13
僕らは昨夜と同じように輪になって手を繋ぎ、グルグルと回り始めた。
勿論、あの呪文を唱えながら……。
儀式を始めると不思議と疲れが抜け、心地良かった。
「よし、そろそろ始業時間だ! 授業に遅れる前に教室へ戻るぞ!」
シンラ君の掛け声で僕らは現実に引き戻された。
時計を見ると始業ベルが鳴る五分前だった。
次に集まるのは昼休憩ニャ。
早くあの心地良さに戻りたくて、僕は授業の間も、ずっと上の空だった。
昼休憩になると僕らは屋上に集まった。
まずは練習前の腹ごしらえニャ。
モミジ先輩と卯月さんは女子同士、入り口付近の壁を背に並んで座り、持参したお弁当を広げた。
僕と加枝留くんはその向かいで胡坐をかいて売店で購入したパンを頬張った。
僕らが輪になるようにして座っている横でシンラくんはと言うと……
何故か仁王立ちで僕らを見下ろしていた。
「あの……シンラくん?」
僕は恐る恐る声を掛けた。
「ん? 何だ?」
「ご飯、食べないんですか?」
僕の疑問にモミジ先輩も続く。
「食べないと大きくなれないわよー? ま、もう手遅れかも知れないけどねー?」
モミジ先輩が小馬鹿にしたように笑みで言った。
「もしかして、忘れてしまいましたか?」
加枝留くんの言葉にシンラくんはふんぞり返って答えた。
「まさか! エリートの僕が忘れ物などする訳がなかろう!」
そう言うとシンラくんは肩掛けのカバンから水の入った一本のペットボトルを取り出した。
それを片手に、もう一方の手で制服のポケットから小さなチャック付きの透明のビニール袋を取り出した。
色、大小、形など、様々なモノが二十粒ほど入った薬やカプセルが見える。
「……もしかしてそれ、サプリメントですか?」
僕の問いにシンラくんはふんぞり返ったまま答えた。
「勿論! 僕の『主食』だ!」
「嘘でしょ!?」
モミジ先輩はドン引きした。
「考えてもみろ、このたった二十粒で必要な栄養素を手軽に素早く摂取出来るのだぞ! 時間の有効活用だろう!」
そう言うとシンラくんは信じられないことに、二十粒ものサプリを全て手のひらに乗せ、それを一度にパクっと口の中に放り込んでペットボトルの水で一気に流し込んだ。
わずか五秒、喉が鳴ったのはたった二回! 人間技じゃないニャ!
「やっぱアンタ、普通じゃないわよっ!」
思わず自分の喉元を抑えながら、モミジ先輩はドン引きを通り越して恐れすら抱いたように言った。
しかし、皆がシンラくんに引いてる中で、卯月さんの反応だけは違った。
「やだっ、好きになりそう……っ!」
ええぇええーっ!? 今のでっ!?
僕はますます卯月さんのツボが分からなくなってしまった。