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「アンタも今回、良い機会だし、あのキツネ野郎にアピールしたらいいじゃない。ひょっとしたら親しくなれるかもよ? ま、アイツが女とか色恋とかに興味あるかどうかは、甚だ疑問だけどねぇ~?」
僕と加枝留くんの気も知らないでモミジ先輩はサラッととんでもないことを言いやがった。
しかし、当の卯月さんは大袈裟なくらい動揺し、赤面した顔で前に掲げた両手を左右に振りながら拒否反応を示した。
「無理無理無理無理無理ですっ! 私、好きな人とは半径七メートル以内に近付かないって決めてるの!」
「はっ? ちょっと何よそれ」
モミジ先輩が理解不能というような顔をした。
「とにかく絶対近付きたくないんです~っ! やだもう恥ずかし~っ」
卯月さんって滅茶苦茶シャイなのかな?
七メートルという数字の意味もよく分らないけど、僕は大事なことを確認する意味で卯月さんに尋ねた。
「あの、桔音くんのプライベートにお邪魔する企画は勿論、参加されるんですよね?」
「だから無理って言ってるでしょぉおおおおお~っ」
あの普段おっとりした卯月さんが、目を漫画のように光らせて僕の首を力いっぱい絞めてきた!
「うぐぐぐぐ苦しいニャ~ッ」
「でもそれじゃあ好きな人とは一生結婚出来ないんじゃないですか?」
加枝留くんが尤もなことを聞いた。
「ええ。だから私、好きな人とは結婚しません。ていうか付き合うとか有り得ません!」
ど、どういうことーっ? 卯月さん、きっぱりと言い切ったけど、意味分かんないよ!
「結婚と恋愛は別なんです! 私、結婚相手は安定した収入のある裕福で優しくてフツメンの人を適当に捕まえてそこそこリッチな専業主婦として幸せに暮らすんです~っ」
卯月さん、それめっちゃ打算的な女じゃないですかっ!
「じゃあもし桔音くんの方から接近してきたらどうするんですか?」
「無理無理無理! そんなの耐えられない! 全力で逃げるわ!」
う、卯月さんってシャイ通り越して変わってる……。
会いに行けるアイドルが流行る昨今、卯月さんのように好きな人は遠くから見ていたい、遠い存在でいて欲しい、そう、とにかく絶対会いたくない! という人もいるのニャ。
「仕方ない、じゃあ桔音くんの件は僕と加枝留くんが担当するということでいいですか?」
「ほーい」
フザけた感じでモミジ先輩が返事した。




