表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宵々町奇譚―オカルト同好会編―  作者: Ree
chapter1 黒魔術と新興宗教
31/106

31

 僕は卯月さんから着せてもらったローブ姿で、誰にも気付かれないようにスッと木箱から立ち上がると、堂々と中央へと向かって歩いた。

 心臓はすごくバクバクと鳴ってる。

 フードを深々と被って顔を隠し、信徒達の中へと混じり、白鳥拓海の方へとゆっくりと近づいて行く。


 その間にも、先輩達は窮地(きゅうち)に追い込まれていた。

 信徒の槍隊(やりたい)は切っ先を向けジリジリと二人との距離を縮めていく。

「くっくっく……生贄として死ねーっ!」

 白鳥拓海が槍隊に指示を出した。

 いよいよ駄目かと諦めたモミジ先輩は泣き出しながらマモル先輩に突然横から抱きついた。

「わーーーん! もう駄目だわーーっ! 犬飼先輩、好きーーーーーっ!」

「お、おい、いきなり何だっ?」

 突然抱きつかれた上に告白までされたマモル先輩は動揺した。

「だってどうせ死んじゃうんだもんーーーーっ!」

 そして槍は無情にも、二人の若い男女を突き刺す―――ことはなかった。


 僕が白鳥拓海にタックルをかますことに成功したからだ。


「ぐあっ!」

 衝撃で白鳥拓海は地面に倒れこみ、カランカランと剣を落とした。

 僕も一緒になって転んじゃったけど、スグに起き上がって剣を目で追う。

 信徒は皆、突然の出来事に驚き、僕と白鳥拓海に気を取られた。

 その一瞬を付いて今度はマモル先輩の反撃が始まった。

 銃を奪った相手に飛び掛かり、銃を奪い返したのだ。

「動くな! お前ら全員逮捕する!」

 思えば失態続きだったけど、ようやく気を取り直したみたいに警察官らしく銃を構えて牽制(けんせい)するマモル先輩。

 逃げ(まど)う人々や、(なお)も僕らを捕まえようとする人の間を()(くぐ)り、僕は白鳥拓海の落とした剣を必死に拾い上げると、槍投げのように思いっきり腕を振って高く投げ飛ばし、火台の中へと放り込んだ。

 すると火台の炎はこれまでになく膨大に燃え上がったかと思うと、それから青く色を変えて徐々に消えて行った。

 そして、銅像からは黒い(もや)が天に向かって伸び、これも同様に消えて行った。

 まるで抜け殻になったかのように銅像から次々と(ひび)が入り、ボロボロと崩れ落ちていくのを見て、僕は悪魔が去って行ったんだと思った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