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そして翌日、僕と加枝留くんは二人で待ち合わせて桔音くんの家へと向かった。
「猫宮くん、今朝のニュース見ました?」
加枝留くんは早速その話題を出してきた。
「勿論だニャ。シラタク本当に刑務所から脱走してたみたいだニャ」
僕らは今朝のニュースでシラタクのことを知った。世間は大騒ぎだニャ。
「ということは昨日桔音くんの魔法で見たのは夢や幻覚じゃなくて本当の光景だったんですね」
「改めて感動するニャ」
速報でフィリピンにいることが知られるのも時間の問題ニャ。
そんな会話をしていると、目の前の電柱に黒い人影が潜んでいるのに気付いた。
「とてつもなく嫌な予感がするニャ」
その予感は的中した。
黒い人影は待ってましたと言わんばかりに勢いよく道路の真ん中まで飛び出してきた。
また昨日の神父のオッサンが僕らを待ち伏せていたのだ。
傍から見ればフツーにヤバい奴ニャ。
「またあそこへ行くのだな少年たちよ!」
もう何なのだこの人! しつこすぎる! ストーカーにゃ!
「お前達は悪魔に取り憑かれて体を乗っ取られている本物の桔音くんが不憫だとは思わないのかね!」
まるで僕らが悪者であるかのような言い方で責めてくるのやめて欲しいニャ。
「いや思いますけど他人の僕らがどうこう決めるのも……」
「あの少年を救ってやりたいと少しでも思うならあの悪魔の特徴を教えるのだ!」
神父のオッサンが必死な形相で迫ってくる。無駄に近っ!
「だから知りませんってば! 僕らだって桔音くんとは最近知り合って間もないし、まだ友達と言えるほど仲良くさせてもらってる訳じゃないし、実際、何も知らないのに……」
「しかしあの家に行ったろう! 何か見たり聞いたりしなかったのかっ」
もー、しつこいなぁ! 何も見てないってば!
「豪華な家とご馳走に、ペットの可愛い猫と蛇を見たくらいですよ! もうそこどいてください! 急いでるんですからっ」
「〝猫〟と〝蛇〟だと……?」
あれ? 何かマズイこと言ったかな?
驚いたような神父さんの身体を押しのけて、僕らはそそくさと前へ進んだ。
こうして僕らは桔音くんの家へと向かったけど、あの後、神父さんが再び僕らに付きまとってくるようなことはなかった。