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玄関の扉を開けると目に飛び込んできたのは映画でしか見たことないヨーロッパ貴族の屋敷のような広い吹き抜けの玄関フロア。
そして豪華な赤いカーペットを敷きつめた煌びやかで大きな階段。
階段の上には桔音くんがペットの黒猫を抱きながら立って此方を見下ろしていた。
「桔音。お友達が来ているぞ」
「ははっ……何それ。僕に友達なんていないよ」
桔音くんはサラッと言うと、ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべて片手の甲をひらひらさせて言った。
「とっとと追い返してよ」
うーん……相変わらず手厳しい。
「そう言うな桔音……折角こうして訪ねてくれたんだ。そうだ、もし良ければ一緒に食事でもどうかね?」
桔音くんのお父さんは僕らが来たことが余程嬉しいのか、食事に誘ってくれた。
「い、いいんですか?」
「勿論だ。ゆっくりしていきたまえ。桔音……お前も来なさい」
「え~……」
桔音くんは面倒くさいと言わんばかりの露骨に嫌そうな顔で返事をした。
うう、何だか凄く申し訳ない気持ちニャ。
そうして僕らはダイニングルームの方へと案内された。