんだろうか?






 すっかり空が赤くなっていた。


「今日は楽しかったです。」

「それはよかった。」


 私のお礼の言葉に対して、グレンバスターは満足そうに言った。

 そういえば、いつの間にか普通に楽しんじゃっていたわね。


「ああ、私たちはこの辺りで。」


 いつの間にか分かれ道に来ていた。

 あれ、でも宿屋はそっちじゃないけど・・・。


「どこに行くんだっけ?」

「あんたが杖壊したから新しいのを買いに行くんでしょ!!」

「あー、そうだったわね。」


 ええ・・・。

 杖壊しちゃったのか・・・。


「では、また会いましょう。」


 フローリアは別れの言葉を言った。

 するとグレンバスターが口を開いた。


「ああ待ってくれ。 メリー、聞きたいことがあるんだ。」

「はい?」

「あのさ・・・、今度デートしてくれないか?」


 その瞬間だった。

 メリーの顔面が一気に真っ赤になり、そのまま後ろに勢いよく倒れた。

 そのまま痙攣(けいれん)している。


「あー、大丈夫か・・・?」

「まあ、大丈夫でしょう。」


 心配したグレンバスターにフローリアは軽く答えた。

 まあ、実際は大丈夫では無さそうだが。


「ほら立って。」

「しゅ、しゅわぁ・・・。」


 もはや正常な言語を発することは難しくなっている。

 顔がマジで幸せそうである。


「あー、恐らく明日すぐにでも来ると思いますよ?」

「ああ、じゃあ「明日の朝、広場にいる」って言っておいてくれ。」

「分かりました。 では、これで。」


 メリーに肩を貸して、フローリアは武器屋へ向けて歩き出した。

 とても歩みが不安定だったが、大丈夫だろう。




 グレンバスターと二人になった。


「いい()たちだな。」


 とても優しい声で彼はそう(つぶや)いた。


 ふと彼の方を向いた。

 白銀の兜が赤い光を反射して輝いている。

 兜で表情は分からないが、どことなく表情が想像できた。


「シルヴィアは昔から友達だったんだっけ?」

「はい。 幼い頃に故郷にいた頃からの友人です。」


 もっと細かく話すと、フローリアと友達になってそのままメリーとも友達になった。

 そのまま成長して、今に(いた)る。


「なぜシルヴィアは一緒に行動をしないんだ?」

「意志の違いです。」

「意志?」

「彼女たちは冒険者の仕事を楽しくこなしています。 ですが、私は真剣にこなしているのです。」

「なるほどな。 大体わかったぜ。」


 特に私は、一時的だが仲間になってくれた人たちの死を見てしまっている。

 もう、冒険者の仕事を楽しむことはできないだろう・・・。


 私は少し(うつむ)いた。




 グレンバスターと共に、道を歩いた。


「この後はどうするのですか?」

「酒場で飲むさ。」


 即答だった。

 最初から決めていたのだろう。


「飲みすぎてはダメですよ?」

「分かってるさ。」


 即答だった。

 受け答えが比較的に早い方のようだ。




「ところで、どうしてメリーをデートに?」


 少し気になったので聞いてみた。


「興味深くてな。」


 彼は空を見ながら言った。

 私は黙って聞くことにした。


「今まで何人もの女性とデートしたが、彼女のようなのはいなかった。 自分を偽らないという彼女の姿をもっと見てみたいと思ったのさ。」


 彼はメリーに興味がある。

 本人が聞いたら気絶しそうなことだな。


「メリーをよろしくお願いします。」

「任せろ。」


 私は母親のような言葉をグレンバスターに言い、彼も了解してくれた。

 とりあえず、大丈夫そうだ。






 私たちは宿屋の前に着いた。


「では、私はここで。 今日は楽しかったです。」


 私はグレンバスターにお辞儀をした。

 グレンバスターは酒場に行くため、ここでお別れ。


「ああ、俺もだ。」


 グレンバスターはポケットに手を入れながら、こちらを見ている。

 風でコートがなびいている。


「お互い、「小さな平和」のために頑張ろうな。」

「小さな平和?」

「この世界にとって、この国の平和は「小さな平和」さ。」


 話しながらグレンバスターは右方向を見た。

 私も同じように見た。


「メリーたちや町のみんなの笑顔を守るために俺は戦う。 たとえそれが「小さな平和」だとしてもな。」


 さっきまでふざけ半分だった彼とは違い、真面目な声のトーンで語っていた。

 どうやらこの人も、根は真面目のようだ。


「だから、お互い頑張ろうな。」


 グレンバスターは手を差し出してきた。

