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「私の両親が燉一教の信者だったの……。最初はただの宗教だと思ってたから。でも異常な教団だってことに気付いて一度、脱退しようとして失敗したのよね……」
卯月さんの話によると、夜逃げ覚悟で彼らから逃げようとしたけど捕まっちゃって、今は燉一教の監視下の元で生活してるんだって。
そういう経緯があったから、だからあの時、突然、姿を消したんだね。
言いだしっぺが逃げたとか思っててすみませんでしたっ!
「猫宮くん……私のオカルト同好会を引き継いでくれてるのね……嬉しいわ……!」
卯月さんはあの頃と同じように僕の手を取り、うっとりとした顔で言った。
いやいやいや、今それどころじゃないからっ!
「あ、あの、今、あそこで捕まってる人、僕の先輩達なんですっ、何とかなりませんかっ?」
僕は内部に詳しいであろう卯月さんに助けを求めた。
「そうねぇ……私も燉一教を潰そうと色々調べて虎視眈々(こしたんたん)と機会を狙っていたのよね……」
すると卯月さんは自分の着ているローブを剥いで、それを僕に着せながら言った。
「ここにいる信者達は、森会長の魔力に心酔してるの。その会長の力が失われたら、きっと目を覚ますと思うわ」
「僕の知り合いの魔術師が今、上でその会長と戦ってます」
「あと一つ、貴方に出来ることがあるわ。あの銅像をぶっ壊して火台の炎を消すのよ……!」
「えぇっ? ぶっ壊すってどうやってっ」
僕なんかの力じゃビクともしそうにないデッカイ銅像なんですけどっ!
「猫宮くん……あなた、オカルトの世界を舐めてるでしょ? 現実的なことや物理的なことを考えないで……。大事なのは『信じる心』よ!」
「信じる心……?」
し、信じるも何も……。
正直、僕はオカルト同好会の部長でありながら、本当はオカルトなんて全く信じていなかった……。
でも、もうこれだけあり得ないことが起こってるんだから、もう何でも来いだ。
「分かりました。僕は何をしたらいいんですか?」
僕は覚悟をきめて卯月さんの指示に従うことにした。
「あの俳優……白鳥なんたらとかいう男が預かってる長剣があるでしょ……?」
白鳥なんたらって……卯月さん、シラタクに興味ないみたい。
僕は卯月さんの言葉で白鳥拓海の手元を確認して頷いた。
さっき女の子を生贄に殺したあの剣だ。
「それを奪ってあの火台の中に放り込むの。あの剣はデーモンと会長を繋ぐ『契約証』みたいなものよ。あの長剣が無くなれば、契約は破棄されたも同然。デーモンは炎ともども去るはずだわ」
卯月さんはそう説明した。
「分かりました。何とか隙を見てあの長剣を奪います」
とは言ったものの上手くできるかどうか……何せ僕は文化系。
せめて何か強力なサポートが欲しいニャ。
「……卯月さんってそう言えば霊感が強いんでしたよね? 何か霊力みたいなものは使えないんですか?」
僕は卯月さんに『女版・桔音くん』みたいなものを期待した。
しかし、現実はそう甘くはなかった。
「何言ってるの? 猫宮くん……。私は霊感が強いだけで、ただ『それだけ』よ……。」
はい……ですよね。失礼いたしました。




