始まりのテロ
世界観たいへんです
「そろそろ10年...か...」
時は2019年5月2日。歩きスマホをする彼のスマホの画面には[エイテサウザ星移住まもなく10年]の文字がでかでかと写し出されていた。
彼は日本の青巻市青巻高校に通う高校1年生、藤野勝吾である。彼もまた謎の宇宙人エイテサウザにいらだちを覚える1人だった。
「ったく、10年経ったからなんだってんだ...」
エイテサウザは日本が気に入ったのか、日本から離れず、外国を侵略するような真似もしなかった。
エイテサウザ移住が始まって以来、大きな事件もなく、日本は侵略される前とほぼ変わらない日々を送り続けている。
そのせいか、日本人だけでなく、地球人はエイテサウザ人になんの嫌悪感も感じなくなっている。
藤野は携帯をポケットにしまい、青巻高校1年3組の教室へと入った。
「おはよ、藤野」
「あぁ」
彼の数少ない友達のひとり、ケンティーである。
「藤野聞いたか?この前起きた東京でのテロ、まだ幹部の奴ら捕まってないらしいぞ」
エイテサウザ移住が始まって、テロが頻繁に起こるようになった。とはいっても2年に一回くらいのペースで起こるくらいのものである。
「また東京でテロが起こる可能性もあるのか...」
「あぁ、でもそいつらの狙いはエイテサウザだからな。俺らが心配するようなことじゃない」
「まぁ確かにそうだが...」
ケンティーの言う通りである。
テロリストのほとんどは地球人で、狙いは宇宙人であるエイテサウザだ。
エイテサウザの本部や組織が集中するのは都市部である。だからテロリストが狙うのは、東京や京都といった所だ。俺たちがいる青巻地区などもってのほかである。
「1時間目なんだっけ?」
「えーと...数学だったような......んッ?なんだ⁈」
突然、避難訓練の時しか聞かないサイレンが校内に響きわたる。
いつもと違う状況に教室はざわめいた。
『えー、ただいま新町地区にてテロが発生しました。全校の皆さんは先生の指示のもと、地下シェルターに直ちに避難してください』
窓に目を向けると、遠くで煙が上がっているのが見える。教室は一瞬にしてパニックと化す。ここ、青巻市では、テロなんて起きるはずないからだ。
「落ち着け!みんな!地下シェルターなら安全だ!」
そう、地下シェルターに入ればほぼ安全である。
エイテサウザ移住から変わったことの1つに、避難訓練で地下シェルターに避難する項目が追加された、というものがある。
この避難訓練は年に数回行われ、今のところテロによる死者は出ていないと聞いている。
エイテサウザ人は、我々日本人と交わした条約を遵守しているのである。
廊下に出て、先生の指示に従い階段を降りていく。
「いや〜、青巻でもテロってあるもんなんだな〜」
「.......」
「...ケンティー?」
「...ん?おぉ、悪い、聞いてなかった」
「いや、別にいいんだけども...」
なんだかケンティーの様子がおかしいが、それも無理はない。なんせテロだ。かくいう俺は非日常な展開に興奮しつつあるが。
地下シェルターは一階の正面玄関近くの階段を降りたところにある。地下シェルターは、体育館ぐらいの広さで快適きわまりない。もし、生き埋めになっても地上に出られる仕組みになっている。
災害が多い日本では、安全を確保するため全国の施設、学校に地下シェルターを設備するよう義務付けられている。
一階に降りると、地下シェルターへ続く階段はすごい騒ぎになっていた。
「押さないで!ゆっくりゆっくり!」
「おい、早くいけよ!」
「死にたくない!!」
「これじゃぁ、避難訓練の意味ねぇじゃんかなぁケンティー...?あれ?ケンティー?」
さっきまで藤野の後ろにいたケンティーの姿は無くなっている。
あたりを見渡すが、どこにもいない。
「うわっ」
後ろから人の波に押されて身動きがとれない。人の圧力ってすごいもんだ。
「‼︎」
その時、僅かに玄関から出て行くケンティーの姿が見えた。
「おい待て‼︎ケンティー‼︎」
ケンティーはどこか急いでおり、こちらの声には気づかない。
叫び続ける藤野の声はケンティーに届くことは無かった。
テロ、こわいです