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「き、桔音くん?」
念のため、僕は聞き返した。
「そうよ! 彼よりカッコいい人はこの神輿高校……いや、宵々町には存在しないわ!」
いつもおっとりしている卯月さんが語気を荒げるなんて珍しい。
「ちょ、ミミ……アンタは眼科と精神科に行った方がいいと思うわ……」
流石のモミジ先輩も引いてる。
「えぇーっ! 何でですかぁーっ?」
全然、納得できない様子の卯月さん。
うん、僕も卯月さんには悪いけど、モミジ先輩と同意見かな。
桔音くんはイケメンとか、そういうレベルの人じゃなくて、何というか、人間離れした風貌というか……。
痩せ細った色白に漫画のような逆毛の黒髪に黒い爪、吊り上がった眉に瞳孔の小さな目で、まるで悪霊が取り憑いてるかのような不気味なオーラが漂ってるというか……。
卯月さん、以前、燉一教事件で捕まった人気俳優・白鳥拓海にも全く関心なかったみたいだし、イケメンに興味ないのかも?
ちっさくてフツメンの僕としてはありがたいけど。
何故なら僕は卯月さんのこと……いや、まあ、そんな話は置いておいて……。
「あ、稲荷くんと言えばですね……」
加枝留くんが、ついでと言わんばかりの様子で、持参していた鞄からA4サイズの茶封筒を取り出して、ガサゴソと中に手を突っ込んで探り出した。
「掲示板に設置したポストの中に手紙が何通か来てたんですけど……」
「ニャっ? もうそんなに反応来たのかっ?」
ポストというのは加枝留くんがオカルト同好会の副部長になってから始めたことの一つで、掲示板に貼ってる僕らの『怪奇新聞』とセットで、手紙やアンケート入れを設置してるのだ。
最初はそんな都合良く来ないだろうと思ったけど、案外来るもんだにゃあ……。
「それが……全部、『稲荷桔音くんの謎が知りたい』という類のものでして……」
加枝留くんはそう言って机の上に、封筒から取り出した数十枚の手紙をドサッと置いた。
「ちょっと何よそれーっ! 怪奇と関係ないし、こちとら便利な探偵屋じゃないっつーの!
どうでもいいわよアイツのことなんかーっ!」
モミジ先輩がご立腹な傍で、卯月さんは勝ち誇ったように目を輝かせて言った。
「ほらっ、神輿高校の皆さんも稲荷桔音くんに夢中じゃないですか!」
いやいや……多分、卯月さんの言うような理由じゃなくて、みんな怖いもの見たさとか、好奇心とか、そういう感じだと思いますけどっ!




