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全ての力を奪われた暴勇バベル  作者: おにまる
第三章 ベルランテ帝国軍編
46/55

暗雲



 バルサーチとの激戦を制したバベルは、村に帰って来た。

村人たちもその後、鬼がどうなったか心配で待っててくれたようで、4人の無事な姿を見ると喜んで温かく迎えてくれた。

そこには、マリの姿もあった。

「大丈夫だ、マリ」

「バルちゃん病気治ってた?」

「あぁ、ちゃんと元気に家に帰って行ったぞ。」

それを聞いて村人も皆明るい表情になり、バベル達を褒め称えた。


そこの村長にもジェネラルオーガが居たが、無抵抗の奴を襲うような奴じゃ無かった事と、無事に魔界に帰って行った事を説明した。

「マリの言う通りいい奴だったぞ。」

「そうでしょ、バルちゃん優しかったよ」

マリはバルサーチの事を理解してくれたのが嬉しかったのか、自慢げに皆に話してた。

(魔界にもあぁいう筋の通った武将はいるんだな。)


 バベルは改めてバルサーチの事を思い返していた、生まれた種族が違えばいい友に慣れたかもしれない、人間と魔族と言うどうしても乗り越えられない壁はある。その壁は帝国と共和国と言ったような壁ではなく、その種族に生まれついたときから、お互いの闘いはもはや宿命でしかないのかもしれない。


それでも魔族の中にはもっとバルサーチの様に筋の通った奴がいるのかもしれないと少し見方を変えたのであった。


「どうしたんですか、バベル様?」

すこし考え事をしてると、アンナが声かけて来た、バルサーチの最後に言ったデュークが侵攻の準備をしてると思われることが気になっていた、この前の魔物の襲撃の件もあるし、一度帝都に戻るかと考えてた。

「んー最後にバルサーチの言った事とこの間の魔物の襲撃の件といいデュークが着々と準備してる事は間違いないよな」

「やはり、気になりますよね」

「よし、他にも何か起こってるかもしれないから一旦帝都にもどるぞ」

「そうですね、それがいいかもしれません。」


そうしてバベル達は村人たちに別れを告げ、帝都に急いだ。

「ここからなら馬車で2時間もあれば着くな。」

「今頃ジュリア様達は、大変かもしれませんがバルランテ帝国とラグナロア共和国は無事に休戦になってよかったですね。」


「そうだな、今は皆が団結しなければな。」


そうして帝都に着いたバベル達は、城にいるジュリアに会いに行った。

やはり厳戒態勢を取るべく城の周りには続々と兵が集結してた、なにやら悪い胸騒ぎがするのを落ち着かせつつもその足は自然と早くなった。


城に入るとジュリアが出迎えてくれた。

「バベル、戻ったか」

「あぁ、そっちはどうだ?」

「共和国との休戦は無事締結した。」

「そうか良かった。」

「これは、お前の手柄でもある、それにまたあちらこちらで活躍したみたいだな。」

「大したことしてないんだがな・・・」

「いや、お前は大した奴だ。」

「それよりも何か新しい情報は入ったか?」

「そのことだが来て早々悪いが話がしたい、部屋に来てもらっていいか?アンナ達も構わない」

「わかった」


そしてジュリアの部屋に移動した俺たちは、アンナのいつになく真剣な表情にデュークの忍び寄る魔の手が、近くまで来てるであろうことを再認識した。


「実はな、ローレンス王国の北にあるブルーム連合国が、あのデュークとか言う者が率いる魔族に侵攻に合ってると言う情報が入ってな。」

「やはりな・・・」

「バベルの方でも何か情報があったか?」

「デュークは魔族の提督になって、あの魔王の配下だった魔界の四天王も従えてるらしい。」

「いわば、あいつは現魔王と言う事か・・・」

「俺も昔魔界には遊びに行ってたから知ってるが、あの四天王達はそんなにすぐに従うような奴らじゃないんだ。」

「デュークには俺たちの知らない何か秘密がまだありそうだ。」

「魔界の総力上げて来ると言うのか・・・」

「あぁ近々その四天王を従えて進行してくるらしい。」

「なんと、その情報はどこから?」


そしてバベルは、バルサーチと対決したことを話した。

バルサーチは、デュークの命令で来てたわけじゃなく、魔王を倒した俺と一騎打ちするために個人で来てたことを説明し始めた。

魔族ながら騎士道精神を持ち合わせた、敵にしては立派な武将で合った事と無抵抗な人間を手に掛けるような奴じゃ無かった事。

対決には勝ったが、なぜか憎めず魔界に帰したことを説明した。


「そしてバルサーチが帰り際にその事を忠告してきた。すまねーな敵の将軍をみすみす帰しちまった。」

「私はお前を信じている、お前が正しいと思って行動したと言うなら、咎めるつもりはない。」

「それより魔族の侵攻をどうするかだな」

「あぁ、ブルーム連合国の次はローレンス王国に来るだろう・・・」

「ローレンス王国は、共和国との調停に入ってくれたいわば同盟国とも言える国だから守らねば。」

「ローレンス王国に行くか?」

「ここを全く留守には出来ないが兵は送るつもりだ、バベルも行ってくれるか?」

「もちろんだ、奴とは決着をつける」


そうしてジュリアはラグナロア共和国にも呼びかけローレンス王国の防御を固めるため兵を送る準備に取り掛かった。

兵を送ると言っても帝国に魔族が侵攻してくる可能性もある。

もしかしたら罠で兵力の分断を狙ってると言う可能性もあるので、送る兵力は慎重に検討しなければならない。


そして出発の前日にジュリアはバベルを呼び出した。

「すまないバベルには行ってもらうよう頼んだが、私はここに残ろうと思う。」

「それがいい、ここにも魔族が来ないとは限らないからな。」

「ラドルフ将軍に兵を率いてローレンス王国の防衛強化に当たってもらおうと思う。」

「大丈夫か?」

「ラドルフ将軍がここの防衛を抜けるのは痛いが、それより魔族がそのままローレンス王国に来る方が確立が高いからな、ローレンス王国は絶対に守らなければならない。」

「分かった、いつ発つ?」

「明日だ、バベルにはすまないと思ってる」

「らしくねーぞ、戦姫だろ命令すりゃーいいんだよ。」


そしてその日はローレンス王国への出兵のための激励も兼ねてジュリアが宴を催した。

そこで、久しぶりにラドルフにも会った。


「バベル、久しぶりだな。それに見違えるほど強くなったようだな。」

流石は、ラドルフ将軍であった。バベルを一目見るなりバベルの秘めたる闘志がまた一回り大きくなったのを見抜いていたのである。


「あぁラドルフ久しぶりだな、おかげでかなり力を取り戻す事ができた。」

「そうか、もう槍を交えても相手にならんだろうな」

「ラドルフも体はもういいのか?」

「この通り何時でも出兵できるぜ、姫から聞いたまた一緒に戦場に立つ事が出来る。」

「また激戦になるやもしれんぞ」

「国の為に戦い戦場で死ぬなら本望よ。」

「さすがは帝国を代表する将軍だな」

「さぁー今日は盛大に飲もうぜ、土産話もあるんだろ?」

「あぁ、色々と話したいこともある」


それから、バベルは魔界島のことやバルサーチの事を酒の肴に話した。

おそらく二人ともこの先待ち受ける激戦を予想しながらも、考えることは有るだろうが、そんな素振りも見せずに久々の再会を祝って酒を楽しんだ。







読んで頂きありがとうございます。

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