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全ての力を奪われた暴勇バベル  作者: おにまる
第三章 ベルランテ帝国軍編
28/55

国境見回りー3

よろしくお願いします


 

 翌日目を覚ましたバベルがロビーに顔を出すと、アンナとハクはもう起きて来ていた。

「おはよーございます、バベル様、良く寝れましたか?」


「あぁ、おはよう」

「しかし、流石お気楽姫だな、ドリポンのためにこんな屋敷まで用意してるとは」


「すごい大きいですよね、それにすごい綺麗なお庭で朝早くに起きて、散歩しちゃいました。」


「ジュリアはまだ起きてこないのか?」


「姫様は、カズヤさん達とちょっと町を見回りとか言ってましたよ、すぐ戻るからって」


「さっそくドリポンかよ」


 そんな話をしながら寛いでいるとジュリア達は帰って来た、カズヤの脇にはしっかりドリポンが大事そうに抱えられていた、ようやく町にも出荷されて来たらしい。


遅めの朝食を皆で取りながら、ジュリアが、国境まで一気に行くことを告げた。

準備を終えた一行は早速国境へ向かって旅立った、いくつかの町と村を抜けてたどり着いた二日目の村サンライトビレッジでアンナは生まれ育った場所に似た雰囲気を感じた、広大で豊かな農地や牧場が広がる酪農地域だった。

「あれから、まだそんなに日は経ってないですが、なんだか懐かしいですねバベル様」


「あぁ、そうだな」


「バベル様と初めて出会った時の事を思い出します。」


照れくさそうに、そして懐かしむ感じでバベルは頭を掻いた、そしてバベルもその頃を思い出していた。

(実際アンナと出会ってなかったら、今頃どう過ごしてたのか・・・)


あれからバベルを取り巻く環境は目覚ましく変化していった、アンナとの出会いとその後のバベルの行動、そして帝国においてはバベルの賞金首は取り消され、今や帝国の戦士として国の為に戦う事を受け入れたバベルに対する国民の目も変わりつつあった。


これまで目にし肌で帝国の人々を感じ、暖かく迎え入れてくれる町の人達、そんな人達に答えたい、そんな感情すら昔は分からなかったが、いまでは少しづつバベルの心にも芽生えつつあった。

そう思い耽っているとハクがバベルに言った。


「なんだか先ほどから時々獣人の気配がすることがある」

「そうか、俺は感じねーけどな」

すると姫が言った。

「流石だなハク、この辺りは獣人の血を引くものが多くいるんだ」

それが、ラグナロアとベルランテが元々は一つの国であった証であろう、いわゆる混血の人たちの末裔なのだという、当時混血の人たちはどちらにも行けず迫害を受けたが、ある時の皇帝がこの帝国における混血の人たちにおける差別を禁じた、しかしながらも馴染めぬ混血の人たちはこの辺りに集まって集落を築き上げてきたという。


「興奮したり気が高まるとその一端が現れる者もいると聞く、そのせいかもな」


「なるほど昔から獣人はよく眼にしたから気配はよくわかるが、少し違う気はしてた」

そう獣人の者達は白虎を神と崇めて定期的に、霊峰に捧げものを届けに来るのだという。


ここで暮らす人々からは憎しみや怒りというものは、感じられなかった、むしろ穏やかに平和に暮らしてるように見受けられた。


「それにしてもよくこの地で作られる作物が受け入れられるな」


「そう思うだろう?」


「最初は受け入れられなかったらしいぞ」

そう言ってジュリアはここの歴史を説明し始めた、住み着いた当初に作られる作物は帝国に受け入れられず、苦しい生活を虐げられてたらしい、どうすれば受け入れられるかここの住民は日々努力したんだ、旨いもんを作ればいいと、普通に作ってはダメなんだ俺たちが受け入れられるにはより旨くないと、もともと酪農を営んでたものが多かったのかもしれない、日々改良を続け努力し続けたんだ、そして徐々にここで作られる作物や乳製品は非常に旨いと評判になり、今やこの帝国には欠かせない物なんだ、そしてここの住民は誇りを持っているサンライトビレッジ(陽の当たる村)で酪農を営んでいる事を。

そんな話をしていると遠くから少女が大きな布袋を担いで近づいてくる

「ジュリア姫様~」


「あぁ、マクランか」


「ジュリア姫様が来てると聞いて獲れ立て持って来ました、とっても美味しいお芋とチーズです!受け取ってください」


「ありがとう、マクラン喜んでもらおう」


ジュリアもこの地が好きでよく遊びに来るのだという。

「ジュリア姫様また今度あたしの所の牧場に遊びに来てくださいねー一緒にお馬さん乗ったりしたいです。」


「あぁ必ず今度いくよ」


そう言ってジュリアは微笑んで手を振った。

ジュリアがこの帝国で愛されてるのが少し分かった気がした。

そしてジュリアがいかにこの帝国を愛しているのかと言う事も・・・


「さぁここまで来たら国境はすぐそこだ、急ぐぞ!」

ジュリアがそう言って一行は国境へと向かった。










読んで頂きありがとうございます。

感想や、評価お待ちしております。


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