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森羅万象くんは基本無表情で物怖じしない堂々とした口調をしていた。
「何よ、コバン。あんたコイツ知ってるの?」
モミジ先輩が彼を指差しながら僕に尋ねる。
「ええ。というか僕ら一年生の中では結構有名人というか……」
僕だけじゃなく、加枝留くんも卯月さんも頷いていた。
森羅万象くんは学年トップの成績を誇るインテリ少年だ。
だけどそれ以上に彼を有名にしているのはその髪型だった。
彼はまだ高校生でありながら七三分けで灰色の髪の毛をしているのだ。
勿論染めている訳ではなく地毛だそうで、密かに若白髪とか麿とか呼ばれてる。
麿の由来は眉毛がちょっと短いからであって、決して何処ぞのアナウンサーからでは無い。
でも、何より僕が彼を覚えていたのはその「身長」だった。
そう、彼は僕と同じ、小柄な少年なのである!
よって僕の『お気に入りリスト』に密かに名を連ねていたのだ!
この名簿には僕と同じくらいの百六十センチ以下と思しき人物が入ってて、言うまでもなく加枝留くんと、稲荷桔音くんも入っているのだ。
あ、因みにそっち系の趣味とか、そういうんじゃないよ!
仲間意識的なあれニャ。
「何よ、また小っさいのが増えたの? ホント類は友を呼ぶわね! それとも何? 小さいヤツに変なヤツが多い訳?」
モミジ先輩がプリプリしてる。
「小さいとは何だ、失敬な。」
森羅万象くんはふんぞり返ったまま反論した。