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桔音くんの家の前まで来ると僕らはインターホンを押した。
すると分かってるかのように自動で門が開き、僕らは出迎えた執事さんに誘導されて中へと招かれた。
「何だお前達、また来たのか。全くしつこい奴らだな」
桔音くんは優雅に猫を抱いたまま玄関に立っていた。
「まあいいよ。丁度、今、目障りな害虫を駆除しようと思ってたところだ」
「害虫?」
桔音くんは悪童のような顔でニヤリと笑うと猫を腕から下ろし靴を履いた。
あれっ? 今日は部屋じゃなくて外で遊ぶのかな?
桔音くんの家は住宅街の一番外れにあるんだけど、玄関を出て彼の後ろについて行くと、広い庭の中に裏門があって、そこを抜けると誰の土地でもない、だだっ広い原っぱに出た。
ここで一体、何をやるんだろう? と思ってたら、ふいに桔音くんの足が止まった。
「全く、どいつもこいつも鬱陶しい。余程、僕に遊んでもらいたいらしい」
桔音くんが肩をすくめてスッと両手の手のひらを上に向けて炎の球を作り出した。
「えっ?」
言葉の意味が分からず僕は一瞬、自分がうっかり桔音くんの逆鱗に触れてしまったのかと思った。
しかし、どうやらその言葉は僕達に向けられたものではなかったらしい。
桔音くんはその両の手の二つの炎を遠方の大きな木に向かって投げつけた。
すると木からバサッと何か鳥のようなものが飛び出し、二つの炎の攻撃をかわしたのだ。
その鳥のような物体は赤とオレンジ色に燃えて羽根とともに長い尾が波打っている。
まるで不死鳥のような姿に僕らは見覚えがあった。
まさかとは思ったけど、もうそれしか考えられない!
「さ……サム・スギル!? 何で此処にッ?」
僕は思わず叫んでしまった。
いや、だって、今刑務所とかじゃないの? 何で此処にいるのッ?
それを言ったら昨日のシラタクもそうなんだけどさ……。
すると不死鳥はぐるりと空中を一回りすると、やがて地上に着地し、人型へと姿を変えた。
その姿はフード付きの長い赤のローブを纏い、薄くて長い黒髪に、髭の生えた面長の中年。
間違いなく森秀吉会長……もといサム・スギルだった。
「昨夜は愛弟子が世話になったそうだな」
話の流れ的に、サム・スギルの言う愛弟子ってシラタクのことだよね?
「まずは礼を返させてもらおうか」
サム・スギルは両手を掲げて巨大な炎の塊を作り出し、桔音くんに向かって投げつけた。