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「私は……私にはどうしたらいいか分らないんだ」
オジサンはそう言って遂には崩れ落ちた。
「そこで見ているがいい! 私が必ずや貴方の息子を救ってみせる!」
そう言って神父のオッサンは再び悪魔祓いの詠唱を再開した。
風が更に強くなり、木箱がカタカタと激しく揺れると、同時に桔音くんの表情が苦悶のものへと変わった。
「あの風と木箱は何なんですかっ?」
僕は崩れ落ちたオジサンに寄り添いながらも訊いてみた。
悪魔を召還した魔術師なら悪魔祓いの事情もある程度知ってるかも知れないと思ったから。
「あの風は神父の力そのものだ。悪魔を人間の体から引き離そうとしているのだ。そしてあの木箱は悪霊を封じ込めるためだけに作られたものだ。あの中に桔音を押し込めようとしているのだろう。封じ込めて頑丈に鎖を巻き付け鍵をする。そうすれば悪魔はそこから出られない仕組みだ」
「その通りだ」
オジサンの声が聞こえていたのか、神父のオッサンはそう言った。
「この箱は悪魔を封じ込めるために私が特別に作ったものだ。悪魔よ、貴様を中へ閉じ込め、永遠に開封されぬよう海の底へ沈めてくれよう!」
「このクソジジイ! 老いぼれ! ハゲ! お前なんかに僕が封印できるものかッ!」
怒りのままに桔音くんは魔力を引き上げて神父に対抗するように自身も暴風を引き起こした。
木々がまるでゴムのように激しく揺れ傾き、強烈な風の衝撃を直に受ける神父のオッサン。
でも十字架を前に掲げて何とか踏み止まってる。
神の御加護ってやつかな?
詠唱を続けながら自身も負けじと更に力を引き出してる。
凄まじいまでの暴風と暴風のぶつかり合いに僕達、外野の三人は立っていられず、身を低くして吹き飛ばされないように耐えるしかなかった。
僕と加枝留くんが何とか踏み止まっていられるのもオジサンが魔法でバリアを張ってくれてるからなのかも知れない。
「くっ……悪魔め、これほどの力を持っているとは……っ! これ以上長引けば危険だ、早々に悪魔祓いを完了させねば!」
詠唱を続ける神父のオッサンだけど、横から見てると相当辛そうニャ。
元々薄めの長い白髪混じりの灰色掛った髪と頬の肉が強風の直撃で凄い波打ってる!
もうまともに息も出来ないんじゃない?
「こ、これ風速八十メートルくらいありますよ、きっと!」
僕の背後でそんな加枝留くんの声がした。
いやいや、風速とか言われても僕にはよく分らないけど、八十メートルってこんな凄いの?!
桔音くんも相当辛そうだけど鎖で繋がれてる分、痛いだろうけど吹き飛ばされるようなことはなさそう。
でも神父のオッサンは何もなくて足だけで踏ん張ってるもんなぁ……。
もう有り得ないっていうか只者じゃない、凄すぎるニャ!




