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「でもさっきの人、悪魔祓いに『悪魔の名前』がいるって言ってましたよね? お父さんはご存じなんですか?」
さっき神父のオッサンが言っていた言葉を思い出して加枝留くんが訊ねた。
「ヤツは弱点の一つである悪魔祓いを警戒している。故に不必要に自らを名乗らなかったのかも知れない」
ってことはオジサンも知らないのか。
「だが、召喚時、私自身が感じた恐怖や魔力を考えればサタンや、ルシファー、ベルゼブブなどの最高級クラスの悪魔では恐らく無いだろう。七大悪魔のような力は感じなかった。彼らを呼べば逆に飲み込まれる恐れがある故、誰も手に負えない己の実力に見合わないものはよほどの術者でなければ呼ばないのが鉄則だ」
にゃるほど。誰でも知ってる定番の悪魔って訳ではないのね。
「私の口からは名は言えないが……ただ一つ言えることがある」
オジサンは声を潜め、桔音くんの正体に関して何か心当たりがあるかのように言った。
「あの夜、悪魔の力で桔音が息を吹き込んでから、家に〝猫〟が現れた」
猫って黒猫のブラッキーのことかな?
あの猫、オスだったけど十五歳なんだ! 結構、長生き!
でも猫がヒントになるような何か関係みたいなのがあるのかな?
「さ、話が長引いてしまったね。こんな時間まで済まなかったね。そろそろ帰らないと、ご家族が心配するぞ」
そう言うとオジサンはベンチからスッと立ち上がり、僕らも慌てて立ち上がった。
「いえいえ此方こそこんな遅くまですみませんでした」
「明日もまた遊びにおいで。待ってるよ」
そう言うとオジサンは元来た道へと去っていった。
その日の夜、僕は楽しかったシラタクの夢のこともすっかり忘れて、眠りにつくまでの間ずっとオジサンの話や神父の言葉、そして桔音くんのことが頭を駆け巡った。
一体どうすることがベストなんだろう?
僕に出来ることは何もなさそうだけど……。