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外はすっかり暗く、空にはぽつぽつと星が散らばっていた。
僕と加枝留くんは家の方向が同じで二人仲良く並んで歩いた。
「しかしさっきの幻覚みたいな映像面白かったニャ」
「凄かったですね」
「何か現実みたいな感じしたけどどうなんだろう?」
「現実だったらかなりヤバいですよね」
「だよねぇ。シラタクが脱獄してたらニュースになっちゃうよ。しかもフィリピンにいるとかもう話メチャクチャ」
僕らは笑いながら他愛ない会話をした後、明日の予定を確認した。
「明日も桔音くんの家にお邪魔する感じでいいのかニャ? 本人の了承得てないけど」
「いいんじゃないですか? お父さんがああ言って下さってたし」
「じゃあ明日も引き続き取材ニャ。卯月さんは無理だし、モミジ先輩は呼ぶと喧嘩になりそうだし、僕らだけで行った方が無難だから二人には知らせなくてもいっか」
「ですね」
「ところで加枝留くんは大丈夫なの? 明日」
当然のように加枝留くんも来るだろうこと前提で話しちゃったけど実際どうなんだろ?
「うーん、実は明日、家族でネズミーランドに行く予定だったんですよね」
「えっ! そうなのっ?」
「はい。でもまあいいですよ。別に」
「いやいやいや良くないよ! 全然良くないでしょ! ネズミーランドだよっ? 夢の国だよっ? 普通そっち行くでしょ! どう考えてもっ!」
「はぁ……。でも妹が行きたがってただけで僕はそんなに興味ありませんでしたし」
加枝留くん、妹がいるのね。新情報ニャ。
「それにネズミーランドは行こうと思えばいつでも行けますけど、桔音くん家にお邪魔するのはレアですし興味深いですから」
「いやまあそうだけど……本当にいいの? 折角の家族行事なのに」
「いいですよ。どうせ僕がいてもいなくても関係なく楽しんでくると思いますし」
何というか……加枝留くんの中ではネズミーランドよりオカルトへの興味が勝るのね。
「じゃあ明日の朝十時頃に待ち合わせて二人で行こうニャ」
とか何とか話していると突然目の前の電柱から黒い人影が飛び出し僕らの行く手を阻むように現れた。
一瞬、変質者とか暴漢かと思ってドキッとしたけど、よく見ると夕方に桔音くんの家の前にいた神父の外国人のオッサンだった。
……いやまあ変質者の線はまだ捨てた訳じゃないけど。