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その日、僕・猫宮小判は違和感を覚えた。
「行ってくるニャ!」
いつものように朝がやってきて、いつものように家を出て、いつものように公園の猫と戯れて、いつものように学校へと向かう。
でも何かがいつもと違う気がする。
何か視線を感じる。でも誰かがいる訳じゃない。
何かこう……いつもと見る景色が違う気がするんだ。
その違和感は学校に着いてから気付いた。
「やっぱりこれニャあああああああああああああああ!」
僕は学校の門前を指差して思わず叫んでしまった。
「ちょっとどうしたのよ、コバン」
たまたまそこに居合わせた鹿島椛先輩が怪訝な顔で僕を見る。
「これ何ですかっ? 何でこんなものが学校にっ?」
僕は目の前のものを震えながら指差した。
それは黄金に輝く等身大の奇妙な銅像だった。
皺々《しわしわ》の垂れ下がった乳が丸出しの全裸の姿で、両手でハートの形を作り、片足をくねらせた老婆の銅像だ。
こ、怖すぎるニャ。
「えー? 知らないわよ。そう言えば、いつの間にか建ってたわね」
「いつの間にかって……これと同じの公園の中にも建ってましたよっ!」
すると僕の背後からひょっこりと雨森加枝留くんが顔を出してきた。
「一体、誰が建てたんですかねー?」
「気味が悪いニャ! もっとマシな銅像にしろニャ!」
「そうよ、そうよ! こんなの公共猥褻物だわ!」
いつの間にか卯月美魅さんまで僕らの輪の中に加わって声を上げていた。
―――因みに僕ら四人は同じオカルト同好会のメンバーである。
「何か文字が書いてあるわね」
モミジ先輩が銅像の台座に掘られた文字を指差した。
そこには『愛と平和の像』と彫られていた。
「聞こえの良い言葉で誤魔化すんじゃないニャ! これはただの公共猥褻物ニャ!」
しかし、この謎の銅像はこれだけではなかった。
グラウンドの隅や裏庭にも同じものが建っていた。
一体どういうことニャ。
事の真相を尋ねに僕らオカルト同好会は校長室へと向かった。