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「君達、先程、稲荷桔音の家に入って行った者達だな?」
意外と流暢な日本語喋れるみたい。
神父のオッサンは鋭い目つきで僕達に警告をした。
「悪いことは言わん。ヤツには近付くな」
「貴方、誰ですかっ? 『ヤツ』って桔音くんのことですか?」
いきなり失礼な人だなと思いながらも僕は訊ねた。
「私は『悪魔祓い師』だ」
「悪魔祓いって……エクソシスト?」
すると神父のオッサンは僕らの肩をガッと掴んで凄んできた。無駄に近っ!
「稲荷桔音は悪魔なのだ!」
「あ、悪魔?」
その瞬間、僕は桔音くんが以前言っていた言葉を思い出した。
――――僕はデーモンそのものだ。
何故だろう、体が寒々としてきた。
桔音くんはただの魔術師じゃなくて本当に悪魔なの?
「正確には悪魔が取り憑いている。私はそれを察知してはるばるこの町までやってきたのだ」
「取り憑いてるってどういう……じゃあ今の桔音くんは本当の彼じゃないってこと?」
「ああ。私が一刻も早く祓ってやらねばあの少年を救うことは出来ん!」
この人の言ってることマジなのかな?
悪魔祓いなんて、怪奇新聞には持って来いの特大スクープだけど、でも桔音くんはなんて言うかこう……お知り合いだからなぁ。
「いいか! 悪魔に近付くのは危険だ! 決して近付いてはならない! 忘れるな! 悪魔は決して善人にはならない! 放っておけば必ず世に悪影響を及ぼすだろう! 人間の振りをして生き、人を操り、暗躍する! そして、悪魔に関わった者は必ず不幸な道を辿るのだ!」
「そ、そんなことを言われましても……っ」
鬼気迫る神父さんに圧倒されて戸惑う僕らの背後から今度は別の声がした。
「おい! そこで何をしている!」
この展開はお決まりのマモル先輩の登場かな?
なんて思ったけどマモル先輩は勿論、今日は非番でモミジ先輩と映画デート中な訳で……。
声の主は桔音くんのお父さんだった。