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加枝留くんもモミジ先輩も犬飼先輩も、身を隠している身だが、助けるべきなのか、まだ様子を見るべきなのか、分らず戸惑っているようだった。
そうこうしている間に女の子は祭壇の上に寝かされ両サイドの男達に押さえつけられた。
そしてサム・スギルは傍に控えていた信徒の一人から長剣を受け取ると、何の迷いもなく剣を女の子の首めがけて振り下ろした。一瞬だった。
「ぎゃああああああああああ」
女の子の恐怖の叫びは救われることなく、剣は無慈悲に下ろされ、血飛沫と共に途絶えた。
祭壇から大量の血が滴り落ち、床を赤く染める。
「あ、あわ、わ……狂ってる……さ、殺人……殺人だわ……っ」
目の前で殺人を目の当たりにした僕らは恐怖と混乱、動けなかった自分達への後悔と自責の念が綯交ぜになり、モミジ先輩に至っては腰を抜かしてしまった。
サム・スギルが女の子の血が付いた剣を掲げると悪魔の銅像から黒い靄のようなものが出てきて首を斬られた女の子の死体を黒い炎で焼き尽くした。
幻覚ではなくハッキリと見えるソレに、おおー! と信徒から再び感嘆の声が漏れる。
そして黒い炎は浮かびあがり巨大な火台の中の炎と同化して一層強く燃え上がった。
悪魔に生贄を捧げたサム・スギルが引き換えに更なる力を得たように見えた。
その時、腰を抜かしていたモミジ先輩のスカートのポケットから、ウッカリとケータイが落ちてしまい、カタッと大きな音を立ててしまった。
し、しまった! ヤバい!
サム・スギルと信徒たちが一斉に僕らの隠れている後方の岩陰と木箱の方へと振り向いた。
「そこに誰かがいるぞ!」
白鳥拓海がそう叫び、信徒達が一斉に駆け込んできた。
「いやああああ! 離してよ!」
「くっ! 放せ! 俺は警官だぞッ!」
ま、マズイ! モミジ先輩とマモル先輩が信徒に捕まってしまった!
二人とも抵抗してるけど大勢に囲まれて、どうすることも出来ない。
本当ならスグ側にいる僕らもすぐに見付かって捕まっちゃうハズだった。
でも桔音くんが咄嗟に魔法で赤い歪の渦を出した。
「一旦、ずらかるぞ!」
そう言って僕らを押し込んで、その場から離脱したのだった。