 私はすぐに理解し、握手をした。


「はい・・・!」


 私の答えは決まっている。



「そんじゃ、またどこかで会おう。」

「はい!」


 グレンバスターはポケットに手を入れたまま、道を歩き出した。

 私はその後ろ姿を見送っていた。


 ・・・。

 ・・・・・・。


「あの!」


 私は一つだけ彼に伝えたいことがあった。

 グレンバスターは体を少しだけこちらに向け、私の言葉を待っていた。


「実は、例の「彼」について、私はあなたに隠していることがあります!」


 「彼」とは、アキトさんのことである。

 グレンバスターはさらに体を私の方へ向けた。


「ですが、今はまだ話せません! でも、いつかあなたに話そうと思います! ですから、その時まで待っててくれませんか!?」


 伝えたいことを伝えられた。

 当初はあまりグレンバスターのことを信用してなかった。

 だけど、今日のデートで彼のことを少しだけだが知ることができた。


 彼はこの国・・・いや、この世界にいなくてはならない存在だ。

 そんな彼になら「彼」のことを話しても良いかと思った。


 だけどやはり、彼にいないところで勝手に言うわけにはいかない。

 だからいつか二人が会ったときに、彼の口から言ってもらおうと思ってる。

 言ってくれ無さそうだが・・・。



「・・・わかった、待ってる。」


 グレンバスターはポケットから右手だけ出すと、私に対してサムズアップをして、再びポケットに右手を戻した。

 そして再び後ろを向き、歩き出した。

 そしてしばらくして彼の姿は見えなくなった。











 俺はグレンバスター。

 デート後だ。


 今日はあの酒場へと行くか。



 こうやっている間にも、アイツは殺人でもしているのだろうか?

 普段「奴」はなにをしているのだろうか?

 考えれば考えるだけ謎が出てくる。

 まさに謎な奴だ。



 周りから視線が向けられている。

 人気ものは大変だなぁ・・・。


 冗談ではなく、まじで大変だから困る。


 仮にこれで俺が殺人でも起こしたら、周りの奴らはどういう反応をするのだろうか?

 やはり離れるのだろうかな?

 しねえけど。



 シルヴィアが「奴」に関してなにか知っているようだが、一体なんなのだろうか?

 まずシルヴィアは、「奴」にとってのなんなのだろうか?

 そしてシルヴィアはメリーたちにその事を話しているのか?


 考えれば考えるほど気になってくる・・・。




「あの!!」


 一人の兵士が話しかけてきた。

 なぜこんなところに・・・?


「グレンバスター様、マリス王女がお呼びです! 至急来て欲しいようです。」


 王女が?

 また呼んでるのか。


「酒飲んだ後じゃダメか?」

「ダメです。 飲酒後はさらにダメです。」


 仕方ないので俺は方向を変え、城に向かって歩き出した。

 道を覚えているが、兵士が先導(せんどう)してくれた。






 俺は客間で待たされていた。


「申し訳ございません。 突然お呼びになってしまって・・・。」

「なんの用だ?」


 マリスが来た。

 相変わらず美人だった。


「実はお願いしたいがございまして・・・。」

「お願い?」


 そう言うと、彼女は手紙を渡してきた。


「こちらの手紙を「あの人」にお渡ししてくれませんか?」

「なるほど、そういうわけか・・・。」


 ついに本格的にかかわり始めるのか。

 本来なら止めるべきなのだろうが、王女は意志が強い御方だ。

 俺が断っても、他の方法で渡そうとするだろう。

 ・・・となれば仕方ない。


「わかった。 だが、俺も奴がどこにいるか知らねえんだ。 遅くなっちまうと思うがいいか?」

「はい、大丈夫です。 ですが、渡してくださった時にはご報告をしてもらえませんか?」

「ああ、わかった。」


 俺は手紙をしっかり受け取り、(ふところ)仕舞(しま)った。


「では、よろしくお願いします!」


 王女は綺麗なお辞儀をした。




 王女の頼まれ事を達成させるため、俺は城を出て町の中を歩きながらどうするかを考えていた。

 ・・・というか、真っ先に一つ思いついた。


 "シルヴィア"だ。

 彼女なら奴の居場所を知っているかもしれない。

 次に会ったときに頼んでみよう。



 さてと、今度こそ酒場へ行こう。

 そう思い、俺は目的地に向けて歩み出した。






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