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その日、僕らオカルト同好会は、夜の学校の屋上にいた。
「ね、ねえ、ちょっとこれヤバイんじゃないのっ!?」
上空を見上げて怖じ気づいたモミジ先輩が後退りをする。
「ど、どうしたらいいのニャ!? シンラくん!!」
僕は世界の終わりのような信じられない光景に狼狽えることしか出来なかった。
――――すべては三日前に遡る。
僕、猫宮小判は放課後、いつものようにオカルト同好会のメンバー達と共に図書室のテーブルに集まり、次の新聞の打ち合わせをしていた。
「何かネタはないの?」
先輩の鹿島椛先輩は腕を組んだまま椅子の背に凭れながら言った。
「ここ最近の話ですが……」
副部長の雨森加枝留くんが皆を見渡しながら怖い話でもするかのように声を潜めて言った。
いや、まあ、怖い話を求めてるような部活動なんだけどね。
「夜、学校の前を通った生徒が、屋上で人影を目撃したそうです……」
「人影? 情報源は誰ニャ?」
「矢馬井二下朗くんです」
「誰ニャ、それ」
加枝留くんの謎の人脈はさておき、話は進む。
「夜の屋上かぁ……そもそも屋上は閉められてるはずニャ」
「それを言ったら学校だって閉められてるわよ」
僕とモミジ先輩の言葉を部の創設者で部員の卯月美魅さんが総括する。
「ウフフ……つまり幽霊ね」
そう、これは幽霊に決まってるのニャ!
僕らは部のネタの為、いつものように都合良く解釈した。
「よし、じゃあ今回の記事は決まりね! 『誰もいない校舎の屋上に夜な夜な現れる幽霊の謎! それはイジメを苦に自殺した生徒の霊だった!』」
モミジ先輩が早速、タイトルからオチまで決めたけど、いつものように加枝留くんが鋭い突っ込みを入れる。
「ここ、誰か自殺したんですか?」
「知らないわよそんなの! 今考えたんだから!」
「捏造じゃないですか」
因みにここ、宵々町の神輿高校で自殺した生徒はいないのニャ。
「とにかく! 今日から早速、張り込むわよ!」
久々にやる気満々のモミジ先輩。
「その……矢馬井二下朗くんとやらは一体、何時頃に見たのニャ?」
「確か八時頃だったと言ってました」
加枝留くんの言葉に僕は腕時計を見た。
まだ四時。大分時間が余るニャ。
「じゃあ一旦帰って八時にまた学校に集合ニャ! みんな参加できそうニャ?」
僕の言葉に皆は拳を上げて「オー」と掛け声を上げた。