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「何か変わったことはありませんでしたか?」
加枝留くんが怪奇現象の原因を突き止めようと話を振った。
「実はこのカメラ、部室の倉庫を整理していたら、埃被った段ボールの中に入ってて、誰のものかは知らんが、使えるかどうか試しにシャッターを押したんだ。撮ったのは部室内のハズだった。なのに……出てきたのは……」
これだったという訳か……うーん、やっぱりこれはあれかな。
「『呪いのカメラ』ってヤツですね」
そう、それ。加枝留くんに先を越されたニャ。
「呪いのカメラ……? 一体どういうことだ?」
「まあ、今回に至っては、呪いというよりその人の『願望』とか『欲望』みたいなものが写し出されるみたいなタイプのものじゃないかと……」
加枝留くんの説明にモミジ先輩は勝ち誇ったような顔をして日暮先輩を見た。
「ほらっ! やっぱりアンタ、アタシに気があるんじゃないのっ!」
「違ーーーうっ! 断じて認めんっ!」
頭を抱えたまま背を弓なりに曲げて叫ぶ日暮先輩に僕は思わず笑ってしまった。
モヤシのくせに意外と体が柔らかいんだニャ。
まあ、日暮先輩も一応男だし、好きかどうかは別として、モミジ先輩のカラダに興味があるってことなのかな……。
「でも、これ面白そう! 何でも好きなモノが写るんでしょ? アタシもやりたーい!」
モミジ先輩はチェキを取り上げると適当にパシャリとシャッターを押した。
カメラから出てきた写真を暫く扇ぐと写真の絵が浮かび上がってきた。
そこには執事の格好をしたイケメン達に囲まれて王座に座るモミジ先輩の姿が……。
まさにイケメンパラダイス状態。
「あっは! 良いわね、コレ! 青ガエル、アンタもやってみなさいよ」
「はぁ……」
モミジ先輩にカメラを渡された加枝留くんは、乗り気じゃないのか仕方なくといった感じで適当にシャッターを押した。
僕とモミジ先輩が覗き込むと、写し出されたのは『卯月さん』だった。
僕らは慌てて写真を彼女に見られないように隠した。
やっぱり加枝留くん、卯月さんに気があるんだ。
当の卯月さんは、あまり関心がないのか、そんな僕らの行動を気にした様子はなかった。
でも、加枝留くんの写真の中の卯月さんはエロ眼鏡の日暮先輩と違って清らかで、ただ制服姿で廊下に佇んでいるだけだった。
そう、なんてこともない日常の風景ニャ。