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「くっくっく……もうすぐだ。我ら燉一教が世界を支配する日も近い」
森会長……もといサム・スギルはよくある悪役のような台詞と共に笑ってそう言った。
すると、信徒の中から白鳥拓海が会長の前へと一歩踏み出して続けた。
「政界、芸能界、経済界……あらゆる業界に我々は入り込み、触手を伸ばすことに成功いたしました。今は海外にもその幅を広げているところです」
「政治、経済で強い影響力を持ち、芸能で人々の心を掴み、洗脳し、信徒を増やし、人々を、世界を、我が意のままに操るのだ」
「その為には、貴方様の更なるお力が必要です」
そう言って白鳥拓海は、サム・スギルの前に片膝をついて頭を下げた。
「望みを手に入れるには莫大な富と魔力が必要となる……」
サム・スギルは白鳥拓海の頭に手を置き、その掌から白い靄のようなものを出していた。
桔音くんが言うには魔力を相手に注ぎ込んでるんだそうだ。
すると白鳥拓海は「おぉ……」と感嘆の声を漏らしながら立ち上がり、己の肌に触れていた。
白鳥拓海の若さと美貌、スターのオーラが更に増したように見えた。
「えっ、何よアレっ、エステよりお手軽っ!」
羨ましそうにモミジ先輩が見てる。
サム・スギルは更に、忠誠を誓うように片膝ついて頭を垂れる他の信徒たちにも同様に、魔力で各々に必要な能力を分け与えていた。
一通り終えるとサム・スギルは、背を向けて祭壇と銅像、炎の方へと向き合った。
「デーモンに生贄を捧げ、私は更に魔力を高める」
で、デーモン?
よく見ると、その銅像は悪魔そのものの姿をしていた。
桔音くんの言う通り、燉一教は間違いなくカルト宗教のようだ。
でも、生贄を捧げるってどういうこと?
黙って様子を見ていると、信徒の中から幼稚園に通うくらいの歳の小さな女の子が、男二人に祭壇へと引き摺り出された。
「わああああああああ怖いぃいいい! ヤダああああっ! おうちに帰りたいよぉおお!」
女の子は何処からか無理やり連れてこられたみたいに、親らしき人が周りにいないように見える。
ただ、ひどく怯えて泣きじゃくって手足をバタつかせていた。
一体、何が起こるのか分らず、僕の心臓はバクバクと音をたてた。