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驚いたように一瞬桔音くんの目が見開かれた。
サム・スギルは桔音くんに気付かれないように時折低空飛行をしながらこの魔法陣を作り、戦いの最中で巧妙に桔音くんを円の中に誘き寄せたのだ。
しかも、これはただの魔法陣ではなかった。
魔法陣を囲むように六方に突如として大きな柱が現れ、その柱から金色に輝く光の鎖が放たれ、其々(それぞれ)が其々の方向から桔音くんの両手首、両足、腰と首に巻き付き、拘束したのだ。
「桔音くんっ!」
僕は桔音くんの身を案じて思わず叫んでしまった。
「ああもう、糞っ!」
桔音くんは何とか逃れようと身動ぎするが何か強力な魔法が掛かっているのか雁字搦めの鎖の拘束を解くことはできなかった。
すると、予め桔音くんの動きが封じられるのを待っていたかのようなタイミングで、僕らに付きまとっていたあの神父が木陰から姿を現した。
「あ、貴方がどうしてここにっ?」
僕は岩陰から立ち上がり神父のオッサンに向かって叫んだ。
「私はこの者と手を組み、この時を待っていたのだ」
神父は桔音くんの悪魔祓いをする為に脱獄したサム・スギルと手を組んでいたらしい。
「この魔法陣は彼の魔力と私の術を織り交ぜて作り上げたのだ。彼、サム・スギルの〝魔力を封じる魔法陣〟の結界、そして私が召喚した〝悪魔を繋ぎ止める〟聖なる光の鎖の柱だ」
「そ、そこまでするっ? この人、犯罪者なんですよ! そんな人と手を組んでまで、宵々町でひっそりと暮らしてただけの桔音くんの悪魔祓いをしたいんですかっ?」
「彼は例え罪人であろうと人間だ。悪魔とは違う。君は悪魔の真の恐ろしさを知らないのだ!」
「おい、そんなことより早く悪魔祓いの儀式を始めろ! 長くは持たんぞ!」
僕と神父のオッサンの話を遮るようにサム・スギルは急かした。
魔法陣に向かってずっと同じ三角形の手の形を維持しているところを見ると、恐らく格上の魔力の桔音くんの動きを封じるのは容易ではないらしく、必死に維持しているようだ。




